警察署で
刑事たちは、ホワイトボードに書かれた相関図を元に、事件性について捜査している。
それは、日向代議士関係者相関図とされ
日向利治代議士(44)
自由恒久党副幹事長 前農林水産大臣政務官 当選回数 衆議院3回、参議院1回
神奈川20区 住所:神奈川県横浜市営林区港東町二丁目3番1号
となっており、かなりの大物であることが分かる。
彼の周りで起きている死亡者は、病死・事故死等様々で
・【対立候補】川端道真(参議院議員)心不全(令和元年9月4日死亡)
・【不正受給】佐藤悠次郎(政治記者)転落死(令和2年2月5日死亡)
・【利権疑惑】村山豪(議員秘書)野犬による事故死(令和元年10月21日死亡)
・【立ち退き関係者】片山潤一(横浜県議会議員)一酸化炭素中毒死(令和2年6月7日死亡)
・【政治献金】村上賢人(建設会社社長)交通事故死(自殺?)(令和元年12月14日死亡)
・【事業関係者】近藤一(不動産会社社長)突然死(不詳)(令和2年1月19日死亡)
・【脱税疑惑】釜石伸之(税理士)溺死(令和2年8月2日死亡)
・【情報操作】道長幸之助(フリージャーナリスト)焼死(令和2年4月8日死亡)
・【訴訟関係】石井慶子(弁護士)交通事故死(令和2年11月11日死亡)
頭を抱える半澤日路輝(はんざわ ひろき) - 滝藤賢一 に 他の刑事は
これらの全員の死亡について本当に事件性がないのか、半澤に疑問をぶつける。
1年2か月ほどの間に、1人の人物の周りで9人も関係者が死亡するなんて
灰土町並みと言っていい。
どれも、自殺か事故死だとよ。
目撃証言や状況証拠も見事に揃ってやがる。
この1年で、こんなに都合よく人が死ぬなんて・・・。
不自然極まりねぇよなぁ。でも、立件するのは難しいかもしれん。
そういって、部屋を出て行く半澤。
ホワイトボードに書かれた9人目の死亡者は、非浦英莉可(ひうら えりか) - 平手友梨奈 が
横浜駅への道を尋ねていた人物だった。
陸橋の上で
空を飛んでいく鳥を眺めていた英莉可、下の歩道に目をやると登校途中とみられる
他の女子高校生たちが目に入る。
喋りながら歩いていくその様子を眺めて、何事かを考えているようだ。
三角康介(みかど こうすけ) - 志尊淳 は、半澤のいる警察署にやってくる。
公園で半澤と別れた後、英莉可が自分に接近してきたことを報告する。
名前を確認したわけではないが、たぶん彼女がヒウラエリカではないかと考えているのだ。
女子高生であったことを半澤に知らせるが、現実主義の半澤に説明しても信じてもらえるかどうかは分からない。
あいつ(冷川理人(ひやかわ りひと) - 岡田将生)は、なんて言ってるんだ。
さぁ、俺事務所辞めましたから。
それまで一緒に廊下を歩いていた半澤は立ち止まり、意外だと言ったようすで康介を振り返っていた。
康介に見限られてしまった冷川は、事務所で自分を持て余しているといった様子だった。
霊のことなら、ほぼ思ったように対応できていた自分が、生身の人間である康介の感情に翻弄されている。
打ち合わせデスクから紙を丸めて投げても、ごみ箱に入らない。
警察署の角にある窓際の待合場所で、長椅子に座る康介と半澤。
俺は今まで、数えきれないほどの凄惨な現場を見てきた。
中でも忘れられないのが、15年前。
ショウコウ会っていう宗教法人の施設内で起きた奇妙な事件だ。
近所から「異臭がする。」っていう通報があってなぁ
行ってみたら、中は死体だらけだった。
異臭にむせながらもライトを照らし、生存者を探す半澤。
だが、食堂の奥にたった一人の生存者が隠れていた。
まだ幼い「大ショウ様」と呼ばれる教祖の少年だった。
頬に血を浴びたまま、ひもじさにパンを抱えて床に座り込む少年に、声を掛け保護する半澤。
少年?
なんでも、不思議な力を持っていて信者の病気なんかを直していたりしたそうだ。
(まさか)
それが、冷川理人だ。
冷川の母親は、息子を「神の子」と呼び、俗世間から隔離して施設内だけで育てたんだ。
まともな教育は、ほぼ受けていない。
だから分からないんだよ、アイツには。
善悪の基準ってヤツが・・・。
(施設内で)何があったんですか?
わからんっ!
冷川は酷くショックを受けていて、事件発生時の記憶を失くしていた。
あれだけ目の前で人が死んだんだからな。
しかもその中には、アイツの母親もいた。
半澤の話に衝撃を受ける康介。
実家に帰って母親と食事をしていても、まだ気持ちの整理がつかない。
母親に話しかけようとして、やめてしまう。
普通の家庭ならありふれたことさえ、冷川には与えられなかった環境なのだ。
その頃、半澤は自宅に戻っていた。
刑事のときは、超のつく現実主義の彼にも家に帰れば明かりが灯され
起きて迎えてくれる妻:冴子(はんざわ さえこ) - 桜井ユキ がいる。
ダイニングテーブルには花が飾られ、職場の殺風景さを忘れられる。
妻とのたわいのない話でも、それが彼の日々心の拠り所であり支えでもあるのだ。
半澤は、少年だった冷川に聴取を行ったときのことを思い出していた。
「信じる力」です。
信じる力が人を滅ぼすのを沢山見ました。
でも、貴方のは「信じない力」ですよね、それって凄い。
んん~つ、何が?
信じないでいてもらえるって、凄くイイカンジです。
貴方は僕を、信じないでいてくださいね。
信じるよ。
全てを信じないわけじゃない、妻:冴子の姿を眺めながら、そうつぶやく半澤だった。
某宗教団体の建物
紫の装束を来た人たちが、続々と建物に入って行く。
燭台が部屋の所々に置かれ、5人くらいずつで膝を突き合わせて立ったり屈んだりしており
部屋の隅には紫の裃(かみしも)のような服を着た人物もいる。
出入り口には、非浦英莉可がもたれかかっていた。
教祖とみられる人物:石黒哲哉(いしぐろ てつや) - 筒井道隆 は派手な大黒天のような恰好をしており
後ろを歩く女性が、こんな言葉を唱えている。
人は人を信用することから始まり、前世をとおして自分の愚かさや欲望を知り
現世の自分を見つめ直すことができます。
自分の体内にある愚かさと欲望を、血液と一緒に宙に飛ばすのです。
そうすることで、現世の自分に光を取り入れ・・・
教祖が自分の近くを通過しそうになると、信者である男性:非浦松男(ひうら まつお) -マキタスポーツ が
拝みながら近寄り、教祖の耳元で何かを告げる。
どうやら松男は、英莉可の父親らしい。
松男が英莉可の存在に気づくと、彼女はその場から離れて行く
松男は慌てて娘を追いかける。
別室で娘を捕まえて、何を言い出すのかと思えば
英莉可、先生の前であんな態度を取るんじゃない。
バチが当たるぞ。
相当心酔しているようだ。
それを聞いた英莉可は、父親の手を振り払い
バチ?どんな。
そういって、父親に突っかかる。
何も答えられない松男は、その場を去って行くのだった。
ため息をつく英莉可。
すると、英莉可の顔から突然、液体がしたたり落ち、床にその雫が落ちる。
鼻から出ているようだ。
理由が分からず、戸惑う英莉可。
その様子を見て、外から彼女の付き人(ボディーガード)を務める逆木一臣(さかき かずおみ) - 新納慎也 が
入ってくる。
どうしました?
何もない、行こっ。
そう言って、鼻を手で拭った英莉可は逆木が入って来た扉から、外へ出て行く。
逆木は、さっきまで英莉可が立っていた場所を確認し、彼女の後を追って出て行った。
妻の運転で、外出する半澤
上司の昇進祝いの挨拶に行くという理由で、連れ出された半澤。
助手席で、こんなことしてる暇なんかないのにと愚痴をこぼして、冴子になだめられる。
交差点で車が止まっていると、その先を英莉可が横切って行くのが見えた。
ちょっと待っててくれ。寄って行きたいところがあるから、そこ店で手土産の酒でも買ってきてよ。
驚く冴子を残し、半澤は車を降りて行く。
英莉可が歩いて行った方向には、先日冷川が逆三角形の結界を書いた
あのビルがあるのだ。
入り口の柵のような扉を開ける英莉可に、半澤が追いついた。
振り向く英莉可に、半澤はあてずっぽうで声を掛ける。
ヒウラエリカさんだね。
逃げ出そうとする彼女の腕を掴む。
おっと待ったぁ!
何ですか、アナタ誰?
怪しいもんじゃないと、腕を掴んだまま警察手帳を見せる半澤。
少し話を聞かせてもらえる?そう話しかける半澤の目を見据え
英莉可は
何ですか?
そう言って居直る。
ここで何してんだ?
なぜ、名前を知ってる。
お店に来たんです、潰れてると思わなくって。
何をどこまで知ってるか、言え!
近くに住んでるの?
言え!
言え!
英莉可の呪いが半澤に効いていないことに、彼女は気づく。
なんで?
え、なんかしようとしてる?
チッ、マイッタねぇ~、オカルトの類は信じないんだが。
信じない、信じないから効かないの。
うつむく英莉可。
ハァ?
そのとき、半澤を探して冴子がやってきた。
日路輝さ~ん、大丈夫?
それを見た英莉可が、意地悪く微笑む。
信じてるもの、見つけた。
そう言って、冴子を見つめる。
あの人は、呪われて死ぬ。
すると冴子の左目から、黒い液体が流れ出てくる。
英莉可の鼻から流れ出たようなものが、頬を伝って流れ落ちてきた。
膝から崩れていく冴子を、半澤が抱き留めて名前を呼ぶ。
その隙に、英莉可はその場を走って逃げだすのだった。
逆木が止めていた車に駆け込む、英莉可。
後部座席に座って、荒くなった息を整えていると耳から黒い液体が流れ出てくる。
どうやら、彼女にも何かの呪いがかかっているかのように見えた。