超空洞からの贈り物

様々なニュースや日常のレビューをメインに暗黒物質並に見つけ難い事を観測する、知識・興味・ムダ提供型共用ネタ帳です。

マイクロ針の皮膚パッチで痛みのない「注射」が可能に

2009年09月06日 10時37分17秒 | 健康・病気
 皮下注射針に代わり、“マイクロ針”で覆われた皮膚パッチを用いる痛みのない注射が実現する可能性があるという。この研究は、先ごろワシントンD.C.で開催された米国化学学会(ACS)会議で発表された。

 報告を行った米ジョージア工科大学(アトランタ)のMark Prausnitz氏は、「さまざまな場面で皮下注射針の代わりに、患者が自分で痛みもなく簡単に貼ることのできるパッチ剤を利用できるようにすることが目標。ばんそうこうのように簡単に貼れるものなら、特別な訓練がなくても薬剤の自己投与が可能になる」と述べている。1本のマイクロ針の長さは数百ミクロンで、幅は髪の毛数本分に相当する。皮膚パッチにこの針を付ければ、多くのことに応用できる可能性がある。

 Prausnitz氏らが想定しているのは、自分で接種できるインフルエンザワクチンパッチだという。実現すれば、注射のために病院を予約しなくても、薬局や郵送でパッチを入手して自分で貼ることができる。マウスの試験では、マイクロ針パッチで、従来の注射に匹敵する効果が認められている。「インフルエンザワクチンパッチの目標に向けて動物を用いた研究を続けているが、2010年には最初のヒトでの試験実施も視野に入れている」と同氏は述べている。

 研究グループによると、マイクロ針パッチは眼の疾患である黄斑変性の患者への薬剤送達にも利用できる可能性があるという。現行の治療では眼に直接注射しているが、注射が怖い人にとっては明らかに難点であるばかりでなく、眼に繰り返し注射することには安全性の問題もあると、Prausnitz氏は指摘している。

海の生物にヒントを得た新しい骨接着剤

2009年09月06日 10時35分23秒 | サイエンス
 海に生息する環形動物が巣を作るのに用いる天然の接着剤をヒントに、交通事故などで粉砕した骨を修復する新しい方法が開発され、先ごろワシントンD.C.で開催された米国化学学会(ACS)会議で報告された。サンドキャッスル・ワームsandcastle wormは体長1インチ(約2.5cm)ほどの生物で、細かい砂や貝殻を固める糊を分泌して岩礁に巣を作る。研究グループは、この糊を複製して医療用接着剤を作ることに成功したという。

 粉砕した骨を修復する従来の方法は、釘、ピン、ねじなどの接合具を用いて骨を支えるやり方である。しかし、小さな骨の破片をねじやワイヤーでつなげることは極めて困難であり、医療用接着剤のほうが優れた選択肢となる可能性がある。米ユタ大学(ソルトレークシティー)のRussell Stewart氏は、サンドキャッスル・ワームが用いる方法が完璧と考え、水に濡れた環境でも溶けることがなく、濡れた物でも接着できる水性接着剤の開発に取り組んだ。サンドキャッスル・ワームが接着剤を生成するメカニズムをもとに、水と混じらないが水溶性の液体接着剤を開発したという。

 この新しい合成接着剤はすでに細胞培養による毒性試験をパスしており、少なくとも瞬間接着剤と同程度の接着力があり、お手本としたサンドキャッスル・ワームの接着剤の2倍の強さがあるという。同氏らが開始している予備研究では、この接着剤によって骨折部位に抗生物質などの薬剤を送達できる可能性もあるとされている。

 「このような接着剤を作る上では、生体適合性が大きな課題の1つとなる。合成物を身体に入れると、それに対する身体の反応が周囲の組織を傷つける可能性がある。今後もこの点を監視していくつもりだが、現在のところそのような問題の徴候は認められていない」と同氏は述べている。

新しい点眼薬で緑内障の視力が回復する可能性

2009年09月06日 10時34分19秒 | 健康・病気
 神経成長因子(NGF)を用いた新しいタイプの点眼薬に、網膜細胞および視神経細胞を保護する作用がみられ、緑内障患者の視力を回復させる可能性もあることが、イタリアの研究で示された。NGFの点眼により緑内障を治療できる可能性を示した研究は今回が初めてであると、イタリア、ローマ大学のStefano Bonini博士は述べている。

 米緑内障研究財団(Glaucoma Research Foundation、カリフォルニア州)によると、緑内障は視神経が徐々に侵され視力低下や失明の原因にもなる眼疾患で、年齢問わず発症するが、特に高齢者ではリスクが高い。世界で失明原因の第2位となっており、米国では約400万人が罹患し(約半数は自覚がない)、約12万人が失明している。米国では緑内障が失明原因の10%を占めているという。最新の治療によって眼圧を軽減し、進行を遅らせることはできるが、失われた視力を回復する治療法はこれまでなかった。

 著者らは、過去の研究でヒト組織中にみられる蛋白(たんぱく)であるNGFがパーキンソン病やアルツハイマー病患者の脳組織の治療に有益であることが示された点に着目。発症の仕方が似ていることから、緑内障は「眼のアルツハイマー病」とも呼ばれるという。今回の研究では、緑内障を誘発したラットにNGFの点眼薬を2通りの用量で投与した結果、特に高用量で網膜神経が死滅する比率が有意に低下することがわかった。

 次に、進行した緑内障患者3人を対象にNGF点眼薬を使用し、治療前、治療開始後3カ月、治療終了後3カ月に眼機能を検査した結果、2人に視力の改善が認められ、もう1人は治療後に視力の安定がみられた。さらに、視野、視神経機能、対比感度および視力の改善は、初回の点眼薬投与から18カ月後でも維持されていた。

 ただし、Bonini氏によると、現在NGFは臨床で使用できず、今回の結果についても大規模な臨床試験による裏付けが必要であることから、この治療法がすぐに利用可能になるわけではないという。しかし、理論的にはこの知見が眼疾患のほかさまざまな神経変性疾患の新しい治療選択肢につながる能性があると、研究チームは述べている。

米国科学アカデミー発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」オンライン版より

トゲイモリ、皮膚から突き出る武器の謎

2009年09月06日 10時31分52秒 | サイエンス
 イモリ科最大種のイベリアトゲイモリ(Pleurodeles waltl)は、防御のために鋭い肋骨(ろっこつ)の先端を体から突き出すことで知られている。この行動の仕組みはそれほど単純ではなく、かなり変わっていることが明らかになった。

 外部の脅威に反応して突き出た肋骨の先端には、毒性の皮膚分泌物がコーティングされている。しかし、この奇妙な適応構造がどのような仕組みなのかはほとんど知られていなかった。従来の学説では、身を縮めて皮膚の専用の穴から肋骨の先端を突き出すという単純な仕組みだと考えられていた。

 しかし、オーストリアにあるウィーン大学のエゴン・ハイス氏率いる研究チームにより、実際には肋骨を前方に回転させて、ヤリのように鋭い先端部を皮膚のイボから突き出していることが判明した。

 ロンドンにあるオープン・ユニバーシティの生物学者ティム・ハリディ氏は今回の研究を受けて、「この現象は昔から知られていたものだが、肋骨の動きを詳細に調査した研究は初めてだ」と話している。

 骨突起がトゲのような機能を持っている動物は数多く存在する。しかし、胸郭を構成する肋骨を“秘密兵器”として振り回すことができるのは、イベリアトゲイモリと近縁のイモリ数種だけに限られるという。

 イモリがどのように防御行動を取っているのか明らかにするため、ハイス氏の研究チームは、生きているイモリに綿のボールで触れる実験を行った。捕食動物の攻撃を真似たもので、イモリが防御姿勢に入るまで続けられた。

 X線撮影とCTスキャンで解析した結果、肋骨を回転させて体外に“トゲ”を突き出していることが判明した。また、皮膚にトゲ専用の穴がないこともわかった。つまりイベリアトゲイモリは、トゲを突き出すたびに自分の体に穴を開けていたのだ。

 体を傷付けることで生じる危険性よりも防御上の利点の方が上回るという判断なのだろう。イベリアトゲイモリは傷を急速に回復させることができるという。「イモリをはじめとした両生類は、驚くべき皮膚の再生能力を備えている」とハイス氏は話す。

 イベリアトゲイモリはそれぞれの肋骨の外側部がコラーゲン線維に包まれている。コラーゲンはタンパク質の一種で、人間の体内でも日焼けした肌の修復などに使われている。研究チームは、豊富に存在する肋骨のコラーゲンが傷の回復を促進しているのではないかと推論している。さらに、イベリアトゲイモリは免疫系が非常に強力なので、傷口が化膿(かのう)せずに済む。

 前出のハリディ氏は次のように話す。「傷ができてもそれほど悪化せず、負担も少ないようだ。自宅のオフィスの水槽でイベリアトゲイモリを数匹飼っていて、つまみ上げるとちょっとチクっとするけど、イモリの方はまったく気にもしていないようだ」。

 今回の研究により、防御用の奇妙な適応構造がどのように進化したのかを解明する手掛かりも得られた。

 イベリアトゲイモリの長い肋骨は背骨に接合している。接合部は二またの柔軟な関節になっており、肋骨を前方に振り動かせるようになっている。ほかのイモリにも同じような接合部を持つものがあり、脅威に直面したときは肋骨で囲まれた胸郭を大きく広げる。見かけ上の体の大きさが増すため、捕食動物の攻撃を思いとどまらせる効果があるとされる。

「このように単純に“胸を張って”威嚇していたのが、しだいに飛び出しナイフのようなイベリアトゲイモリの肋骨へと進化していった可能性がある」と、研究チームのハイス氏は話す。「体を大きく見せようと進化していくうちに肋骨がどんどん長く伸びる。皮膚が限界まで広がり、ある時点で肋骨が皮膚を突き破る。こうして突き出た肋骨の先端を武器として利用するようになったのだろう」。

「Journal of Zoology」誌オンライン版より

温暖化、氷河期到来を凌ぐ勢いで進行中

2009年09月06日 10時30分38秒 | 自然
 北極の気候変動に関する最大規模の調査により、次の氷河期の到来に人間がブレーキをかけているということがわかった。2000年前と比べ北極地方では温暖化が進んでいるが、これが地軸の揺らぎによって起こる地球の寒冷化傾向を逆転させているという。

 これまで研究者が注目していたのは、400年前の北極地方の気温に関するデータだった。

 コロラド大学ボルダー校にある極地・高山研究所(INSTAAR:Institute of Arctic and Alpine Research)のギフォード・ミラー氏は、「このデータから、気温は20世紀に入って急上昇したことがわかったが、その原因が人間の生み出す温室効果ガスにあるのか、それとも気候の自然な変化にあるのかは定かではなかった」と説明する。

 そこでミラー氏らの研究チームが400年前よりはるか昔の気温を調べたところ、20世紀の急激な温暖化は、数千年にわたる寒冷化の進行を上回るほどだったことがわかったのだ。「これだけ温暖化が進んでしまった原因として最も理にかなうのは、温室効果ガスの増加だ」と同氏は言う。

 研究チームが作成した気候モデルは、堆積物コアや年輪などに関するフィールドデータと見事に一致しており、同チームの考えを強固に裏付けているという。「最終的には地球は氷河期に突入するだろうが、何千年も何万年も先の話である可能性が高い」と同氏は付け加えている。

 太陽に対する地球の角度は、自転軸(地軸)の傾きの自然な変動によって2万6000年周期で変化している。地軸の傾きが四季を作り出すが、この7000年間にわたる地球の傾きの変動によって、地球が太陽に最も接近する時期が9月から1月に変化した。

 これは、北極地方では夏場の太陽光が弱くなっていることを意味している。つまり北極地方は寒冷化が進んでいると考えられるのだ。

 過去の気温を算出するため、研究チームは北極地方の湖の堆積物を調査し、氷河コアや木の年輪に関するこれまでのデータを確認した。さらに、コロラド州ボルダーにあるアメリカ国立大気研究センター(NCAR)で、地球環境のコンピューター・モデルの分析を行った。

 ミラー氏の研究チームは、地球の傾きによって生じる揺らぎが、寒冷期において1000年ごとに0.2度ずつ、北極地方の気温を低下させていることを発見した。

 しかし1990年代半ば、人間がもたらした地球温暖化が気温の低下傾向を上回ってしまったのだ。この数十年で、気温はおよそ1.4度上昇している。実際、この2000年間で最も気温が高いのは、1950年から2000年までの50年間だという。

 気候変動が最も強い影響を及ぼしているのは北極地方であり、そこでは温暖化が地球上で最も速く進行している。これは、夏場の海氷と永久凍土の融解によって北極地方の気温が大きく左右されるためだ。

 2007年に最低量を記録した夏場の北極海域の氷は、2030年には完全に消滅すると言われている。白い氷が存在しなければ、太陽光は大気へ反射されず海の底へと吸収されてしまう。これが北極地方の温暖化を加速させるのだ。永久凍土の融解によって、凍土内に潜んでいた温室効果ガスの二酸化炭素とメタンは既に放出され始めている。

 ミラー氏は次のように語る。「温暖化が今後も進行していくことは間違いない。北極地方はその影響を大きく受けることになるだろう。しかし最大の問題は、氷が溶けると海水位が上昇するという事実だ。つまりこれは地球規模の問題であり、その影響は甚大なものとなるだろう」。

 この研究結果は2009年9月4日発行の「Science」誌に掲載されている。

メタボリックシンドロームの原因タンパク特定

2009年09月06日 10時27分49秒 | 健康・病気
メタボリックシンドロームを引き起こすタンパクを尾池雄一・熊本大学大学院医学薬学研究部教授が突き止めた。

このタンパクはアンジオポエチン様タンパク質2(Angptl2)と呼ばれるもので、血管新生因子のアンジオポエチンに構造が似た分泌型タンパクの一種。尾池教授は、Angptl2が肥満の人々の脂肪組織に多く見られることに着目、マウスとヒトでどのような働きをしているかを調べた。

肥満になると内臓脂肪組織で慢性炎症が起きており、それが動脈硬化症や糖尿病など生活習慣病を引き起こすことがここ数年の研究で明らかになっている。尾池教授は、肥満や、インスリンの働きが低下して糖尿病、動脈硬化症になっているマウス、ヒトいずれにおいても血液中のAngptl2濃度が高くなっていることを突き止めた。また、本来、Angptl2があまり見られない皮膚にAngptl2が過剰に現れるマウスをつくると、皮膚に炎症が生じた。逆にAngptl2を欠くマウスでは肥満で見られる内臓脂肪組織の炎症の程度が正常な野生型マウスに比べ軽度で、糖尿病を発症しにくいことも分かった。

これらの結果から尾池教授は、肥満の内臓脂肪組織ではAngptl2が増加しており、脂肪組織の慢性炎症を引き起こしていること、その結果、全身でインスリンの働きが低下、糖尿病の発症につながっていることが分かった、と結論づけた。Angptl2の発現を抑えることで、メタボリックシンドロームや、糖尿病、動脈硬化症の発症を抑える治療薬の開発につなげることが期待できる、と尾池教授は言っている。

科学技術振興機構(JST)