空き時間を利用して静岡市美術館で開催中の『巨匠の眼 川端康成と東山魁夷』展に行ってきました。
「巨匠の眼 川端康成と東山魁夷」|静岡市美術館
平日の昼時でしたが、開期終了間近ということもあってかとても賑わっており、そのうえ、課外授業の中学生のグループに出くわす…というアンラッキー(T^T)でしたが、あまり時間もなかった為、くじけず観て廻ることに(笑)
深い親交があったという二人の交流に焦点をあてながら、川端と東山の収集した作品および東山作品200点余を集めたこの作品展は、
川端や東山自身の言葉や、お互いへの言葉なども合わせて紹介されていて、二人の眼を通して作品を観る!!という楽しさも味わえるつくりに♪ヽ(´▽`)/
4つのセクションに分けられた展示はまず…
「第一章 文豪・川端康成」
と題された、川端自身の自画像でスタート。
文化勲章やノーベル賞メダル、墨書や当時の書斎の再現~と、まさに文豪としての川端が伝わるような展示。
「秋の野に」と題された屏風は、川端がノーベル賞受賞の夜につくった句を書にして東山に贈ったところ、東山が屏風に仕立て、裏に画を描いたものなんですって。金色に輝く夕映えの草原がとても美しい画でした。
展示は
「第二章 川端康成の眼」
へ。
そのコレクションの多岐にわたること三( ゜∀゜)土偶に始まり、漆塗り、ガラス、日本画、西洋画…と、独自の視点での収集がとても興味深かった。
目玉はやはり、国宝【十便十宜画冊】(池大雅「十便宜」・与謝蕪村「十宜図」)なのかな?
一茶の墨画や、渡辺華山、岸田劉生…などなど。
「おぉ…!」と思わずため息がでるような作品の数々にあって、ひと際私の眼をひいたのは
[雑草] [不知火]と題された2つの水彩画。草間彌生、無名時代の作品は、現在のようなエネルギーは全くなく、むしろ静と冷をかんじるモノ。これを見染め購入していた川端の眼にも感服です!
つづく
[第3章 川端文学世界]
では、タイトルの通り川端文学に関連した作品群が並びます。
芹沢けい介による装幀、
ふたりの出会いともなった東山による装幀や挿し絵とその原画…
川端康成の交友の広さが伺える書簡の数々。(谷崎潤一郎、菊池寛、安吾…などなど!!)
とりわけ、興味深かったのは、太宰治からの1936年の書簡。
「晩年」において、芥川賞を自らに与えてくれるよう懇願したその手紙は、4~5Mはあろうかと思われる長いながい書簡。
「死なずに生きとほして来たことだけでもほめてください…」
独特の筆跡と文体で、その人となりがうかがえるものでした。
そして
[第4章 東山魁夷の眼]
紀元前ギリシャのブロンズ、中国の陶器、香炉、日本画…と、こちらも様々なコレクションが並び、
つづいて
若い時代の東山のスケッチ~晩年の風景まで、色彩豊かな作品がずらりと並びます。
実は、東山魁夷の作品をちゃんと観るのは初めて。「あの、風景画の人ね…」くらいの知識しかなかったことが逆に良かったのか、余計なことを考えずただただ彼の世界に浸ることができました。
冬の景色(雪や氷)も、秋の枯れはじめた山も、青々と繁る夏も…透き通るような色彩で、温かくさわやかに、そして強ささえ感じられる。冬の景色でさえ温かさと柔らかさが伝わるような景色。
それはピカソの[ゲルニカ]や、ゴッホの[ひまわり]に感じるうち震えるような感動ではなく、静かに打ち寄せるさざ波のような…ゆったりとしておだやかな感動でした。
[北山初雪]
川端コレクションの作品ですが、
独特の造形美と、空気感まで伝わるような色彩は、いつまででも眺めていられる大作でした。
急がしく観てまわりましたが、
絵画と共に読書も好きな私にとっては、とても満足のいく作品展でした。
東山作品の魅力をもっとじょうずに伝えられたら…とも思いましたが、なかなか言葉では説明できない画家や作品ってものがあるのです…と久しぶりに感じました♪ヽ(´▽`)/
「私は生かされている
野の草と同じである。
路傍の小石とも同じである。
生かされているという宿命のなかで
せいいっぱい生きたいと思う。」
―東山魁夷―