さて昨日アナウンスさせていただいた「北方型住宅2020」基準。
上の表組みは、国の「長期優良住宅基準」と比較したもの。
住宅の性能基準にはさまざまなレベルがあります。
制度設計を現在段階で行っていくときに、いろいろな考え方があり得る。
「世界最先端の・・・」というような基準を策定するのもひとつの考え方。
住宅「エネルギー消費」に極限的にこだわるゼロエネ・創エネ的な方向もある。
「差別化」基準として、住宅性能値競争を仕掛ける考え方もあるでしょう。
多様な価値観のなかにあって、そういう志向性もありだとは思います。
それを実現可能な「作り手の技術レベル」も北海道は先端的に高いのも事実。
しかし住宅はふつうレベルで生活する住まい手があって成り立つもの。
当然生活水準・所得水準も考え合わせた、総合的「品質」が問われてくる。
よく言われるように、一例としての「ドイツパッシブハウス基準」は
北海道や北欧などの「寒冷地」でそれを実現しようとすると、コストとメリットの
バランスからはやはり過重なコスト負担が避けられない。
たとえば年間で暖房エネルギーコストを1万円削減するのに
初期建設コストが100万円増えてしまうのであれば、価値感は揺らぐ。
それこそ出自たる「開拓使」の理念、地方自治体である北海道からすれば、
この地に安定的に暮らせる人口を維持し増やしていくことがより重要であり、
他の地域に対して「差別化」して住むことが目的ではない。
より「住みやすく」「建てやすい」という住宅であることが大切だと思うのです。
飛び抜けていい数値基準の少数の住宅よりも、
ユーザーフレンドリーな価格と品質性能が平均値として保障されることが有益。
そういった方向性で、作り手のレベルの高さを維持し発展させることが、
地域自治体の「技術資産維持」にとってもきわめて有用という志向性。
この「北方型住宅」基準では、きわめて特異的に「作り手の要件」を重視している。
BISという地域認証の「断熱施工技術者」資格を推奨しているのです。
っていうか、事実上そうした技術資格者がいない工務店ビルダーは
この基準から想定されていないといえるのです。
絵に描いた数字を重視するのではなく「確かな作りよう」を重視している。
数値基準レベル自体はどんどん上げていけるかも知れないが、
それ以上に地域社会の技術品質レベルの確保に優位性を見ている。
この点が、北海道の住宅基準が大きく異なるポイント。
BIS資格について講習で「テスト」が実施される。けっこうキビシイ。
国の一般的な技術資格では「講習受講」だけが義務化されている。
また更新時講習では、常にリアルな最新技術知見が情報共有される。
貴重な地方自治体の建築技術資産の永続性を担保しているといえる。
そして上の表のように、特定の数値項目だけではなく、
いろいろな技術指標について、偏りなく各項目が網羅されている。
「履歴情報の保管」という項目がありますが、
一般的には「保管義務」があるとしか規定されていないものが、
北方型住宅では、公共的な保管機関までが用意され
万が一問題が起こったときにユーザーの権利が保全されるように
社会的に十分に機能することが仕組み的にも担保されている。
総体としての制度設計が歴史的検証を経てきているといえるでしょう。