三木奎吾の住宅探訪記

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。

【防火の「木外壁」を可能にする「高断熱」】

2020-06-19 05:23:53 | 日記




さて、あちこち「寄り道」の北総研取材行脚。16日に旭川まで出張して参りました。
取材の内容自体についてはReplanWEBマガジン「リプランくんが行く」で
わかりやすくお知らせしたいと思っております。
このシリーズでは、ユーザー目線の「リプランくん」がもつ素朴なギモンから
わかりやすく住宅技術のことを「解説・紹介」します。ご期待ください。

で、わたしは取材して感じたことを、書いてみます。
わたし的にはPDFなどで「防火構造」の大臣認定取得説明を見ていて
「え、これはどこがポイントなんだろう」とギモンでした。
なぜなら特段の特別仕様ではなく、北海道ではごく一般的な
「付加断熱」仕様の壁構造にしか見えなかったからであります。
ひととおりの「説明」を伺った後で、この素朴な感想から迫って見た。
「そうなんです、北海道でふつうの高断熱仕様であれば、防火構造が可能です」
というあっけないほどの「説明」です。
そもそも「防火構造」の認定基準とは、使っている建材が延焼してから、
「もちこたえる」時間が30分を越えることが基準とされている。
防火とは住む人の命を守れるかどうか、がポイントなんですね。

そこそこの「難燃姓」を保持した現代技術の「断熱建材」を組み合わせた
北海道ではごく一般的に施工されている「付加断熱」仕様ならば
おおむねこの「30分条件」はクリア可能とのこと。
ただし、防火構造の「大臣認定」は当然ながらいくつかの認定テストがある。
それをクリアさせるのにはそれなりの「申請料」もかかる。
まぁ端的に「試験」を通すにはそれなりの「金額負担」が避けられない。
それを、そのためだけに個別建築会社が費用負担するのも難しい。
必然的に企業間連携的な「制度システム的手法」が不可欠。
標準化されたシステム仕様ごと防火認定されることで市場性が広がる。
そういった企業社会制度形成で「触媒的機能」を北総研が果たすことで
今回の画期的な「木を張った外壁構造」での「防火認定」が可能になったのです。
具体的には、付加断熱材のメーカー団体ごとに「仕様変更」バージョンとして
3パターンの仕様を用意し、順次認定プロセスに入っている。
とりあえず今の段階では「フェノールフォーム」断熱材の仕様タイプが
大臣認定を取得できたのです。
追ってより一般的なグラスウール仕様のものなども認定申請許諾予定。

お話を伺っていると、北海道が地域として開発してきた
「高断熱高気密住宅技術」そのものが存立基盤をつくったことで、
「木の外壁の家が防火認定」という住宅の世界での革命的なことが、
比較的簡単に実現してしまった、と言えるでしょう。
むしろここからは「マーケティング的」なアプローチの問題ではないかと。
付加断熱は寒冷地ではごく当たり前に実現しているけれど、
近年急速に普及が進み始めた本州、関東以南地域では
相当に先進的な作り手しか取り組んではいないのが現実。なんですが、
逆に言えばそういう「先進的な作り手」にとってまたとないチャンス到来ともいえる。
これまで手掛けてきた付加断熱構造で、木の外壁をアピールポイントにできる。
壁厚が若干厚くなるけれど、そのご褒美としてデザイン性豊かな外観意匠性を
ユーザーに強くアピールできるといえるのですね。
根強く存在する「木の外壁」の意匠性への憧れが、そのまま
高断熱住宅のセールスポイントに利用できると考えられる。
まぁ、関東以南地域では「外壁の厚さ」というのは、可能な限り「薄くしたい」
というのもリアルな現実ではあるけれど、
「選択のバリエーション」として、ユーザーには受け取られるのではないか。
「木の外壁」が持つ自然そのものの「風合い」は強いインパクトを市場に与える。
で、これからは防火外壁建材としてほぼ数十年間市場独占してきた
サイディング外壁の市場での立場、ユーザー支持の度合いが
露わになってくるように思われます。
費用コスト的には、サイディング対自然木でほとんど金額差はない。
付加断熱・性能要件と豊かな意匠性が結びついて、どういう変化が生まれるか?
非常に興味深い局面が広がっていくように思われます。


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