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20世紀ロシア文学史の教科書

2012-02-18 01:02:11 | 文学
『20世紀ロシア文学』(モスクワ、2011年)というロシア文学史の参考書がロシアで出ています。

目次
序論:ロシアの20世紀
1章:シンボリズム
2章:アクメイズムの歴史と詩学
3章:ロシア未来派の詩
4章:ロシア・イマジニズムの歴史と詩学
5章:構成主義
6章:「セラピオン兄弟」
7章:オベリウ:歴史と詩学
8章:社会主義リアリズム
9章:現代文学のプロセス(1990年代~21世紀初頭)
10章:ロシア亡命文学
11章:ロシア・ポストモダニズム
12章:20世紀末~21世紀初頭における大衆文学の現象

以上のような内容です。
日本にもロシア文学史の教科書は何冊かあります。東大出版のものが定番ですが、10年ほど前には岩波文庫から、また数年前には早稲田大学の執筆陣によるロシア文学史の参考書が出ました。ただ、20世紀に的を絞った、しかも最新の研究成果を反映している文学史の教科書は、日本ではなかなか出版の機会がないようです。ロシアでは20世紀にのみ範囲を絞った文学史の教科書さえ何種類も出ており、やはりその多様性は日本とは比較になりません。まあ本国なので当然と言えば当然なのかもしれませんが、しかしそのうちの1冊くらいは邦訳してもよいのではないだろうか、と思うわけです。それで、訳すとしたらこれがいいのではないだろうか、と考えたのが上の本。

日本にも20世紀ロシア文学を紹介する好著がたくさんあるのは確かですが(例えば沼野充義先生の多くの著作や井桁貞義『現代ロシアの文芸復興』等々)、それらの多くは文学史の教科書として書かれているわけではないので、記述が著者の好みに偏っていたり、体系性に欠けていたりします。もちろんそういった点こそがその本の魅力でもあるわけですが、20世紀ロシア文学を本格的に学ぼうとする若者にとっては、必ずしも「最適の入門書」にはなりません。これまで20世紀ロシア文学を勉強してきた人たちは、したがって外国語で学んできたわけです。それは大変すばらしいことですが、しかしもし日本語で文学史を体系的に学ぶことができたら、という願望がぼくにはあります。翻訳があってもなくても研究者であればどうせ外国語で多くの本を読んで勉強しなければならないとはいえ、その前段階にいる若者たちには、もうちょっと日本語で知識を提供してあげた方がいいのではないだろうか、と考えます。これは、ひいては20世紀ロシア文学を研究したいという若者を育てる土壌になりえます。

上記の本を選んだ理由は、これまでの日本ではあまり知られていないけれども重要な文学一派である「イマジニズム」「セラピオン兄弟」「オベリウ」が入っており、また21世紀にまで目配りしてあるからです。更に分量が適量であること(少なすぎず多すぎず)。当然この本にも欠点というか記述が不足している項目がありますが、しかしシンボリズムからポストモダン、更には21世紀の現在まで一望できる教科書が日本語で読める、というのはとてもありがたいんですよね。

文学史の教科書は、学生のみならず一般の人たちにも手に取ってもらえるでしょうし、それなりに需要はあるような気がするのですが、やはり翻訳は難しいのかなあ。原著は2011年刊なので、訳すなら早ければ早い方がいいと思うのですが。5人くらいで分担してやればすぐですよ(たぶん)。


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2 コメント

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Unknown ()
2012-02-21 21:19:07
ロシアさいこー
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ロシア (ペーチャ)
2012-02-21 23:39:52
Tさんコメントをありがとうございます。
最近は前ほどロシア文学を熱心に読めていないので、ぼくも「さいこー」と感じた昔の気持ちを思い出したいものです・・・
返信する

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