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たまゆら



宮崎市の大淀川河口付近。
私はこの夕陽を見るのを楽しみにしていました。
12月31日に宿泊したこのエリアに
49年まえの昭和39年(1964)、川端康成が滞在し
この夕陽のことを小説に書きました。

やわらかいわ。やわらかい夕映えが、景色をみんなつつんでいるようだわ。あたたかい夢につつまれているようだわ。

>>『川端康成と夕日』渡辺綱纜
http://essayistclub.jp/clubessay/clubessay_watanebe01.html



私たちが1泊した小さな旅館のエリアにある宮崎観光ホテル。
ここに川端は15泊したという。

フェニックスがつらなる川岸公園と道をへだてて、観光ホテルはあった。
・・・
大淀川の川岸公園には、フェニックスの並木のところどころに、だんだら模様の布の日よけを張って、その下に簡素な木のテエブルとベンチがおかれている。





「川に、あんなに水鳥が浮いているの、鴨でしょうか。」
「鴨だろうね。シベリアあたりの、寒い国から渡ってきたんだろうね。」
「みんな、川上の方に首を向けているわ。」
「ああ、流されないためじゃないの?」
「水は流れているでしょうか。」




日没後、私たちが宿泊した旅館から撮った大淀川。
ちょうど、橋の中央部を電車が通り過ぎていきます。



旅館の窓から撮った大淀川の夜景。



川端康成の小説「たまゆら」。NHK朝の連続テレビ小説「たまゆら」のために書き下ろしたそうです。



川端が宿泊した宮崎観光ホテルの前あたりにこの文学碑。



「たまゆら」の文字は、本と同じく川端の書です。



「たまゆら」のテレビ放映は宮崎へ新婚旅行ブームに一層拍車をかけ、観光宮崎の礎となった
と記されています。

あれから約半世紀の月日が流れ・・・
「新婚旅行で宮崎に行って来ました」という話は聞かなくなりました。この石碑のことも、この小説のことも忘れられているのではないでしょうか。今年の11月の15日間が川端康成がこの地で「たまゆら」を書いた半世紀記念日となりますが、そういうお知らせを目にしませんでした・・・