うんたま森のキジムナー

初体験

宮古島に長く住んでいても、入ったことの
ないお店がいくつかある。その中で
もっとも縁のないのが貴金属店。
秘かな体験をしてみようと古くからある
貴金属店に入ってみた。店の主人がどんな
反応をするのか楽しみだ。

本来、貴金属は目立つものではなく、身に着ける
人を引き立たす脇役だと思っている。大阪の
オバチャンみたいに耳より大きなイヤリングや
成金が指に通す大きな指輪ほど悪趣味なものは
ない。そんな人に限って「お気づきになった?」
と自慢げに聞いてくるからやっかいだ。
一応こちらも客商売、「お似合いですね」と
ヨイショする。

貴金属店とはいかなるものか、店の主人はどんな
ものを進めてくれるのか?大きな期待をふくらまして
店に入ったが、「いらっしゃいませ!」の一言もない。
それどころか、いぶかしげな顔をこちらにむけて
今にも後ずさりして逃げようとしているように
さえ見える。黙っていては強盗に間違えられそうな
気がしたので「コンニチワ」と声をかけた。
(こっちが客やのになんで気をつかわなアカンねん)
店の主人はそれでも何も言わずこちらを見つめたまま。
「ちょっと見せて」と言うとやっと口を開いた
「ここに置いてあるだけです」
「おじさん、何か勘違いしてないか?ワシ客やで」
「はい、ここに置いてあるものしかありません」
店の壁には警察から配られた指名手配犯のポスターが
やけに目立つところに貼られている。
店のオジサンの視線は先ほどからチラチラとそちらを見る。
これではお互い落ち着いて商品さえ見ることが出来ない。
「又、今度来るわ」と言い残して店を出た。
やはり私が出入りするような店ではないようだ。

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