ぶろぐのおけいこ

ぶろぐ初心者は書き込んでみたり、消してみたり…と書いて19年目に入りました。今でも一番の読者は私です。

オンライン脳  川島隆太著  アスコム

2023-03-06 23:47:31 | 読んだ本

 脳科学者である川島隆太さんが、リモートによる仕事やスマホを使用することの危険について訴えた本。

 

 先日、東京駅のホームでベビーカーに乗せられている子供が、スマホを持ってゲームよろしく、両手で触っているのを見ました。その子供が思う通りゲームか何かを操作できているのか、単に大人の動作の真似をしているだけなのかは判断できません。ただ、スマホが子供がぐずらずに、機嫌よく過ごすためのツールになっていることだけは遠くからでもわかりました。

 また私の知り合いは、孫が、「アレクチャ…」と声をかけ続けて(まだアレクサと正しく発音できなかった)、やっと先日アレクサに「認識してもらえ」(正しく発音できるようになったわけだ)、指示が実行できたと話してくれました。そのお孫さんは2歳。子供は周囲の大人を真似て成長していくものですが、声をかければそのとおりに実行されるものと思って成長する行く末はどうなんだろうと心配にもなりますよね。

 

 さて本書。危機感をあおる表紙です。ちょっと嫌らしいくらい。「東北大学の緊急実験からわかった危険な大問題」「大人も子どもも危ない!」「リモートで脳に大ダメージが!!」「脳の発達不全、集中力低下、学力低下、うつ病…。」「イーロン・マスクはなぜリモートに否定的なのか?」

 私はたまたま知人から、「こんな本を読んだ。概ね自分が思っていた通りだった」という連絡を受けて買ってみたのですが、この本が本屋で平積みされていたら驚いただろうなと思います。

 オンラインによるミーティングが危険なのは、直接相手の目を見ないからだと筆者は説明します。画面とカメラの位置にズレがあるので視線が相手に届かない。だから心が動かないのだと。なるほどと思います。また、画素数の少なさ(人間の目を画素数で表すと1億3000万画素になるらしい)や電子紙芝居(パラパラ漫画のよう)では脳はリアルな映像を見ているのと同じにはならないと。

 もうひとつは、スマホの罪です。スマホを一日に一時間使うと学力が落ちるという。学力の定義が明確になされていないのがもやもやするところではあります。筆者によればスマホって何でもできる。それゆえ、勉強をしていても仕事をしていてもSNSなどにより、思考が中断されるということ。これは十分納得します。子ども時代にスマホなどありませんでしたし、もとより「一つしたらひとつ」と妻にあきれられている私は2つのことを同時にできません。家の中でもスマホを持ち歩く妻と違い、帰宅したらスマホはほったらかし。勤務中もほったらかし。何かをしているとスマホの確認をつい忘れてしまう(そんな様子では周りからアテにされないではないかと思われるでしょうが、もとより友達のない私のこと、ほとんど問題にはなりません)。つまり、私はスマホで思考が分断されることがないのです。世の中の多くの人は、スマホに時間も思考も細切れにされながら1日を過ごしているのですね。

 本文を一通り読み終え、そんなに過激な内容ではなかったと少し安心しました。本屋で手に取ってもらうために、表紙を相当派手に作ってあるのだと思いました。もうひとつ残念なのは、本文に太字ゴシックで強調してある体裁をとっていることです。私なんぞにはせっかくの本文が安っぽく見えてしまう。しかし、これとて振り返ってみれば、大事な所を強調してあげなければ読み手がちゃんと読み取れないということかも知れません。子どもたちが、文意を正しく読み取れないというニュースを見たことがありますが、すでに大人もそうだという証拠かもしれません。

 

 大宅壮一氏が「一億白痴化」と、テレビを批判したのは1957年。私が生まれる前のことです。そして私たちはブラウン管から放たれる光を浴びて大きくなりました。今、スーパーに行ってもレジのスタッフが直接お金を触ることは少なくなりました。お釣りの計算をする必要もありません。多数の商品の価格を記憶する必要もありません。

 私は時々こんなことを考えます。例えば、弘法大師は偉い人だったに違いないでしょうが電車に乗れないに違いない(切符販売機で切符を買い、自動改札を通って…)。電話をかけることもできないに違いない。ましてクルマの運転などできようはずもない。とすると、時代によって求められる能力も学力も違うわけで、新しいテクノロジーが台頭してきたとき、従来の能力観、学力観でものを考えるのはよくないのではないか。

 スマホか否か、リモートか否かという二択ではなく、危機感は危機感として冷静に受け止め、柔軟に対応することが必要ですね。


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