ぶろぐのおけいこ

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ベタ踏み坂  神仏の通ひ路(4)

2022-11-06 19:06:35 | PiTaPaより遠くへ

 あのCMが放送されて何年になるのだろう。Web上で日本海新聞の記事がみつかりました。2014年1月9日の日付の記事に、「昨年12月28日からこのCMの放送が始まった」とあります。9年近く前ということですね。私は2009年に江島大橋を通っているのですが、ベタ踏みとも、急こう配とも意識せずに通過してしまいました。それをCMは長年にわたって名所にするのですから、演出の力ってずこいものだと思います。

 それから何度かこの橋を渡るたびに、車道の左右に作られている歩道を歩いてみたいと思いました。しかし先を急ぐ者には、なかなかクルマを置いて橋を歩くことはできないのであります。

 この度やっと願いが叶いました。松江市側の橋のたもとに近いコンビニに、お願いをして赤いクルマを停めさせてもらい、橋を1往復しました。まずは、南側の歩道。歩き始めると「ベタ踏み坂」の案内看板があり、CM後10年近くたってもまだベタ踏み坂というキーワードで訪れる人があるんだと嬉しくなります。なんと書いてあるのか私にはわかりませんが、ロシア語(らしき)の看板もあります。境港にはロシアの船も往来するということでしょう。

 コンビニでもらったチラシによれば、松江市側の勾配が6.1%、境港市側の勾配が5.1%だそうです。その6.1%を私は今歩いています。ワクワクします。橋フェチである私にとっては、海を跨ぐ橋、しかも県を跨ぐ橋を自分の足で歩くと考えただけでウキウキしてしまいます。

 確かに傾斜が急であることはわかりますが、徒歩で上る分にはそんなに苦しくはありません。階段を上ることを考えれば、いうほどの斜度ではないはず。高度を上げていくと、後方には中海と大根島がよく見えるようになります。中海の向こう、松江市方面は朝霧に包まれてきれい。小泉八雲はこの位置から松江を眺めることはなかったでしょうが、きっと、朝のすがすがしい雰囲気は感じ取ったに違いないはず。中海はほんに静かな海です。江島の南側には、松江方面から流れてきた霧がまだ残っています。太陽の下には大山のシルエット。一番高いところで45mほどあるそうですが、いい眺めです。進行方向前方にはちょうど美保関。手前には境港の街。

 早朝のこと、歩道を歩くような人はほとんどいませんでした。ランナーが一人ふたり、自転車の人が何台かいました。ランナーも自転車もこの橋を1往復したらいい運動になるでしょうね。けれど、管理者である堺港管理組合の案内板は、確か自転車は押して通行しなければならないと警告していました。そらそうですわね、坂が急なんだから万が一のことがあってはならない。しかし、何台かやり過ごした自転車は運転していましたよ。

 橋の一番高い所から少し下がったところに、道幅がやや膨らんだところがあって、緊急用の車両待避所になっています。歩行者用のベンチでも置かれていたら嬉しいなと思ったのですが、それはありませんでした。歩道部分には地図が描かれていて、境港を中心に中国やモンゴルまで書かれています。夜間にこの橋を渡るとオレンジ色の証明がついていますが、歩道にある太い手すりのようなパイプに電球が埋め込まれているようです。サミットを過ぎると橋は右にやや曲がって、5.1%の坂を下っていくことになります。県境は橋の中央ではなく境港市側の水際の上です。

 なぜ、こんな高い橋を作らねばならないか。中海に干拓計画の都合で締切堤防を作ってしまったものですから、外洋から境港水道を通ってやってきた大型船は、この橋の下を通ってしか米子にたどり着けません。そういう理由で桁下33mを稼ぐ江島大橋、そしてベタ踏み坂が出来上がったのです。

 というわけで、無事に鳥取県にランディング。今度は橋の北側の歩道を歩いて島根県側に戻ります。北側の景色は南側より地味な印象。

 その中に見えたのが境水道大橋。境港水道を跨いで島根半島へ渡る橋です。私が最初に渡ったのはまだ昭和の時代。通行料を払った記憶があります。この境港大橋に歩道があるのだと気づいたのは、火野正平氏の、「こころ旅」。高所恐怖症の彼はバスでこの橋を渡っていますが、その時に歩道が写っているのが見えたのです。この橋だって県を跨いでかかっているのですから自分の足で歩いてみたい。

 ところが、歩道らしきものはあるのですが、人が歩くことがあまり想定されていないようなのです。狭い歩道と車道との間にガードレールもない。それに島根半島側(北側)へ渡っても、歩道も車道と同じように掘割の中をぐるっと回らなければ海沿いの道へ降りられない。歩行者にとって難度の高い橋なのです。それから、境水道大橋の最大の勾配は7.25%なのだそうです。この橋のほうがベタ踏み坂の勾配より1%以上も急です。なのに、江島大橋を有名にさせた、その演出力を思うわけです。

 米子空港から飛び立つ飛行機が見えます。それに、出雲空港に降りる飛行機も美保関の上空から島根半島に沿って高度を下げるようです。昨日、お世話になった道の駅本庄もよく見えます。橋の歩道には、もともと点字ブロックが設置されていたのに、外されたように見えます。歩行者より自転車を優先させたということなのかな。そもそも、歩行者としての利用は少ないのかもしれません。

 ゴールが近づいてきました。立ち止まって景色を眺めたり写真を撮ったりしながら、行って帰って50分ほど。念願叶って、今日徒歩で1往復できました。

 同じ江島大橋を鳥取県観光連盟島根県観光連盟が説明している。面白いものです。

(つづく)


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