長い間本棚にあったものを、ふと思い立って読んでみました。この一冊は6年ほど前に亡くなった義父が買ったものでした。またそのうち読むかなと思ってとっておきましたが、この間から読んでいます。
短編8編からなる『鉄道員』のうち、表題作はずっと以前に読んだはずで、「鉄道員」を飛ばして「ラブ・レター」から読み始めました。以前に読んだことがあるのかないのか、筋はまったく覚えていません。
しかしまぁ、浅田さん上手いなぁ。しかも守備エリアが広い。「小説の大衆食堂」とか呼ばれていることをWikipediaで知りました。気取らずに短時間でおいしい小説が読めるってことでしょう。
基本的に読者を泣かせる作品揃いですが、「悪魔」のような、超現実的なお話もまた得意。この短編集には入っていませんが『地下鉄に乗って』もタイムトラベルするお話でした。よくこういう筋書きを思いつくねぇと感心する「ラブ・レター」。この話題をある知り合いにしていたら、その人の知り合いの女子高生が、「ラブ・レター」が好きだと言ったということを教えてくれました。女子高生には少々刺激が強すぎるかなと、おじさんは思ったものです。
家族モノも浅田さんは得意ですね。幼いころに蒸発してしまった父と再会する「角筈にて」。死んだおじいちゃんがやってくる「うらぼんえ」。離婚するはずだった夫婦が、映画館の閉館をきっかけに変わっていく「オリヲン座からの招待状」。泣かせます。これまたWikipediaによれば「平成の泣かせ屋」とも呼ばれているらしい浅田さん。最後まで読んだ後、表題作に戻ってみました。改めて読んでみて、覚えている部分も多いのですが、やはり看板を背負うだけのことはある、泣かせる作品です。
私の記憶にある浅田作品の中では、『霞町物語』が一番ですが、『鉄道員』もなかなかと思ったのでした。奥書によれば、父がこれを購入したのが1998年か1999年ごろ。20数年前に、きっと父も「泣か」されたに違いありません。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます