この夏すでに2度、吉野に行きました。行って満足して帰ってくるのならいいのですが、私はどこへ行っても、忘れ物でもしてくるように次への宿題をもって帰ってきてしまいます。
1度目には青根ケ峰に行きたい、才谷というところに行ってみたいという「宿題」でした。解決すべく、2度目の吉野行きでは前者は解決したものの、後者は未解決のまま帰ってきてしまいました。しかも、吉野大峰林道を走ってみたいという次の「宿題」をもって帰ってきてしまいました。
そして今回です。吉野大峯林道を走って天川村か川上村に下りたいと思い、出かけました。
今回は明日香村の稲渕から県道15号で芋ケ峠を越えて吉野入りをしようと出かけました。稲渕は、かかしコンテストが行われるところで、秋にはたくさんの人たちがかかしを見に来ます。まだ季節には早いですが、亡くなった志村けんさんと思われるジャンボかかしだけはすでに出来上がっていました。
稲渕の飛鳥川には男綱と呼ばれる注連縄がかかっています。男綱という限りはどこかに女綱があるんでしょうね。そうそうするうちに女性が一人、自転車を漕いで上流に向かっています。スポーツサイクルには見えません。地元の人でもなさそうですが、観光客のようでもない。水色のスポーツウェアで、ひと漕ぎひと漕ぎ、ゆっくりと坂を上っています。
稲渕の集落の中を走って、関西大学のセミナーハウスを越えると、一気に谷が狭くなりますので、クルマではこの先には入らないようにしていたのですが、今日はスクーター。遠慮なく進んでいくとやがて景色が明るくなって、女綱がここにあるという案内。注連縄の真ん中に下がっているのは陰物だと書かれていました。なるほど。男綱にぶら下がっていたのもそれなんですね。シャッターを押している間にまた先ほどの自転車の女性が追い越していきました。暑いのにご苦労様です。ここは栢森という集落だそうです。
栢森の集落が終わりというころ、「天空の展望台」の案内が見えました。展望台なんて言葉にめっぽう弱い当方、案内にしたがってスクーターを走らせたのでありました。車一台がやっと通れるような道、舗装こそされていますが、農作業の軽トラしか走らないんじゃないのと思うような道です。右は山肌、左はイノシシ除けのネット越しの棚田、そんな心細い道をどんどん上っていきます。道の真ん中に青っぽい色の蛇が一匹。機嫌よく昼寝をしていたものと思われますが、エンジン音に驚いて逃げていきました。クルマはここに置いて徒歩で展望台を目指すようにと書かれた看板も無視して、上っていくと道路にいきなりとうせんぼ。
金網のゲートです。獣が入り込まない工夫と思われます。自分で開けてスクーターを通しまた閉めて…相当高度を稼いだと思ったのですが、やがて見えたのは集落。天空に人が住んでいる!人家の間を抜けて、もう一度金網のゲートをくぐったら、そこにスクーターを置いて石段を上がる。入谷という集落の氏神さんのようです。神社が集落の一番高いところにあるので、ここを展望台として売り込もう!にしようということになったのでしょう。神社に付随する建物の横に広場を設けて、テーブルとベンチを置き、観光地でよく見るCOVACの双眼鏡を設置して、風景を説明した看板を張る。立派な天空の展望台。標高は450mだそうです。
展望台のすぐ下は浄水場の施設、その下に何軒かの家が見えます。もともとが山の中なので、麓の集落なんぞは山襞に隠れて見えません。西の葛城山、金剛山は私でも確認できる。あとは高取城跡があの辺りらしいということくらいしかわからない天空でした。案内板によればあべのハルカスが見えるそうですが、水蒸気のせいでしょう、確認できませんでした。
またゲートを2回くぐり、栢森まで下りてきて気づいたのですが、栢森の集落は瓦屋根が美しい。絵描きさんなら素材にするに違いないと思いました。
たまたま後日、かつて明日香村に住んでいたという人の話を聞くことができました。「柏森では瓦屋根が美しいと思った」と言うと、「景観を保護するために住民にはいろいろと制約があって、それはそれは窮屈なものだ」と彼は言っていました。私たちが明日香村を訪れて、「風景に心が和むねぇ」なんて呑気に言っていられのは、村の厳しい規制のおかげでもあるわけですね。
(つづく)
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