若い人たちが読むことを念頭において、平易な言葉で、奈良大学の知的人的資源を活用して歴史、文化、社会、人間について取り上げる奈良大ブックレットシリーズの第8弾。今回は国文学科の先生方6名が奈良の文学やことばに焦点を当てて執筆した一冊。
3つの章と2つのコラム、そして資料編と、コンパクトで、私のような理解に時間のかかる者でも、最後までたどり着けました。
いきなり、「ガゴゼ」という化け物の話からスタート、これが元興寺とかかわりがあるらしい。語源とはどういうものなのかを教えてもらったのが、私にとってはこの章のいちばんおいしいところでした。「私たちは正体不明のことばに出会ったとき、自分が知っていることばをもとに後から語源を作り上げ、正体不明に正体を与えようとする」「実際にそのことばを使う人々たちにとっては、それが後付けであろうと何であろうと、それこそがそのことばの正体」というところに、なるほど!と納得をしたのでした。
関西人である私たちには、「邪魔すんでー」「邪魔すんのやったら帰ってやー」「あいよー」という掛け合いはすぐに出来ますが、私たちがお店に入るとき、何と言って入るか。近畿地方でもいろいろに分かれるそうです。そういう方言について書かれたコラムもあります。
また、かつては奈良に映画製作会社が多くあったとか。
奈良というと古いものばっかり思い浮かべてしまいますが、近代の奈良も楽しいところ。「奈良と近代文学」の章も、読めばすぐ話題の場所へ出かけたくなります。田山花袋、森鴎外、志賀直哉、武者小路実篤がこの章で登場します。
大学の先生方の書かれた本ではありますが、あまり難しい顔をして読まずに済みました。楽しい一冊です。2020年3月の発行。900円+税で、楽天で買いました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます