ウクライナ紛争も3年目に入り、国力の差がはっきりと見えてきました。
東部戦線でも南部戦線でもロシア軍優勢の戦いが続いています。それとは別個にロシア軍はハルキウ北部戦線を形成しました。まだ北部戦線は、国境から少しウクライナ領に入った小競り合い程度の戦闘です。開戦から10日が経過してウクライナ軍が侵入したロシア軍を追い払うことは出来ていません。
おそらく現在ロシア軍が占領している地域は、防衛線を築かれてそこを根拠地にロシア軍は、ハルキウ州に圧迫を加えると思います。
東部戦線と南部戦線だけでも極端な兵力不足に陥っていたウクライナ軍は、更に兵力が足りなくなると思います。
少々武器や砲弾、ミサイルの支援が増えてもどうしようもないと思います。
ロシア軍が特に大兵力を投入して突破を図らなくても自然体でロシア軍が暫進を続けると思います。
特にドネツク戦線では、ロシア軍の西進を阻止してきた強力な要塞群が、ほとんど制圧されましたのでロシア軍の進撃を阻止する防衛ラインまたは大きな軍事拠点がありません。
泥縄式に後方にインチキ防衛ラインを作っても、そう長くはロシア軍を阻止できないと思います。
その肝心の防衛ラインの建設すら汚職がはびこっていて半ば放置されています。要は金だけ受け取って仕事は手抜きか全然していない状況が、ハルキウ州北部で分かりました。
だからウクライナ軍がロシア軍と持久戦にもう一度持ち込むためには、この地方で昔から行われてきた作戦を採用するしかないように見えます。
ドニプロ川が自然の要塞になります。
①西から攻めてきた勢力が不利になれば、ドニプロ川の西まで撤退しそこで戦います。
②東から西に攻めた勢力が不利になれば、ドニプロ川の東岸に撤退して戦います。
今、ウクライナ軍の立場は①に当たります。
ドニプロ川を越えて軍事作戦を展開するのは昔も今も大変だと言うことです。
その意味でロシア軍には決定的な切り札が残されています。ドニプロ川の橋を全部、破壊すればドニプロ川東岸のウクライナ軍は補給を失い戦闘継続不可能になります。
ロシア軍がそうしないのは、国際的な批判もあるでしょうしドニプロ川東岸の百万人単位の民間人に餓死者が出るからです。さすがに、この民間人全員にロシアが食料を配給するのは無理だと思います。
ウクライナ軍に残された道は、ドニプロ川西岸まで撤退する事だけだと思います。
さすがにドニプロ川を越えて西岸を攻めるほどの軍事力はロシア軍にもないと思います。
そうなって持久戦に持ち込むのが、精一杯だと思います。
と言って持久戦に持ち込んでウクライナに勝ち目があるわけではありません。
だからウクライナにとって今、最も良い方法はロシアと和平交渉を始めることです。
ドニプロ川西岸まで撤退してしまえば、和平の条件は厳しくなるのは分かり切っています。
ゼレンスキーの大統領任期はすでに切れています。
ウクライナは、速く代わりの代表者を選んでゼレンスキーと交代させるべきだと思います。
(2)ロシア軍の戦術の変化
アウデイーウカ市街攻防戦の最後のころからロシア軍の戦術が劇的に変化しました。
それまで何故か実施しなかった空軍の地上部隊の援護を始めました。空軍と陸軍の一体運用です。これはアメリカではごく普通の戦術ですが、ロシアの戦術にはなかったようです。
遅ればせながらアメリカ軍の真似を始めたわけですが当然ながら抜群の効果がありました。
大型の滑空爆弾の雨を降らせれば地上で無事な陣地はありません。
アウデイーウカ市街攻防戦の最後ではウクライナ軍のそれまでの強固な陣地が滑空爆弾で破壊されまくったのが陥落の大きな原因です。
それ以降、ロシア軍は滑空爆弾の大量製造に乗り出し最近の報告では1日100発程度、滑空爆弾をウクライナ軍の陣地に打ち込んでいるようです。
地上部隊の攻撃前には、滑空爆弾の雨が降り砲弾の雪が降るような有様です。少々オーバーですが、これで無事な塹壕や陣地はありません。
打ち漏らしを陸上部隊が掃討する要領です。
もう一つロシア軍が得た大きな武器が、通称「ランセット」と呼ばれる攻撃型ドローンです。
実際に供給されているのは、「ランセット」の廉価版だと思います。
性能は本物にやや劣るものの効果は抜群なようです。
これが開発されたのが3月の初め頃です。
その頃に実戦で試され十分な効果を得られたので量産体制に入ったと思います。
4月には、各戦場に現れ今ではロシア軍と言えば「ランセット」と言うほどに豊富に前線に供給されています。
大体、試作品の段階で航続距離が40km程度でした。
前線から40km程度以内にあるウクライナ軍の戦車・歩兵戦闘車・装甲車・大砲・ミサイルランチャーなどの地上部隊の火力が全部、攻撃対象になります。
戦場で長持ちしなくなりました。
これでウクライナ軍の持つ西側兵器とその火力の優位性が大きく失われました。
ロシア軍の前線に大量に配備されたランセットが次々にウクライナ軍を襲うわけです。
もちろんウクライナ軍にも同じ兵器はあります。
しかし数においてロシア軍が圧倒しているようです。
ウクライナの大統領府も参謀本部もこのような戦場の劇的な変化を認識しては、いないと思います。
2023年のつもりで命令を出せば、前線のウクライナ兵は次々に犠牲になるという事情があります。
兵士の戦意喪失の部分もありますが、実際に前線でウクライナ兵がバタバタと戦死しているから投降や逃亡が続出している現実があります。
ロシア軍としては、ウクライナ兵を削っていけば自然に有利になります。消耗比率が同じなら、補充のできるロシア兵は数が減りません。
補充の出来ないウクライナ兵は時間がたつほどに減っていくという残酷で単純な現状があります。
だから時間がたつほどにウクライナ軍の不利が増しています。
それは、全部の戦場でウクライナ軍が後退している事にはっきりと現れています。
『※この現実をウクライナの大統領府は、砲弾がない・西側の支援の遅れが原因だ・と胡麻化しています。
胡麻化そうと圧倒的な兵力の差が解消されるわけではありません。都合の悪いことを全部、他人の責任にしたところで現実は何も変わりません。』
勝ち目のない戦場に無理やり送り込まれるウクライナ兵は、哀れと言うしかありません。
太平洋戦争で負け戦になった後の日本兵を思えば、それが理解できると思います。
今のウクライナ政府は、太平洋戦争時の陸軍独裁内閣と全く同じであることに、少なくとも日本人は気が付いて欲しいと思います。
まだウクライナ戦争を煽り立てている日本人の学者や識者や専門家がいると思います。
国を戦争に導くのは、そのような人たちです。
※関連記事目次
「中立の視点で見るウクライナ紛争」の目次⑤
https://blog.goo.ne.jp/kitanoyamajirou/e/e2c67e9b59ec09731a1b86a632f91b27