怒るべきは

2017年07月01日 | 日記
今日の昼食は、施設の子供達とサンドウィッチを作ろうということになっていた。

材料の買い出しにも皆で一緒に車に乗ってスーパーに行った。

自閉症の子、多動性の子、車椅子の子…職員達がひとりひとりにしっかり付き、ワイワイ楽しくお買い物。

「チーズがいい」

「ハムをたくさん食べたいな」

「トマトは食べたくない」

「自分の好きなのだけ選んで挟めばいいんだよ」

会話がはずみながら皆楽しそう。

私は車椅子のMちゃん、小学6年生の女の子を担当した。

「Mちゃんはお母さんと買い物に行くの?」

「うん。◯◯スーパーに行く」

「そうなんだー」


車椅子を押し、話をしながらスーパー内を歩く。

Mちゃんは、脊髄小脳変性症という難病の女の子。

自分で歩くことも立つこともできない。お話も呂律が回らずゆっくりと話す。

Mちゃんのお母さんは、Mちゃんとお兄ちゃんの二人のシングルマザー。

Mちゃんのお母さんを思うと、いろんなことがちっぽけなことのように感じる。

Mちゃんはこれからも少しずつ神経や筋力が弱り、やがて寝たきりになってしまう。

辛い。

私のできることは何もない。

せめて、本当にせめて、少しでも今を楽しんでもらう。

Mちゃんに会うたびにそのことだけは心がけている。


さて買い物が終わり、皆で駐車場に戻った。

私は車の後ろを開け、車椅子のMちゃんを車の後部にゆっくり押し始めていた。

ビッ!

突然のクラクションの音に後ろを振り向いた。

なんと、車が私の背後数10㎝ほどまで接近していた。

「早くしろ」と言わんばかりのイラついた顔つきのジイさん。

私は「すみません」と言って、そそくさとMちゃんの車椅子を退き、横に寄った。

ジイさんはサッサと私達の側を横切って行った。

もう一度私はMちゃんの車椅子をゆっくり入れ直した。

よし、と。

すると若い職員のSさんが走ってきた。

「今のジジイなんなんですかね!俺、『ふざけんな!』って怒鳴ってきましたよ」


あ…


そうだ。そうだよね!

さっきはつい謝ったけど、考えてみればあのジイさんこそ謝れだ。

私の後ろに接近してクラクションを鳴らすだ?

第一、車椅子の小学生の子供に思いやりは無いのか?

少し待ってあげようという良心は働かないのか?

例えばだ、例えばもしどうしても急いで行きたいのなら、私が車椅子をまた戻して横に寄ってジイさんを通したのに、会釈ぐらいして通るべきではないのか?


いい年こいて、恥ずかしいジイさんだ。


まあ、私の代わりにSさんが怒鳴ってくれたようだからもういいけど。