北朝鮮で金正日氏が死去した時に、彼の国のTVは、街頭で激しく泣き崩れて嘆き悲しむ国民の姿を映し出していました。大げさに声をあげて泣いていないと、後から密告されて「指導」されたり処罰されるのだという話です。そういう社会を、ほとんどの日本人は異常なことだと感じると思うのですが、では、いま大阪で起こっていることはどうでしょうか。
橋下市長が府知事時代にお友達を採用して校長にすえた府立高校では、教員が君が代を歌っているかどうかを、ひとりずつ口元を監視して、口を開けていない教員は呼び出して始末書を書かせたそうです。いま府・市議会に提案されている職員条例では、このように「職務命令」に従わないと免職されることがあると明文化されています。
誰でも生活がありますから、免職で脅されれば従わざるを得ないでしょう。つまり、日の丸や君が代が戦争への国民動員と強く結びついてきた歴史的な経緯から、それをみんなで斉唱することに違和感を持つ(私も強くそう感じます)教員は、たとえ自分の意思と異なっていても、大きく口をあけて君が代を歌わなくてはならないということになります。しかも、これまた府・市議会に提案されている教育条例では、教育目標まで府知事・市長が定めるとされています。
あまりにひど過ぎて凍結された大阪市職員アンケートでは、職員を街頭の選挙演説とかに誘ったのは誰かと、一般市民の氏名を密告することを奨励する項目までありました。しかも、このアンケートは答えないと処分されることもあると明記されているのです。
強制と監視、密告が横行する社会、服従して他人を密告しなければ自分が生き残れない社会、それは、北朝鮮と変わらない、悪夢のような社会です。
選挙で勝ったのだから何をやってもいいのだと思っている橋下市長を、やはり最初は選挙で合法的に選ばれたヒトラーと区別することはできません。震災がれきの処理が進まないことまで憲法9条が原因だと言い、批判者を執拗に攻撃する橋下市長は、猜疑心にとりつかれた小心なファシストとしか私には思えません。