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この選挙の重大な争点に年金問題があります。
夫婦の老後のくらしに、年金だけでは2000万円足りないという金融庁の報告書が注目を集めました。これに触れたくない安倍内閣・自民党・公明党は、報告書を受け取らず、なかったことにするという、信じられない対応に出ました。なかったことにするって…、それは、あんまりじゃありませんか。
しかし、報告書を隠しても、2000万円足りないという事実はなくなりません。
なんで足りなくなるのか、その大きな原因は、「マクロ経済スライド」という年金のしくみにあります。
この問題が起きて、私もマクロ経済スライドって何? ということで、調べてみました。厚労省、年金機構のホームページに基本的な解説が載っています。語感からすると、何となく経済にスライドして必要な年金が保障されるみたいな感じですが、実際はまったく逆で、経済(物価上昇)とは逆にスライドして、年金額が減るしくみなんです。しくみ自体は隠しようがないから年金機構の解説でも、よく読めば、そうとわかります。
ちょっと説明しましょう。
たいていの場合、物価は年々上昇します。このときに、もらっている年金額が物価上昇率と同じだけ増えなければ、同じ生活は維持できないわけですから、かつての年金制度は、物価上昇に合わせて年金も増えるしくみになっていました。
それを変えたのが2004年の年金改悪で、マクロ経済スライドというしくみを導入したのです。
これは、物価上昇に合わせて年金額を増やしていたら、将来は年金制度が持たなくなるという理屈で、たとえ物価が上昇しても、高齢化や少子化が進行して、今後、年金保険料の収入が減ると予想されるときには、物価上昇率どおりに年金は増やさないということにしたわけです。どのくらい減らすかというのが、平均寿命の伸びや保険料を納める世代の人口などを勘案して算出される「スライド調整率」となります。
つまり、物価上昇率-スライド調整率=年金上昇率 となります。
例えば、物価上昇率が2%で、スライド調整率が1%だとすると、年金は、2%-1%で、1%しか増えません。ちなみに、スライド調整率1%というのは近年の実際の調整率とほぼ同じです。
これをグラフにするとこうなります。
あくまでモデルの例ですが、いま夫婦の年金が月20万円で、実際の生計費は25万円、5万円足りない状態だとします。
物価が毎年2%上がると、10年後には生計費は30万4749円になります(青線)。これと同じ上昇率で年金が増えていれば、10年後の年金は24万3799円になるはずです(グレー線)。ところがマクロ経済スライドでスライド調整率1%をスライド減額されてしまうので、もらえる年金は22万0924円にしかなりません(赤線)。5万円だった不足額は8万3824円に拡大してしまいます(黄色棒)。
ん~、そういうわけか。要するに、どんどん減るってことじゃん!
マクロ経済スライドというよくわからない名前は、減額を直感的にイメージさせないという点では、よく考えられたネーミングだったんだな。やっぱり官僚は、こういう点は頭がいい。
2004年の年金改悪を担当したのが公明党の坂口厚労相だったので、創価学会の人たちが「100年安心」の年金改革と大宣伝していたのは、もらえる年金が安心なのではなくて、年金を払う側の制度や原資(さらに言えば、その原資を使ってふるえる権限)が100年後でも維持していられるという「安心」だったのですね。
こうして、年々、年金の実質額は減っていきますから、いま2000万円足りない年金は、いま41歳の人が65歳になるころには3600万円足りなくなってしまいます。若い人ほど被害は甚大になるんです。
これを変えて、年金が減らないようにするためには、マクロ経済スライドを廃止するしかありません。
しかし、党首討論で、日本共産党の志位委員長がマクロ経済スライドの廃止を求めたのに対し、安倍首相は「ばかげた政策」とニベもありませんでした。マクロ経済スライドを廃止したら7兆円の財源が必要となる(から無理)とも言いました。これは、つまり、これからマクロ経済スライドで年金支給額を7兆円減らすというのとおんなじです。
志位委員長は、財源も言わずに廃止を求めたわけではありません。いま年収1000万円で頭打ちになる年金保険料を、年収2000万円まで増額して払ってもらうようにすれば1兆円の財源が生まれます。これをちゃんと提案しているのに、安倍首相は、それにはシカトして、「ばかげた政策」と拒否したわけです。
日本共産党は、高額所得者の保険料を上げるというほかに、200兆円も溜まっている年金積立金を計画的に取り崩す、非正規雇用の正規化、働く人の賃金を増やして年金保険料収入を増やすということも合わせて提案して、マクロ経済スライド廃止の財源をまかなうことにしています。
知恵を出せば、財源は出てきます。社会保障全体でも、膨大な内部留保をため込みながら中小企業より低い率でしか税金を払っていない大企業から中小企業並みに税金を取る、年収1億円を超えると実質税率が下がる大金持ちから、普通に累進税率で所得税をとる、これで7兆円の財源がうまれます。
安倍首相は、自分のバックにいる大企業や大金持ちの利益を損ねるから、財源がない、年金改革ができないと言い張っているわけで、そりゃあ、たくさん政治献金もらってたら、スポンサーには逆らえないですよね。だいたい、1機116億円もするF35戦闘機は、トランプ大統領に言われれば100機以上も爆買いするのに、その財源はどうするのかなんて、自分では絶対言いませんよね。
というわけで、結論はもう明らかでしょう。
年金を減らす自民党・公明党の安倍政権をこのまま続けるのか、減らない年金に制度改革を行う野党を伸ばして政治を変えるのか。
みなさん、選挙に行って、政治を変えましょう。
私は、日本共産党を推します。