安倍首相の親しいお友達ばかりで構成されている安保法制懇談会(安倍首相が人選した私的諮問機関)が5月15日に憲法の解釈を変えて集団的自衛権の行使を認めるべきだという報告書を出しました。安倍首相は、さっそく集団的自衛権の行使を可能とする解釈を閣議決定する準備を本格化しようとしています。
集団的自衛権の「自衛権」という言葉の、何か正当な平和的な行為のようなニュアンスに騙されてはいけません。これは軍事力を行使する権利、すなわち戦争行為ということです。国連憲章は当然ながら侵略戦争を禁じていますが、侵略ではない戦争として、個別的と集団的、二つの自衛戦争は認めていて、集団的自衛権は、他国が攻撃されたときに助けに行って軍事力を行使する権利ということなのです。
しかしこの集団的自衛権は、いくらでも拡大解釈が可能な概念として各国に使われてきました。実例をみれば一目瞭然です。国連に報告された集団的自衛権行使の実例は14例あり、その双璧は米国のベトナム戦争(65年)とソ連のアフガン戦争(79年)です。同盟国を助けるために米ソの軍隊が出て行ったとされたのですが、どちらも攻撃や救援要請がウソだったことが後で明らかになりました。米ソがその覇権を維持するために集団的自衛権を口実に使って侵略戦争を行ったというのが実態です。
こんな論理に倣えば、かつての日本の満州事変(中国侵略)だって集団的自衛権の行使と言えてしまいます。そんな戦争を憲法が容認しているというのなら、憲法9条は、いったい何を放棄したというのでしょうか。忘れないでください。憲法9条は戦争を放棄し、交戦権を否定しているのです。
安倍首相は、それが時代に合わないと思っているのかもしれませんが、それならば憲法の定めに従って、正当な法的手続きを経て憲法改正をしなければなりません。憲法は、一首相の解釈で変更できるというような軽いものではありません。