私は奇跡と思う出来事を三つ経験している。
一つ目が、私のところに来てくれた青い鳥のこと。
10歳になる年の夏休み、私は青いセキセイインコをつかまえた。
その前年、9歳の時に、私は同じく青いセキセイインコを飼っていたのだが、知識不足のために死なせてしまっていた。
家族は、私がインコを飼うのをとても嫌っていたので、またインコを買ってきて飼うことは絶対に出来なかった。
でもつかまえてきたのなら、文句は言われない。
そう思って、私はそれから毎日毎日、常に外にインコがいないか探して見ていた。
当時、インコを飼うのは流行りで、近所でも多頭飼いしているお家をよく見ていた。
私は近所の人からインコをもらったことがあって(当時8歳)、その時はそのインコは鳥籠の破れた箇所から外に逃げてしまっていた。
当時、それを母が見て見ぬふりしており、
外に逃げていなくなったインコのことを嘆き悲しみ大泣きする私のことを見かねた父が母に『新しいインコを買ってやれ』と言ってくれたおかげで、私は青いインコを買ってもらった。
でも、その大切なインコを知識不足のためにわずか3ヶ月で死なせてしまう(当時9歳)。
そんな事情から、インコを買ってまでして飼うことは当時の私には絶対に出来なかった。
だから私は毎日ずっと、外を探していた。
一年たった10歳になる年の夏休み、
朝のラジオ体操のために友達と公園に行ったのだか、少し早く公園に来てしまったために時間があり、公園の周りをぐるりと散歩することにした。
そうしたら、
まだ早朝で鍵がかかって中に入ることの出来ないグランドに、
スズメに混じって楽しそうに遊んでいる青いインコを発見してしまう。
胸が高鳴ったが、
そのグランドに入ることが出来ない。
あー、せっかくあそこに青い鳥がいるのに、近づけない。
もどかしい気持ちを押し殺して、
もう一度公園をぐるりと周ってみた。
そうしたら、
その青い鳥はグランドを出て、一メートルほどの低木に留まって楽しそうにしている。
私は、近づいて恐る恐るその青い鳥ににじり寄り、
ガバッと両手で掴んで、急いで家に戻った。
『おかあさん!おかあさん!、青い鳥つかまえた! このインコ飼ってもいいよね?!』
そうして私は青いセキセイインコを飼うことになる。
驚いたのは、その青い鳥は、見た目が全て、前年に亡くしたインコと瓜二つ、
そのまんま、本当にそっくりだったこと。
目がくりっと丸くて可愛いところも、尾羽が長く美しいところも、
全てが、以前飼っていた私のインコにそっくりだった。
一つ、違うところは、
鳴き声がとても大きくて響き渡るところと、多頭飼いされていたのか、鳴き声が多頭飼いされている鳥の鳴き方だったこと、
手乗りではなかったことだ。
でも、私が飼っていた青いインコと何から何までそっくりだった。
だから私はその青い鳥は神様からの贈り物だと、本当にそう思っている。
今でもそう思っている。
なぜなら
あの青い鳥がいてくれなかったら、
私はこうして生きていない。
自分より弱くて、自分がいないと生きていけない守るべき存在があったから、
不良になることも、自死することもなく、私は子供から大人になっていった。
13年間もずっと一緒にいてくれた。
私が23歳になる年に
7歳年上の姉が里帰り出産のために家に帰ってくることになり、
『インコって病気を持っていて妊婦に悪いわよね、このインコ、いなくなってもらわないと困るわよね』と言うので、
私は私の青い鳥と一緒に実家を出ることになる。
アパートを借りて(その頃はもう働いていたので自分で自立して生活する力があった)
私は私の大切な青い鳥と二人っきりで暮らした。
もう、青い鳥はかなり歳をとっていたので、私の大切な青い鳥はそれから程なくして亡くなってしまうのだけれど
二人(一人と一羽)で短い時間だったけど、とても仲良く過ごした。
私にはその青い鳥はとても愛おしい大切な存在だった。
この青い鳥が私のところに来てくれたことが、
私の生きている間の、一つ目の奇跡。