「明けましておめでとうございます」
一枚板の長いカウンターの上に携帯を置き、やや高い椅子に腰掛けて一息ついた瞬間。
いつの間にか目の前に来ていたマスターから声をかけられた。
確かに久しぶりなのだが、もう月半ばを過ぎたあたりだ。
…嫌みだろうか。
冗談だとわかっていても、やはり返答に困る。
「あけましておめでとうございます…っていうか、少し過ぎましたけどね」
自嘲気味に笑い、軽く流す。
向こうも、本気で嫌味を言っているわけではないと分かっているので。
アマレットジンジャーを注文すると、案外早く出てきた。
「最近は呑みに行かれてますか?」
「なんだか忙しくて、なかなかね~・・・」
半分は嘘だ。この店に寄れていないだけで、別の店に行っている。
忙しいのは本当。行った店の写真を撮ってもたまる一方で全くアップできていない。
「あ、でも早い時間から開いているお店を見つけてちょくちょく行ったんですよ^^」
バーの口開けは19時からが多い。
仕事終わりや早い時間に用事が終わった時、呑みたいけど19時までは時間をもてあます事がある。
そんな時は早い時間から開いている店が重宝する。
そこまでして呑みたいのか…。とふと笑いが出てしまうが。
長く重たい氷が二つ入ったグラスをカラカラと回し、ほぼ半分まで一気にあおる。
アマレットの重厚な甘さが身体に沁みいっていくようだ。
やりたいことはいろいろある。
やらなければならないことは順番に巡ってくる。
考えなければならないこと……。
多すぎて、逃げたくて、だから最近またアルコールの量が増えているのだろう。
軽く酔いが回った頭なら、つかの間のことだとしても見たくないものから目をそらせるから。