長崎の原爆投下直後に、米軍カメラマンとして赴任した、オダネル氏が撮った一枚の写真が有る。
小学生位の少年が、幼い弟を背中におんぶして、直立不動で立っているものだが。
背中の弟も既に亡くなっていた事も、承知していたが。
少年が何故そこに立っていたのかを、私は知らなかった。
目の前の浅く掘った穴の中で、亡くなっている人達を、石灰と一緒に焼いていた事を、私は知らなかった。
作業をしている人達が、背中の弟を火の中に横たえて、燃えていく弟をしばらく眺めたあと、立ち去って行ったと。
オダネル氏は堅く結んだ少年の下唇に血が滲んでいたと、話している。
大人の事は、大人が始めた戦争だから、あまり心を動かす事もないが、いたいけな少年にまでこんな辛い思いをさせるのは、自分に置き換えても許せるものではない。
そして、なぜこの子らの母親までもが、殺されなければならなかったのかと思うと、残念でならない。
大人が自分達で良かれと始めた戦争だから、仕方がないとも思うのだが、勝っても負けても双方に、何の罪もない一般人の犠牲者が多数出るのは、許しがたいし、忍びない。
この少年の心中を察すると、目頭が熱くなる。
戦後オダネル氏が、この少年を探したらしいが、結局会えなかったとか。
原爆使用の是非を問われているが、結局悲しい過去を残したに過ぎない。
愚かなる戦争で。