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生命の泉 10 話

2012年02月06日 16時31分49秒 | 僕が書いた小説
年末から短編小説なるものにトライしている。これはその続きである。

オークの物語

AD207年、2月6日、悪魔達と神々との戦いは終わった。
最後の戦いの日、悪魔の王ケイタと対峙していたのは火の神オークと雷神シマルであった。
ヒミコは悪魔と化したコウトクをくい止めるのに必死であった。
風神CHIKARAはケイタの右腕であるタクマと、水の神である龍神はケイタの左腕であるタクミを瀕死の状態まで追い込んでいた。

ケイタを完全に葬るのが無理と悟ったオークとシマルは全ての力を解き放ち、ケイタの力と記憶を666666日間封じ込めることに成功した。

オークはその時、永遠の命以外の力を失ってしまった。
そもそもオークとケイタは、ケイタが陰の神であった時、親友であった。
ケイタは記憶が消えていくなかで、涙ながらにオークへ小箱を手渡した。
そして最後にオークの耳元でささやいた。
「俺は輪廻を繰り返す。虫として生まれる時もあれば、人間として生まれる時もあるだろう。どこで何として生まれるか解るまい。それでも、いつか俺の生まれ変わりを見つけた時、これを彼に渡してくれ。この釣り針を使えば、彼が俺の生まれ変わりだと思い出すかもしれない。
コウトクもおそらく俺のようにヒミコに封じられるはずだ。俺を見つけきれない場合はコウトクにこれを…」
そう言いながら、ケイタの体はどこかへと消えて行った。
オークは小箱を持って、人のいない山奥へ行き、一人で何百年と暮らした。何度も釣り針を破壊しようとしたが、力を失ったオークではどうすることもできなかった。力もないまま永遠の命があることが彼の心を蝕んでいった。
ある日、一度だけ、釣り針で魚を釣ってみたくなり、使ってしまった。
一度だけ、一度だけと言いながら、釣り針を毎日使うようになった。
魚を釣ることに飽きた彼は釣り針で動物の魂を釣るようになった。
簡単に狩りができることに喜びを覚え、昔、神だった時の力が欲しくなった。
あとは想像どおりである。人間の魂を奪い続け、地獄の使者オークと呼ばれるようになった。
そしていつの間にか、ケイタとコウトクを復活させ、いまだに2つの世界で神として君臨している龍神とCHIKARAを倒すことが生きがいとなってしまった。

続く…