(ツアーで行った旭岳の紅葉は、初冠雪で大荒れだった)
2月24日、日本山岳ガイド協会から、北海道大雪山系のトムラウシ山で昨年7月に起きた
登山ツアー客ら8人が凍死した遭難事故で、特別委員会の最終報告書がまとめられたとの
報道が有りました。
報道では概略しか判りませんが、引率したガイド3人の連携やツアー客への対応に問題が
有った上、主催したツアー会社にも天候悪化に対する危機意識が甘かったというような
報告書のようです。
気になるのはガイド3人について「気象状況や参加者の体調、力量などを十分に検討した
形跡がない。3人がバラバラに判断し、パーティとして機能せずビバークの判断が遅く
持参したテントも活用しなかった」ことが惨事を招いたと結論づけています。
しかも移動の途中でツアー客の中に低体温症の兆候が出ていましたが、特段の対応が
取られなかったと指摘しているそうです。
またツアー会社についても、死亡した8人が、59歳から69歳と高齢者で有った事から
悪天候に遭遇した場合、かなりシビアな状況になる事は予測できたのに、そのような危機
対応のシミュレーションをしておらず、危機回避の為の判断基準も無かったと批判して
います。
それに関連してツアー会社がトムラウシ山のツアーは募集をやめたのに、他の山のツアーは
継続しており、それで責任を取った事になるのかという批判も出ているという。(日本山岳協会)
こういった一連の報道を見ていて、私が感じた事は、最近登山が中高年の流行の様に言われ
ていることに腹が立ちます。
山に登る中高年は、流行やブームだから登るのでしょうか。
きっと皆さんは違うと言うことでしょう。私も違います。
流行に乗って登る、軽薄な登山者と思われるのは心外ですよね。
それは登った人にしか判らない喜びなのかも知れませんが。
山頂から眺める雄大な展望は、己の小さい存在を実感し、俗事の悩みを笑える心の豊かさを
もたらすのです。
足下の小さな花達に目を転じれば、この過酷な環境で精一杯生きている花達に、おまえも
頑張れと励まされている気がします。
上の写真は、現役の頃 職場の友人達と大雪山の旭岳に紅葉を見るツアーに参加した時に
撮った写真です。
このとき9月中旬で、前の日に旭岳に初冠雪があり、当日も強風や雨が降ったりして
大荒れの天候でした。
このときは、バス一台の参加者にガイドが一人と添乗員が一人という状況でした。
紅葉で有名な裾合平まで案内されたのですが、風雨が強くなり昼食も立って食べる有様で
直ちに引き返す事になりました。
このとき事件が起きたのです。
一緒に行った友人が、何を思ったか一人で先に引き返してしまったのです。
ガイドは雨合羽に着替えている最中でしたが、「ちょっと待て!」と止めたにもかかわらず
さっさと行ってしまいました。私たちも待ってと止めたのですが。
それで私たち仲間は、「トイレかな」と思っていたのですが、ロープウェイの山頂駅に
戻っても友人がいませんでした。
それからが大変、行方不明という事で大騒ぎになりました。
仲間全員で手分けして探しましたが、バスにも戻って居らず、山頂駅にもいないので
ガイドと私たちで、再びコースを手分けして捜索しましたが、発見出来ませんでした。
ガイド、添乗員を交えて相談した結果、捜索隊に捜索依頼をすることになりました。
山の秋の日暮れは早い、夕方5時を過ぎても見つからず、このまま発見出来ないと
凍死するかヒグマの餌食になるかも知れないと、捜索隊の待合室で待っている時間の
長かったこと。
私はその時、友人の死を覚悟していました。
外が真っ暗になった6時過ぎ、捜索隊から「発見」という無線が有り、次いで
救助したとの報告が来たとき、全員で喜び合いました。
帰ってきた友人は、雨合羽のズボンがボロボロでした。
よほと夢中で藪の中を歩いたに違い有りません。
何故ひとりで先に行ったのか、今でも原因はわかりません。
そのことについて、友人は聞いても答えませんでした。
ただコースにはロープが張ってありましたが、沢スジにはロープが有りませんでした。
どうやらそこで間違えて沢を下ってしまったようです。
その友人も数年前に転勤した広島の職場でガンで亡くなりました。
山で死ななかった奴が、町で死んだねと、友人達と実家の墓参りに行って話したものです。
このときは私もまだ登山の知識が無いときでしが、ツアー登山の危うさを感じていました。
参加者に対してガイドがあまりにも少なく、添乗員にも危機対応の知識が全く無く
いちいち本社に相談する始末。時間ばかり浪費する対応でした。
最近ひとりで歩くようになって、数十人の団体登山を見ると、うんざりしてしまいます。
道を譲って長々と待たされたり、白根山では団体の誰かが落とした落石がありましたが
「ラクー」とか「落石ー」とかの注意も有りません。
最近、登山者の組織の一つ「勤労者山岳連盟」が、個人会員制の導入を検討しているとの
報道が有りました。
今までは山岳会単位でしか入会出来なかったのですが、膨大な組織されていない登山愛好者
に、登山の基礎的な知識と技術を普及させないと、トムラウシ山の遭難事故に見られる
大量遭難を防げないとの意見から検討しているようです。
これは私のような単独登山者にとって、どこかの山岳会に所属しなくても実技を学べる
機会が与えられるチャンスかも知れません。
それはまた、高齢化社会と呼ばれる中で、会員が高齢化して衰退していく山岳会に取っても
大事な事なのかも知れません。
もう一つ、最近山渓の本を買ったら、山渓から遭難救助保険の案内が同封されてました。
年間5千円で300万までの遭難救助の費用が出るそうです。
遭難救助費に限っての保険ですが、どこの山岳会にも所属しない人には、こうい保険が
助かりますよね。
追記、このレスキュー費用保険について詳しく知りたい方は下記のホームページを
ご覧下さい。
日本費用補償少額短期保険
私が花撮影の登山を始めたきっかけは、この旭岳のお花畑を見た事から始まった。
大雪山・旭岳の姿見の池
神秘な水色のオンネトーと阿寒岳