gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

「マクベス」 舞台内容 一幕七場 (1)

2009-10-29 09:33:31 | 「マクベス」

イメージ 1


 マクベスの居城―― 安心しきったダンカン国王を城内に迎え、いよいよ事に及ぶに当たってマクベスは躊躇する。
 彼は、国王殺害を確実に実行出来るかどうかについて慎重になった。
もし失敗すれば、確実に報復されて身の破滅である。


        'He's here in double trust:
   First, as I am his kinsman and his subject,
   Strong both against the deed: then as his host,
   Who should against his murderer shut the door,
   Not bare the knife myself.'
        (王が今ここにいるのは二重の信頼からだ。
 先ず第一に、俺は身内であり臣下である、いずれにしろ
 そんなことはやりっこない。次に今夜は主役、逆心を
 抱いて近寄る者を防ぐ役目で、それを自ら短剣を
 振りかざすなどもっての他だ)


 ダンカンに対する三重の関係(親戚、臣下、主役)において、彼を殺す理由を見出すことが出来ないが、マクベスには、それがあったのだ。


 彼が考えたことは、このような殺人が行なわれたら、異常な騒ぎが起こるであろうということだった。
 慎重といえば聞こえがいいが、結局、マクベスは小心者ということだ。


                          'Besides, this Duncan
   Has borne his faculties so meek, hath been
   So clear in his great office, that his virtues
   Will plead like angels, trumpet-tongued, against
   The deep demnation of his taking-off.'
              (そのうえ、ダンカンは、
 生まれながらにして温和な君徳の持ち主、国王として、
 一点の非の打ちどころがない、うっかり手を下そうものなら、
 その長所が、天使のように声高らかに非道の罪を揚げるだろう)


 マクベスの動機は、自らの野心のみであり、正当性がない。
下手をすれば、周りから非難の声が揚がり、彼の目的が挫かれる怖れが十分に考えられるのだ。
                         'I have no spar
   To prick the sides of my intent, but only
   vaulting ambition, which o'erleaps itself,
   and falls on the side.'
             (俺の意中の馬(目的)の
 脇腹を突く拍車がない、ただ野心だけが跳び跳ねたがる、
 飛び乗ったはよいが、鞍越しに向こう側に落ちるのが
 関の山だ)


 故に、もうこれ以上進むまいと一旦は決心し、妻が現れると、その様に話すのだった。



「マクベス」 舞台内容 一幕五場 (3)~一幕六場

2009-10-28 10:30:49 | 「マクベス」

イメージ 1



・一幕五場 (3)
 妻のいる自分の居城に戻ってきたマクベスは、「国王が、今夜ここへ」とダンカンが来ることを告げると、彼女は、「そして、いつお立ちに?」と答える。


 この短いやり取りで、マクベス夫妻は同じ考えでいることが分かる。
 Macbeth: To-morrow, as he purposes.
  Lady M.:                 O, never
         Shall sun that morrow see !
 (マクベス:明日、お立ちの予定でおいでだ。
  夫人:        ああ、決して
    明日の日の目を見せてはなりません!)


 ここは、やはり夫人の方が先に立っていて、ダンカンを油断させるのはマクベスの役目であり、眠ったダンカンを殺めるのが夫人の役目であった。
 普通は、反対だろうと思うんだけど…… まあ、奥さん主導と言うことで……


 'Your face, my thane, is as a book, where men
   May read strange matters: ― To beguile the time,
   Look like the time; bear welcome in your eye,
   Your hand, your tongue: look like the innocent flower,
   Be the serpent under it. He that's coming
   Must be provided for: and you shall put
   This night's great business into my dispatch;
   Which shall to all our nights and days to come
   Give solely sovereign sway and masterdom.'

 Macbeth: We will speak further.

 Lady M.:              Only look up clear !:
        To alter favour ever is to fear:
        Leave all the rest to me.
 (あなたのお顔は、不思議なことが書いてある本のよう。
 世間を欺くには、世間と同じ顔をなさらねばなりません。
 眼も、手も、舌にも、歓迎を表わし、無心の花と見せかけて、
 その陰では蛇であってください。さあ、お客様のおもてなしを
 なさなくては。今夜の大事は、私にお任せになって下さいまし。
 今後、私たちの長い日々の暮らしに、無上の権力が訪れるかどうか、
 全てがそれにかかっているのです。

 マクベス:そのことはもっとよく話し合おう。

 夫人:でも、面を明るくおあげになって下さいまし。
   気難しい顔をなさっておいででは、心に怖れありと思われます。
   後のことは、みんな私にお任せになって)


・一幕六場
 マクベスの居城前。マクベスの城が国王ダンカンを捕らえる死の罠であるのだが、ダンカンの眼には、外見しか見えておらず、彼にとって平和と安息を示す城でしかないと感じている。


 女主人の様子にも不信なものはなく、中身がどうであろうと、その外見では知る由もなかった。
 この部分は一幕四場でダンカンが自らが、「顔つきから人の心を読み取る術はない」と語った通りのことが、当に行なわれているのだ。

 この辺りが、シェークスピアの皮肉っぽさを感じる。





「マクベス」 舞台内容 一幕五場 (2)

2009-10-27 10:35:51 | 「マクベス」

イメージ 1


 国王ダンカンの使者が訪れて、その夜にマクベス城に泊まることが明らかになると、夫人の役割は、より一層重要なものになった。


 彼女は直ちに国王殺害という考えが脳裏にかすめ、国王の使者の声がしゃがれていることをもって、今後の凶兆を示す。
              'The raven himself is hoarse
   That roaks the fatal entrance of Duncan
   Under my battlements.'
        (烏の声もしわがれる、
 運命に見入られたダンカンが私の城に
 乗り込んで来るのを告げようとして)


 彼女は夫の大望を知っていたし、彼の性格を弱さが彼の成功を妨げることも知っていた。彼女はマクベスを国王にするために「女であること」どころか、「人間であること」すらやめようとしていたのだ。
                'Come, you spirits
   That tend on mortal thoughts, unsex me here;
   And fill me, from the crown to the toe, topful
   Of direst cruelty ! make thick my blood,
   Stop up the access and passage to remorse;
   That no compunctious visitings of nature
   Shake my fell purpose, nor keep peace between
   The effect and it ! Come to my woman's breasts,
   And take my milk for gall, you murdering ministers,
   Wherever in your sightless substances
   You wait on nature's mischief ! Come, thick night,
   And pall thee in the dunnest smoke of hell !
   That my keen knife see not the wounds it makes;
   Nor heaven peep through the blanket of the dark,
   To cry, "Hold, Hold ! "'
                (おいで、殺戮の陰謀に
 仕える悪霊たちよ、この場で私を女でなくしておくれ。
 頭の天辺から足の爪先まで、惨たらしい残忍さで溢れんばかりに
 満たして頂戴!私の血をどろどろ(残酷)にし、
 憐れみの情に通じる道を塞ぐのよ。
 同情の訪れに、私の惨たらしい決意を揺るがせたり、
 目的を遂げるのを邪魔だてしないように。人殺しの手先どもよ、
 私の乳房に入り込み、この乳を苦い胆汁に換えておくれ。
 今も今、その見えぬ姿で、何処かで悪事の陰をうろつき回っている
 お前たち。おいで、漆黒の夜よ、地獄でいちばん濃い煙で包み込み
 私の尖った短剣が、自分の切った傷口を見ないで済むように、
 天が闇のとばり越しに覗き見て『待て! 待て!』と
 叫ばないように!)


 恐いんですけど…… そう思うのは、ヴィクターだけですか?!

 ところで、マクベス夫人には名前がない。これは何を意味するのであろうか?

 それは、彼ら夫婦はふたりで一人という位置づけなので名前が必要ないからだ。
つまり、この『マクベス』は、夫婦の物語とも言える。この物語が始まる前、おそらく彼らはお互いを思いやり愛し合う、まだ十分若い幸せなカップルであったのだ。

 しかし、それが魔女の予言によって翻弄され、道を踏み外し全てを失っていくに従い、二人の間に溝が生まれ、最後は離れてしまうという悲劇を描き出だしているのだ。




 彼女が、この恐るべき決意を固めているところに、夫マクベスが帰って来るのだった。



「マクベス」 舞台内容 一幕五場 (1)

2009-10-26 11:02:00 | 「マクベス」

イメージ 1


 インヴァネスのマクベスの居城にてマクベス夫人は、夫からの手紙により今回の叛乱鎮圧で手柄を立てこと、魔女たちから予言を受けたという不思議な体験したことなどの報告を受けていた。
 この手紙の内容には、ことの詳細について書かれておらず、国王ダンカンが、後継者にマルコムを指名し、マクベスの希望が挫折したことが書かれていない。
よってこの手紙は、彼が国王に謁見する前に出しであろうことが伺える。

 この手紙では、魔女の予言について最も重要な部分であるマクベスが国王になるであろうということが強調されており、この前触れとしてコーダーの領主になることが書かれているのだ。




 ここまで世間の目を通してマクベスを見てきたが、ここでは彼の妻を通して見ることとなる。
 'Glamis thou art, Cawdor; and shalt be
   What thou art promised: yet do I fear thy nature;
   It is too full of the milk of human kindness,
   To catch the nearest way.'
 (あなたは、現にグラームズ領主に、そしてコーダーの領主なられ、
 また、約束どおりの身分におなりになるだろう。
 でも、あなたの性格が心配。ことを手早く運ぶには、
 思いやりという甘いミルクに溢れすぎているから)


 この部分は、これまで知らされなかったマクベスの一面を語るものである。
彼は、殺人こそ王位への最も近道であると思いながらも、ここ一番で優しい性格が災いし決断できないでいることを示している。
 夫の尻を叩いて王冠を取らせようと決意しているんだけど、ちょっと怖いです。
マクベス夫人は、不甲斐ない夫を心配していて、それを鑑み全体の説明的に、この部分を要約すると、
「でも、わたくしはあなたの性格が心配なのです。あなたは、あまりにも人間らしく、人間性の弱さに打ち克って、一番の近道を行くことが出来ない」
ということになる。それは暗に国王を殺害しろってことだよね。




 マクベス夫人の夫に対する批評は、さらに続く。
              'thou wouldst be great;
   Art not without ambition, but without
   The illness should attend it: what thou wouldst highly
   That wouldst thou holily; wouldst not play false,
   And yet wouldst wrongly win:'
        (なるほど大望はお持ちでしょう。
 野心もなくはない、しかし、それに伴う邪な心に
 欠けておいでだ。あなたはとても欲しがっていながら、
 どこまでもきれい事でお済ませになりたがる)


 この夫人のマクベスの性格を述べる箇所で、マクベスという人物を的確に描写している。


 マクベス夫人の見立てでは、夫が犯罪を尻込みするのは、彼が本能的に犯罪を憎むからではなく、殺人を行なうだけの度胸がないからで、彼の勇気は、何か外からの力に応援されなければ発揮できないということである。
 つまり、ここ一番で弱気でヘタレなマクベス君ということなのだ。
しかし、やっぱり女は恐しってか!良くいえば、内助の功だと思う、悪い意味で。


              'Hie thee hither,
   That I may pour my spirits in thine ear;
   And chastise with the volour of my tongue
   All that impedes thee from the golden round.
   Which fate and metaphysical aid doth seem
   To have thee crown'd withal.'
        (早く帰っていらっしゃい。
 そしたら、わたくしの気性をあなたの耳に注ぎ込んであげる
 黄金の王冠を掴むのをあなたが躊躇しているなら、
 わたくしの勇ましい舌で、きつく叱ってあげます。
 運命と魔性の力が一緒になって、あなたの頭上にその王冠を
 載せようとしているのだから)


 夫をしっかりさせるために彼女の演ずべき役割は決まった。
まさにこの瞬間、使者が訪れ、国王ダンカンが、その夜に彼女の城に泊まることを告げる。
 回る、回る。運命の歯車が…… である。





「マクベス」 舞台内容 一幕四場

2009-10-23 14:07:09 | 「マクベス」

イメージ 1


 フォレスの宮殿、ダンカン国王は、裏切り者コーダーの命運についての報告を待っていた。
 平和を望むダンカンにとって、狡猾な策略による奸悪な裏切りと、謀反人の暴力を恐れている。
その一方が、コーダーである、そして他方においてはマクベスであるのだが、この時点では当然気付いていないのだ。


              'There's no art
   To find the mind's construction in the face:
   He was a gentleman on whom I build
   An absolute trust.'
       (顔つきから
 人の心のうちを読み取る術はない、
 余が心から信頼していた
 紳士であったのだが)


 国王は、この過ちをマクベスに対しても犯してしまうのだ。




 そしてマクベスとバンクォーがこの場に入ってくる。
ダンカン国王は、マクベスに対して十分にその功績を称えることが出来ないことを意識する。
 'More is try due than more than all can pay.'
 (御身の功績は、どのようにしても報いきれない)


 この言葉を受けとったマクベスは、外面上、臣下としての勤めを果たしただけであると装うが、内面では最上の報酬である王位を望んでいた。
 ダンカンが、マクベスに後継の地位を与えることは、かの3人の魔女たちの予言が成就したことになる。しかし、ダンカンは、自らの息子であるが、まだまだ年端の往かぬマルカムを皇太子(皇太子の地位を意味するカンバランド公)に指名してしまった。

 ダンカンが、マクベスの功績を大いに評価しておきながら、この場でマルカムに後継の地位を与えたことは、マクベスを大いに失望させたのだ。




 マクベスの失望が頂点に達したとき、ダンカンはマクベスの城に訪問することを告げる。
 このことで、一度は忌まわしいと封じ込めた国王殺害という考えが、再びもたげる。


 'The Prince of Cumberland ! ―― That is a step
   On which I must fall down, or else o'erleap,
   For in my way it lies. Stars, hide your fires !
   Let not light see my black and deep desires:
   The eye wink at hand ! Yet let that be,
   Which the eye fears, when it is done, to see.'
 (カンバランド公か!―― この一段、
 踏み外し尻もちをつくか、それとも巧く飛び越すか、
 ともかく、俺の行く手に立ちはだかっている。ええい、星よ、
 光を消せ。俺の胸底のどす黒い陰謀を照らしてくれるな、
 眼に俺の手を見えないようにするのだ!
 だが、どっちにしろ、やってしまえば、眼は怖れて、
 ろくに見ることも出来やしまい)


 そしてマクベスとバンクォーは、立ち去っていく。