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「時の旅人」

2011-10-29 07:48:15 | アリソン・アトリー

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 『時の旅人』、アリソン・アトリー (著)、松野 正子 (翻訳)、岩波少年文庫(出版)




<あらすじ>
 少し病弱なペネロピーは、喧騒なロンドンを離れて、伯母の住むサッカーズ農場にやってくる。
サッカーズは、何百年も前からつづく農園で、荘園屋敷には昔のものが数多くあった。外は斜面に広がる畑や小川、牧草地に囲まれ、自然にあふれていた。
 伯父のバーナバスや伯母のティッシーも好い人たちで、ペネロピーは次第に健康をとり戻していく。


 そんなある日、古い屋敷の廊下の突き当たりのドアを開けると、16世紀の貴婦人たちがいた。
 16世紀のサッカーズ農場の主だったアンソニー・バビトンが、囚われのスコットランド女王メアリー・ステュアートを秘密のトンネルを使って助け出そうとした事件に巻きこまれていく。


 時の壁をこえて、現在と過去を行き来する少女が見た歴史の真実とは……




<感想>
 作品に登場するサッカーズ農場は、著者のアトリーが実際に18歳まですごした場所で、農場の様子を作中から、自然にかこまれた農場と、そこでの暮らしが、彼女にとってかけがえのない大切なものであったと容易に想像できます。
それほどまでにからだ全体で感じとった空気や土に水、花や木や草など、とても丁寧にくり返しくり返し愛情をこめて書かれています。
それを読むことで、読者自身のなかに眠りがちな感覚を活き活きと目覚めさせてくれる。それがアトリーの作品の魅力ではないでしょうか。


 主人公のペネロピーは、多感な11、12歳~13、14歳くらいの物語で、アンソニー・バビトンのトンネル事件に巻き込まれていく中で、彼女の精神的成長を描いています。
この事件は、失敗に終わることを知っている彼女は、そのことをアンソニー・バビトンの家族たちに話すことができず、苦悩していく…… 。
 
 そして結末へと物語りはゆっくりと進んでいきますが、できれば終わってほしくはなかったと感じる作品でした。