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われわれは(少なくとも、私は)、
洛中洛外図といったものの現物や写真を観る場合、
漫然と、観ている。
金閣寺や、八坂の塔、のような
それと分かる建物を除いては、
普通、何の建物なのか ? や
それが焼ける前のものか ?
再建された後のものなのか ? など
あまり、深刻には考えない。
漫然と観て、当時の風俗の可笑しさを楽しんだり、
昔の京都に思いを馳せたりするだけである。
しかし、プロというものは、違うらしい。
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京都・一五四七年―上杉本洛中洛外図の謎を解く (平凡社ライブラリー) 価格:¥ 1,365(税込) 発売日:2003-10 |
京都・1547年―描かれた中世都市 (イメージ・リーディング叢書) 価格:¥ 2,310(税込) 発売日:1988-03 |
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プロとアマでは歴史資料を見るレベルが違う、、、
というのは考えてみれば当然の話だが、
それにしても、
この「京都・1547年」で
著者で日本中世史の研究者の今谷明さんが
行っている検証作業には、正直、仰天した。
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「洛中洛外図屏風」の中で、とびぬけて評価の高い、、、、
といわれる上杉本を対象に、
そこに描かれた京都の街の、
寺社や武家屋敷といった建物の1つ1つを
同時代の歴史史料を駆使し、
何の建物か ? いつ頃のものか ?
をしらみつぶしに特定しているのだ。
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そして、現代人が、
ニューヨークを舞台にしたハリウッド映画を観ていて、
世界貿易センタービルが映っていれば、
9・11以前に撮影されたもの
映っていなければ、9・11以降に撮影されたもの
と考えるのと同じやり方で、
上杉本洛中洛外図に描かれた京の街は、
天文16年(1547年)に、
わずか16日間だけ実際に存在した
京都の景観である、、、、と結論付けている。
まさに、脱帽、というしかない。
読書の醍醐味、というのは
こういう本に出会うということなのだ、、、、
とつくづく思う。
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(追記)
この「京都・一五四七年」のメインのテーマは、
こうした考証の上に立ち、
上杉本洛中洛外図の作者が
本当に一般に考えられているように
狩野永徳なのか ?
という点にあるのだが、そして、
それに疑問を投げかけた今谷説は、
大変な議論を呼ぶことになるのだが、
それらの論争については、
その後に出版された
下に掲げた、黒田日出男さんの
「謎解き洛中洛外図」
に、詳しく書かれている。
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謎解き洛中洛外図 (岩波新書) 価格:¥ 777(税込) 発売日:2003-03-20 |
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この本については、後日、改めて、ご紹介したい。
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