[ 「幻の本? 京都学のバイブル「平安京提要」(その1.)」より、続く ]
「平安京提要」という本は、平安京遷都千二百年記念行事の一環として、企画・編集されたもので、
角田文衛さんが総監修を、古代学協会と古代研究所(編集協力として京都市埋蔵文化財研究所)が編集をそれぞれ担当し、
平成六(1994)年に出版されている。
サイズはB5版で、全部で1059ページ、各ページ二段組の、大部の本だ。
全体は、5つの部からなっていて、各部にも、そうそうたる研究者の方々が、監修として名を連ねている(→監修が、総監修と各部の監修の二層になっている)。
第一部「総説」→坂詰秀一・江谷寛
第二部「平安京の構造」→朧谷寿・山中裕・杉山信三
第三部「平安京の近郊」→杉山信三
第四部「平安京の遺物」→永田信一・浪貝毅
第五部「平安京研究史と研究史料」→村井康彦・井上満郎
圧巻は、この本のおよそ3割のページ数を占める、第二部の「平安京の構造」で、平安時代の条坊制にもとづいた区画ごとに、
かつて、そこに、何があったのか? や、
その土地の所有者が、誰から誰へ、移り変わったのか?
といった情報が満載されている。
しかも、これは学術書にとって不可欠のことだが、それぞれ、そう結論する根拠(文献名や発掘調査の結果)なども、記載されている。
たとえば、御池通り(南側)を歩いていると、間之町通りの東側に、「在原業平邸跡」、という石碑が建っている。
私は、長い間、そんな古い時代のことについて、何を根拠にしているのだろう?、と不思議に思っていた。
そんな疑問についても、この本で調べると、
この辺り(平安時代の条坊制によると、三条四坊三町)に、在原業平邸があったと伝えているのは、鴨長明の「無名抄(むみょうしょう)」だ、
ということが分かる、といった具合だ。
こんな情報がふんだんに盛り込まれているのだから、しかも、
それらは一流の研究者の眼で篩(ふる)いにかけられているのだから、
京都歴史マニアの間で、この本が、ヒッパリダコなのも、十分に、肯ける。