京都にいる間に読んだ本のうちで、最も面白かったのが、美術史研究家で東大名誉教授の、辻惟雄(つじのぶお)さんが書いた、「岩佐又兵衛~浮世絵をつくった男の謎~」(文春新書)。
岩佐又兵衛―浮世絵をつくった男の謎 (文春新書 629) 価格:¥ 1,260(税込) 発売日:2008-04 |
60点強あると言われる、洛中洛外図に、「舟木本」と呼ばれる、有名な洛中洛外図屏風がある。
この「舟木本・洛中洛外図」を巡っては、その作者が、岩佐又兵衛か否か、について、長い間、論争があった。
従来、否定説を採ってきた数少ない論者の一人が、本書の著者の辻惟雄さんだったのだが、その辻さんが、本書の中で、ついに、従来の否定説を撤回し、「舟木本・洛中洛外図」の作者は、岩佐又兵衛、と断定している。
これによって、「舟木本・洛中洛外図」・岩佐又兵衛作者説は、確定したとも言えるほど、本書は、岩佐又兵衛・研究史上、エポックメーキングな著作だ。
本書では、「山中常盤物語絵巻」、「堀江物語絵巻」、「浄瑠璃物語絵巻」、「小栗判官絵巻」など、数々の伝・岩佐又兵衛作品の真贋判定が行なわれているのだが、
美術史家というものが、どのように、絵画の作者を推論するのか、その息詰まるような舞台裏が分かる。
図版も、新書版ながら、オール・カラーで、読みながら参照するのに良い。