老後は京都で !

京都の町中(堺町六角)と東京(青山)を気ままに行き来する二地域居住を実践中。 

「岩佐又兵衛~浮世絵をつくった男の謎~」(辻惟雄著)

2008年10月28日 | 江戸時代の京都

京都にいる間に読んだ本のうちで、最も面白かったのが、美術史研究家で東大名誉教授の、辻惟雄(つじのぶお)さんが書いた、「岩佐又兵衛~浮世絵をつくった男の謎~」(文春新書)。

岩佐又兵衛―浮世絵をつくった男の謎 (文春新書 629) 岩佐又兵衛―浮世絵をつくった男の謎 (文春新書 629)
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2008-04

60点強あると言われる、洛中洛外図に、「舟木本」と呼ばれる、有名な洛中洛外図屏風がある。

この「舟木本・洛中洛外図」を巡っては、その作者が、岩佐又兵衛か否か、について、長い間、論争があった。

従来、否定説を採ってきた数少ない論者の一人が、本書の著者の辻惟雄さんだったのだが、その辻さんが、本書の中で、ついに、従来の否定説を撤回し、「舟木本・洛中洛外図」の作者は、岩佐又兵衛、と断定している。

これによって、「舟木本・洛中洛外図」・岩佐又兵衛作者説は、確定したとも言えるほど、本書は、岩佐又兵衛・研究史上、エポックメーキングな著作だ。

本書では、「山中常盤物語絵巻」、「堀江物語絵巻」、「浄瑠璃物語絵巻」、「小栗判官絵巻」など、数々の伝・岩佐又兵衛作品の真贋判定が行なわれているのだが、

美術史家というものが、どのように、絵画の作者を推論するのか、その息詰まるような舞台裏が分かる。

図版も、新書版ながら、オール・カラーで、読みながら参照するのに良い。

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