【石川酒造・入口】
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東京都福生市の石川酒造へ酒蔵見学に行ってきました。
JR拝島駅からタクシーで1メーター、歩いても15分~20分程度です。前から、行きたいねぇ~とカミさんとは話していたのですが、ようやく実現しました(5年越し、いや或いはそれ以上かな?)。どうせ行くなら、ということで、あらかじめ酒蔵の見学をお願いしておきました(無料)。レストランもある敷地内には誰でも入れるようですが(近所の人たちの散歩コースのような感じでした)、酒蔵見学は事前に予約が必要です。
【石川酒造内・玉川上水熊川分水】
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全国的に見れば小さな酒蔵ですが、地元(東京都多摩地方)では「多満自慢」という銘柄の日本酒が有名です。
石川酒造の創業は1863(文久3)年にまでさかのぼります。熊川村の名主・石川彌八郎が余剰の米を用いて酒造りを始めたのが最初だとか。彌八郎は将軍家へ多摩川の鮎を献上する役目を果たしたりもしていましたが、この地の治水にも大いに貢献したそうです。そんな石川酒造の敷地内を玉川上水の分水が流れているのもご縁でしょうか。もちろん流れは健在で、案内していただいた酒造の方の話によると、ペットボトルとか靴とか、アゲ(!)とか奇想天外なものも含めて、色々なものが流れてくるのだそうです(最後のアゲは、本当かな?)。
【本蔵】
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日本酒の醸造が行われている本蔵。内部に入ると冷気(霊気ではない…念のため)と酒の匂いが充満していました。石川酒造は冬の間だけ酒造りを行う「寒造り」。ちょうど今は仕込みの時期が終わったところ。酒造りの真っ最中に蔵に入ると、酒の匂いがさらに強烈で、アルコールに弱い人はそれだけでアウト!とのことです。
国の登録有形文化財のこの蔵が建てられたのは、1880(明治13)年。内部の柱や梁も重厚な造りとなっています。古民家で見る柱や梁をもっと太く頑丈にした感じ。
【仕込み水】
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敷地内に地下150メートルから汲み上げている仕込み水が流れ出ています。ペットボトルに詰めて持ち帰る人もいるのだとか。ちなみに敷地内のレストランの水も、トイレの水もこの仕込み水を使っているとのこと。トイレは有名デパート顔負けなくらい綺麗でした。
【向蔵】
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石川酒造はビールも醸造しています。いわゆる地ビール(クラフトビール)というやつです。そのビールを造っているのがこの向蔵。本蔵の向かいにあるから向蔵なんだそうです。
かつてビール造りの免許は規制が厳しく、ほぼ大手独占でしたが(醸造量が一定以上という条件は大手しかクリアできなかったとのこと)、平成になってから規制緩和され、全国各地に雨後の筍のように誕生したのが小さな地ビール工房。でも最近は随分と淘汰されてきているようです。生き残れなかった地ビールは、値段が高いのと、値段の割には美味しくなかったということですね…とは、案内してくれた方の談。
【明治時代のビール窯】
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規制緩和によるここのビール造りは、新規ではなく「再開」といったほうがいいようです。実は明治時代に1年間だけビールを醸造・販売したのだとか。でも1年だけで見切りをつけて断念。明治のこの時期、まだビールは日本人にとっては時期尚早の飲み物だったようです。石川酒造の年表によると、1887年ビール醸造場建設に着手、1888年ビール醸造開始、1890年ビール醸造断念、諸機械売却…となっています。
で、敷地に鎮座しているのが、その明治のビール醸造時に使用されていたビール窯。ビール醸造廃止後、地中に埋められ、池のような使われ方をしていたため、太平洋戦争の物資供出の際も気づかれずに難を逃れたのだとか。そんなわけで、現存する日本最古のビール窯だと思われるのだそうです。
ちなみに日本最古のビールは、川本幸民により幕末の1853(嘉永6)年に醸造されたとされ、また日本最古のビール醸造場は1869(明治2)年に横浜に造られたジャパン・ヨコハマ・ブリュワリーと言われています。
【石川家・長屋門】
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敷地内には石川酒造当主の私邸があります。当主は代々彌八郎を襲名するそうです。現当主は6代目。私邸ということで内部には立ち入りできませんが、この門を見るだけでも壮観です。本蔵と同様、国の登録有形文化財。
【樹齢400年の欅】
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夫婦欅と呼ばれているそうです。夫婦仲、恋人仲を祈願していく人たちも多いとか。私?そりゃ、やっぱりカミさんと今後も仲良く暮らせるように、と。
【春爛漫】
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酒蔵見学は1時間弱で終了。最後は売店で試飲。
石川酒造の歴史を展示する小さな資料館もあって、日本酒やビールの歴史に興味のある人にはお勧めです。
行く行くはお酒のテーマパークにしたい、なんて案内してくれた方は言っていましたが、レストランもあり(洋食中心ですが美味しかったです)花見もできて、なかなかに楽しめる場所でした。ちなみにお勧めは冬の雪の積もった時だとか。雪と酒蔵、寒いけど素晴らしい眺めとのこと。
【お土産1・日本酒】
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試飲やレストランでの味見などから、日本酒のお土産を決定。右から
「東京の森」
(これは日本酒というよりもリキュールらしい)
「たまの八重桜」
(やえ「ざ」くらと濁らずに、やえさくらと読みます)
「多満自慢・純米生原酒」
(試飲して1番でした)
【お土産2・ビール】
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明治時代の復刻版。地元のスーパーでは見かけるけど飲んだことはなかったので。ここに来てのビールなら、まずは敬意を払ってこちらを購入。
そんなわけで、しばらくは石川酒造と多満自慢贔屓の日々が続きそう。
やっぱり実際に行ってみると、お酒自体にも愛着がわくというものです。しかも地元ならなおさらなのでした。
そんなわけで、今夜も美味しいお酒で乾杯!