ブルックナー/交響曲第4番「ロマンティック」
管弦楽:ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:セルジウ・チェリビダッケ
収録:1983年、ミュンヘン、ヘラクレス・ザール
(DVD)
購入後、しばらく棚で寝かせていたディスクを視聴しました。
チェリの「ロマンティック」は、1974年夏に一連のFMライヴ(シュトゥットガルト放送響。当時は「南ドイツ放送響」って言ってました)で聴いて以来、耳タコ気味に繰り返し聴いてきました。
どこまでも透明で瑞々しい響きとクライマックスの異様に遅いテンポが印象的でした。
後に、EMIから出たミュンヘン・フィルとの演奏も、ほぼ同傾向の演奏で、「ロマンティック」に関してはチェリの指揮が一番しっくり来る演奏だと思っています。
さて、この映像は83年ということで、当然ながら彼はまだ立って指揮をしています。
80年のロンドン響との来日では、その2年前の読響二度目の客演時に比べてお腹がずいぶんと出っ張っていたことに驚いたのですが、90年代以降の彼の姿を知っている今となっては、まだまだスリムで精悍な風貌であります。
前半の2つの楽章では、チェリの怖い顔(不満げな表情)が目立っています。思い通りの演奏になっていないのでしょうか。しょっちゅう「ダメ出し」のジェスチャーが見られます。
彼の、こういう仕草や表情は見慣れているとは言え、私はあまり見たくないものです。目を閉じて音だけ聴きたくなりますね。
しかし第3楽章からは、そんな表情もほとんどなくなって、逆にニコニコとご機嫌な笑顔が多く見られるようになります。
演奏は、やはり素晴らしいもの。
彼の指揮では、金管のどんな強奏も必ずと言っていいほど音はノーブルで美しく、それでいて力感は半端ない。
デリカシーと、とてつもない爆発力の共存。
それに、細部まで慈しむように練り上げた表情が純度を増した澄んだ響きで奏でられるのを聴く、まさに至福の時間。
第2楽章の終結間近、スローテンポの中で、どのパートもが讃美歌を歌うかのように厳かに、過ぎ行く時間を惜しむかのように演奏しているところなど本当に素晴らしい。
そして、「お約束」と言ってもいい、例の終楽章コーダ。
これは、好みも分かれるところでしょうね。
「冒涜だ」と憤る方もいらっしゃるでしょう。
「なんだ、こりゃ???」と、ズッコケる人もいるかも知れません。
そんな様々な反応を全く聞く耳持たぬ頑固さで、この大伽藍を築いていく、なんとも胸のすく「自己チュー」解釈!
チェリの魅力、ここに極まれりですね。
思いっきりやってくれてありがとう。
ところで残念なのは、このDVDの音質です。いろいろと加工されているようです。ちょっと質の悪い裏青盤みたいな音で、特に弱音部のデリカシーが損なわれています。チェリビダッケが生きていたら販売は許可されなかったかも知れません。
しかし、チェリ・ファンにしてみれば十分に魅力的で貴重な映像でありました。
昨夜は、これを通して視聴してて、ラジオの「大滝詠一追悼特番」をうっかり聞き逃してしまいました。
0108.pm.3.58誤記訂正
チェリビダッケ指揮 - ブルックナー:交響曲第4番 [DVD] | |
クリエーター情報なし | |
ナクソス・ジャパン |
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます