
ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調op.67
管弦楽:サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮:小澤征爾
録音:2000年9月、長野県松本文化会館にて
小澤&のサイトウ・キネンのベートーヴェンって、実はあまり聴いたことがなかった。何年か前に「第9」のDVDを見せてもらったくらいだろうか。テレビで放送されたものはいくつか記憶にあるが、どれも、特に強い印象はない。所持している彼らのディスクは、確か武満徹の作品集1枚だけだったと思う。ブラームスの交響曲全集は持っていたが、肌が合わず手放した。
で、この演奏は昨夜初めて聴いた。
これは独特の演奏だと思った。20世紀前半の個性溢れる濃厚な演奏とも、昨今の古楽器アプローチ風とも違う。かと言って、直球主体のザッハリッヒなスタイルともちょっと違う。なんとも形容が難しいのだが、「余計なものを排した」「無味無臭」の演奏という点で、これは独特と言っていいほどの境地だと思った。それは悪い意味ではなく、このアプローチでここまで突き詰め深めて到達した「孤高」の演奏と言う意味で。最初から最後まで、まったく「普通」の、今まで聴いてきた全ての「第5」の最大公約数みたいな演奏が繰り広げられる。しかし、一音一音の実在感と言うか滋味深さというか、そういうものが耳を捉えて離さない。リズムの刻みも冷ややかなくらい整然とし過ぎているが、その刻みそのものが「物を言っている」。フレージングも、外見はあっさりしていて「平凡アプローチ」だが、なんというか、奏者達の内的な集中度の物凄さが不思議なほど感じられる。
気迫や情熱を表層から消し去って、尚この「熱さ」を感じさせる演奏って、そういう意味で怖い。最小限の動きや表情で、人間のあらゆる心情を表現する日本の伝統芸能に喩えるのは、あまりに安直か。でも、そういう「日本人的演奏」の極みではないだろうか。
そして、最後の最後、ベームの来日公演やクライバーのシカゴ・ライブと同様な盛り上げ方で、それまで隠していた熱くたぎるものの生の姿を露出させて、いやが上にも興奮を呼び起こす。
小澤さんとサイトウ・キネンのベートーヴェン、なかなか面白い。他曲も聴いてみたくなった。
![]() | ベートーヴェン:交響曲第5番&7番 |
サイトウ・キネン・オーケストラ 小澤征爾 | |
ユニバーサル ミュージック クラシック |
![]() | ベートーヴェン:交響曲第5番 |
小澤征爾 | |
ユニバーサル ミュージック クラシック(私のはこっち。今は廃盤で、中古しか手に入り難いみたい) |
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