大植英次プロデュース
大阪クラシック
~御堂筋にあふれる音楽~
2008年9月11日(木) 第48公演
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番
(ピアノ/河村尚子)
レスピーギ/ローマの松
指揮/大植英次
管弦楽/大阪フィルハーモニー交響楽団
19:30~ ザ・シンフォニーホール
A席 1500円
7日間、65公演の第48公演目。
1年ぶりに聴く大植&大フィルは、やはり素晴らしかった!
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を生で聴くのが実は初めてだった。そのことに演奏が始まる直前に気付いた。今まで何十回(何百回?)と耳にしてきた曲であるのに、実際に聴いたこの時、初めて気付く曲の凄みや良さをいっぱい感じた。ピアノ・ソロによる開始。オケがそれに応え、そして神々しい高まりへ一直線。この、何度も何度も聴いてきたはずのお馴染みの曲頭であるが、なんと新鮮で意味深く聴こえたことか!あ~、実演ってやっぱりいいねぇ!1楽章もよかったのだけど、第2楽章と終楽章の聴き応えは格別だった。激しい情熱を覆い隠したかのような第1楽章から一転して、第2楽章からは生々しい悲痛な声が聞こえてくる。オケとピアノの対話は、形は「サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」と、どこか似ているのだけど中身が全然違う。二度目のピアノの応答は絶望のどん底までも照らし届ける天上のコラールであり、その優しさと力強さの同居に身震いするほど感動し勇気付けられる。対話は絡み合いになっていくが、その辺りでのオケのフェイド・アウトっぽいデイミヌエンドに、弱奏部を極めて丁寧にやってくれる大植さんの真骨頂を感じた。第3楽章での河村さんは顔中体中で歌うかのような弾きっぷり。大植さんも、オケを鼓舞するかのような仕草で時計回りで全包囲(360度)指揮しているのだが、これが不思議と全く自然で派手さや芝居臭さが無い。他の誰がやっても決まらないようなパフォーマンスが、何とも崇高で躍動感に満ちたロンド楽章を創っていく。
曲間は、まずピアニスト河村さんとのトークだが、大植さんは日本語(一部大阪弁)、ドイツ語、???語を駆使して、かなりの早口で会場を大いに沸かせた。河村さんが舞台から去られると、ピアノが片付けられたり次曲の楽員さんが入られたりの舞台転換。その間もマエストロの楽しい話が続く。あの面白さは、ここでどう書いても伝わらんでしょ。大阪クラシックのかなりの公演に顔を出されていて、団員からは「私たちのかっこいいところをみんな持ってっちゃうから来ないで」と言われたとか、某コンマスからは「もう、ピアノ弾くのはやめたら」と言われたとか、「プログラムになぁにも書いてないから・・・」と、「ローマの松」の解説をされたり・・・。やはり早口で、しかもむちゃ楽しく語られた。他のどんな音楽家の喋りよりも楽しく(悪乗り寸前の絶妙なバランス感覚!)、天衣無縫のエンタぶりに「やっぱ、根っからの天才や!」と思ってしまう。
そして、「それでは、レスピーギ!楽しんでください!」とか何とか言われて、さっと指揮台に駆け上がり棒を構えると、楽員の顔がさっと上がり、それだけで舞台がぱっと明るくなる。「うまっ」と思いきや間髪を入れずに「ボルゲーゼ荘の松」のキラキラした夕暮れの情景が繰り広げられた。ワクワク感を全身でリズム取りながら(チェリの腰踊りを思わせる)金粉が撒き散らかされるような第一部だった。ピタッと止まるはずがグロッケンの一打がキーーンと残って静寂に。第2部「カタコンブ付近の松」への見事な移行。この曲、ホンマに生で聴くと素晴らしい。(と言っても前回聞いた実演は全然つまらなかったけど・・・・)沈鬱な聖歌は次第に盛り上がりオルガンの重低音を伴っての大音響へ。第3部「ジャニコロの松」では、クラリネットの最弱奏に息を呑んで、満月に照らされた丘の上の一本松を思い浮かべつつも、心はもうローマ軍行進の足音への期待にドキドキ。
その第4部「アッピア街道の松」だが・・・・これは、もう物凄いモンでした。言葉無し。聴いていた席は1階やや後方の中央。2階両翼からの金管サラウンドと眼前のフル・オケとオルガン、後列に並んだ打楽器群の爆裂に包まれてメロメロになりました。タムタムはねぇ、あれくらい鳴らしていただかないとねぇ!脳から脊髄までジュワ~~ンと揺さぶってくれましたよ。もちろん、「鳴らせばエエ」の単細胞アプローチではない、きめ細かな表情とバランス感覚を保ちつつ冷静かつ熱く盛り上げていった。この音量差、音圧はスピーカーでの鑑賞では味わえないですね。「体感」ですね。「ローマの松」、1978年にチェリビダッケの実演を聴いて以来、どれを聴いても不満足だったが、今回、新たな「松」伝説が内に生まれた。
頻繁にコンサート通いされている方から見れば、いろいろと言いたいこともあっただろうが、私には大満足のコンサートであった。去年もそうだったが、この驚異的なスケジュールの中での、このクオリティである。オーケストラの皆さんと大植さんには本当に頭が下がる思いだ。
7時30分開演で、終演は手元の時計で8時50分。曲間のトークも、それ自体が楽しくて自然な流れの音楽みたいなものだったから、普通のコンサートと同等かそれ以上のボリューム感だった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます