静かな場所

音楽を聴きつつ自分のため家族のために「今、できることをする」日々を重ねていきたいと願っています。

言葉で奏でる音楽~吉田秀和の軌跡~

2007年07月03日 01時01分40秒 | 音楽
昨日のETV特集「言葉で奏でる音楽~吉田秀和の軌跡~」を感慨深く観た。
(録画が間に合わず、最初の10分ほどが欠落してしまった。)

NHK-FM「名曲の楽しみ」は、それこそクラシックを聴き始めて以来、かなりの長い間、欠かさず聴いていたものだ。
私の記憶が確かならば、たぶんガーディナーのベートーヴェンを取り上げた回が「ちゃんと聴いた」最後かも知れない。
もう10年以上前なのか???
吉田さんは、その回の放送の最後にカラヤンの「運命」の第1楽章を採り上げられて「これだって、なかなかのものですよね」というようなことを仰られていたかと思う。
その後、FM自体から疎遠になったり、放送時間が変更になったりで、同番組をじっくりと聴く機会はほとんどなくなったが、たぶん、この番組を欠かさず聴いていらっしゃる方は多いだろうし、全て録音されている方もみえるかと思う。

バーンスタインが有名無名の音楽家たちと録った「戦時のミサ」(ハイドン)に私が初めて触れたのも同番組であった。
氏は、この演奏の背景にはほとんど触れなかったけども、私には、氏がバーンスタインの取った行動に共感を寄せているように感じられてならなかった。
この時のテープは本当に磨り減るまで聴いた。後にレコードを入手するまで・・・。
それより前、入手難だったワルター指揮NYPの「ジュピター」を聴かせてくれたのも同番組。

例のホロヴィッツ評やブーニン初来日時のロビーでのコメントも印象に強く残っている。
(ブーニンを評して「青くさい!」と言われたのを、私はしばらくの間「アホくさい!」と聞き違えていた。)
大阪でバーンスタインのマーラー9番を聴いたときは、1階の平土間中央あたりに座ってみえた。

氏が自宅のオーディオセットの前でチェリビダッケのチャイコフスキーに耳を傾けていらっしゃる姿が紹介されたが、なんかヘンな言い方だが「聴き方が豊かだなぁ」って感じた。

氏の著作全集は持っていないが、文庫本の全てと1972年以降の単行本のほとんどを読んだ。
音楽好きで、氏の言い回しや表現法に感化されていない人はほとんどいないのではないかと思うが、どうだろうか。

番組中、特に印象深かったのは・・・文を書き、それを直す「楽しさ」を,画家が木の葉の一枚一枚を丁寧に描くことと重ねて語られたところ。
「葉を見て木を見ず」という言葉があり、しばしば「重箱の隅をつつく」と同義で、否定的に使われるけれども、木なんか見なくて葉を一生懸命見ることに熱中することの良さってのもあるんだなってことを感じた。
優れたクリエイターは全体を見失わないでいて、かつ細部を克明に作っていくことを楽しむんだな。
吉田さんの文体も、たぶんそうやって綴られたものなんだろう。

新聞休載時の拙記事↓
http://blog.goo.ne.jp/lbrito/e/7cec7eea8fe8197c13ff863d4d5a81de



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