静かな場所

音楽を聴きつつ自分のため家族のために「今、できることをする」日々を重ねていきたいと願っています。

フルトヴェングラー、1937年の第9

2022年02月03日 15時55分08秒 | ベートーヴェン
入院中でヒマなので本日も更新。


ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調op.125『合唱』

エルナ・ベルガー(ソプラノ)
ゲルトレーデ・ピッツィンガー(アルト)
ヴァルター・ルートヴィヒ(テノール)
ルドルフ・ヴァツケ(バス)
ブルーノ・キッテル合唱団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)

1937年5月1日
ロンドン、クイーンズ・ホール、ライヴ




たくさんあるフルトヴェングラーの「第9」録音の中で最も古いものです。
SP復刻や戦前戦中の録音が苦手な方はどう思うか知りませんが、演奏のディテール等は十分伝わってきます。ジョージ6世戴冠式記念演奏会とのことです。

1937年という、大戦前夜(前々夜?)のロンドンにてドイツのオーケストラ(ベルリン・フィル)の演奏が行われた、そのなんちゃらかんちゃらは、各自お調べいただくとして、ここでは例によって演奏の漠っとした感想を(久しぶりに聴くと印象が前と全然違うんですね、困ったもんや)。

第1、第2楽章もよろしかったですが、なんと言っても第3楽章。そして第4楽章ですね、この演奏。
第3楽章の冒頭、これ、なんという遅さでしょう!
「遅い」というより「止まっている」って様相です。
バイロイトの第9(1951年)の本番バージョンでは弦の揃いが崩壊しておりましたが、ここでは流石ベルリン・フィル。しっかりと巨匠の棒に付いています。それにしてもこの雰囲気は尋常ではない。
これは前2楽章を経て到達した黄泉の国か!
いや、この世とあの世の狭間に流れる清流、その上にうっすら架かる霞か、なんて妄想も掻き立てられてしまうインパクト。
バイロイト盤でも、私はフルトヴェングラーの第9の第3楽章後半が特に好きなのですが、当演奏もキケンなくらい耽美的で慈しみ深い演奏が続きます。
第4楽章では、「フォール・ゴット」のムチャ長いのと、その前のテンポ・ダウンが、いろいろ聴いた「今風」の演奏よりもずっと過激で高貴で・・・(「フォール・ゴーット」のフェルマータはフルヴェン第9の中でも最長らしい)。
熱に憑かれたような合唱にティンパニの炸裂が重なり、天を突き抜ける歓喜のメロディは流麗さを許さず。そして、中間部は強弱伸縮自在の麻薬的アプローチ。敬虔なコラール(じゃないけど、ほんとは)から一転、根性入れまくりの二重フーガはピッタリ正解のテンポ設定。最後の阿波おどりの狂乱はマタチッチが3人指揮してるみたいでもあり、と思うまもなくお約束のぶっ飛びラストへ。
もうむちゃくちゃ一歩手前、いや、十分にむちゃくちゃであるけども、楽曲の包容力、許容力は全く揺るがず、名曲の名演はかく成就しているのであります。

追記・・・音は古めかしいっすよ。当時としては高水準でしょうけど。

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