静かな場所

音楽を聴きつつ自分のため家族のために「今、できることをする」日々を重ねていきたいと願っています。

映画「真空地帯」

2013年06月12日 22時03分52秒 | 映画、ドラマ
 今日も映画の話です。

 3年前に買ったブルーレイ・レコーダーの内臓HDDに残っている最も古い録画でした。

「真空地帯」・・・1952年、山本薩夫監督作品です。原作は読んだことがありません。

 3年前、山本監督生誕100年か何かで、NHKのBSが彼の作品を何本か続けて放映しました。
 そのほとんどを観ましたが、この一本だけ観そびれてしまい、HDDに残してあったのです。
 まだBSプレミアムになる前の「BS2」のロゴが片隅に映っています。

 戦争が終わってまだ7年たらずの頃に作られた作品。
 軍隊の日常の描かれ方が、(私が見たいくつかの)今どきの戦争映画とは全然違います。
 たぶん、こちらの方が比べ物にならないほどリアルなものでしょう。

 無機的で狂気が日常になったような暴力や赤裸々な我欲の応酬。
 もちろん人間らしい「正常な」判断によると思われる言動もありますが、それは権力の前では無力です。
 強者も弱者も「それなり」にしたたかにならないと生き抜いていけない世界。
 人間性を消し去って、初めてやっていける世界がそこにあります。

 私は、この映画を観ていて、生前の父が時々語っていた軍隊の生活の話と合致することが多いことに驚きました。

 父は大学途中での徴用でした。
 あの雨中の学徒動員の映像を何度も見せられ、そのたびに「お前らは、こうやって盛大に送り出してもらったくせに・・・」というような嫌味を何度も言われたそうです。
 なんでもかんでも、やたらとビンタを食らうのも当たり前だったようで、これは徴兵される前の話だったと思いますが、伊勢神宮に天皇をお迎えするために沿道で列になって待機しているときに憲兵(?)による持ち物検査があり、たまたまポケットに入ってた母親から持たされた頓服の風邪薬を取りあげられて、「なんで、こんなものを持っとるのだ、ばかものぉ!」という感じでぶん殴られたそうです。
 とにかく、殴る理由などなんでもよく、みんな、やたらと殴られていたそうです。
 いじめぬかれて病になり命を落とした友もいたと聞きました。

 そんな父から聞いた話と同質の空気が絶えず感じられる映画でした。
 戦争は人を狂気にさせる、人は狂気にならないと戦争をすることはできない・・・しかし、正気の人であっても、人に「戦争をさせる」ことはできるのだと思います。恐ろしいことに・・・。

 それから、うまく言えませんが、この映画を観ているとき、今のスポーツ界の一部で明らかになった問題(柔道や野球など)と、どこか通じるものが感じられました。「体質」というものは案外根深く、残っている所には残っているように思います。

 若き日の山田洋次監督がエキストラとして出演しているそうです。




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