歴史だより

東洋と西洋の歴史についてのエッセイ

≪漢文総合問題~三宅崇広『きめる!センター 古文・漢文』より≫

2023-12-24 18:31:04 | ある高校生の君へ~勉強法のアドバイス
≪漢文総合問題~三宅崇広『きめる!センター 古文・漢文』より≫
(2023年12月24日投稿)

【はじめに】


  漢文の勉強法について考える際に、現在、私の手元にある参考書として、次のものを挙げておいた。
〇菊地隆雄ほか『漢文必携[四訂版]』桐原書店、1999年[2019年版]
〇田中雄二『漢文早覚え速答法 共通テスト対応版』学研プラス、1991年[2020年版]
〇三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]
〇幸重敬郎『漢文が読めるようになる』ベレ出版、2008年
〇小川環樹・西田太一郎『漢文入門』岩波全書、1957年[1994年版]

これらのうち、受験に特化し、効率的な勉強法を説いた参考書としては、次の2冊である。
〇田中雄二『漢文早覚え速答法 共通テスト対応版』学研プラス、1991年[2020年版]
〇三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]
 
 今回のブログでは、次の参考書の漢文総合問題を解いてみよう。いわば実践的な勉強である。
(共通テストにかわったが、センター試験の過去問は良問が多いともいわれるので、練習のつもりで取り組んでもらえたらと思う)
〇三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]
 出典は、『能改斎漫録』『朱子文集』で少々読むのが難しいかもしれない。
なるべく数多くの漢文の文章に触れて、漢文の句形や内容を知ってほしい。
(返り点は入力の都合上、省略した。白文および書き下し文から、返り点は推測してほしい。)



【三宅崇広『きめる!センター 古文・漢文』(学研プラス)はこちらから】
三宅崇広『きめる!センター 古文・漢文』(学研プラス)





〇三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』
【目次】漢文編
攻略法0 センター漢文攻略のためのルール

<句形別攻略法>
攻略法1  再読文字
攻略法2  使役
攻略法3  受身
攻略法4  否定
攻略法5  疑問
攻略法6  反語
攻略法7  比較
攻略法8  限定
攻略法9  累加
攻略法10  仮定
攻略法11  抑揚
攻略法12  禁止
攻略法13  詠嘆
攻略法14  その他の句形

<設問別攻略法>
攻略法15  読み方・書き下しの問題
攻略法16  解釈の問題
攻略法17  語意を問う問題
攻略法18  漢詩の規則を問う問題

漢文総合問題
漢文総合問題 解答・解説
 
<コラム>目で見る漢文① (儒家)
<コラム>目で見る漢文② (道家)
<コラム>目で見る漢文③ (法家)
<コラム>目で見る漢文④ (三国志)
(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、8頁~9頁)




さて、今回の執筆項目は次のようになる。


・漢文総合問題~『能改斎漫録』より
・漢文総合問題~『朱子文集』より






漢文総合問題~『能改斎漫録』より



漢文総合問題
※『能改斎漫録』は『漢文必携』(157頁)にも例文として掲載されている。参考にしてほしい。

1呉曾『能改斎漫録』
 范文正公少時、嘗詣霊祠禱曰、「他時得位相乎。」不
許。復禱之曰、「不然願為良医。」亦不許。既而嘆曰、「夫
不能利沢生民、非大丈夫平生之志。」他日有人謂公
曰、「大丈夫之志於相、理則当然。良医之技、君何願
焉。A無乃失於卑耶。」公曰、「嗟乎、B豈為是哉。古人有
云、『常善救人、C故無棄人。』且大丈夫之於学也、固欲
遇神聖之君、得行其道。D思天下匹夫匹婦有不被其
沢者、若己推而内之溝中。能及小大生民者、固惟相
為然。既不可得矣、夫能行救人之心者、莫如良医。
果能為良医也、上以療君親之疾、下以救貧民之
厄、中以保身長年。E在下而能及小大生民者、捨夫
良医、則未之有也。」

(注)
1 范文正公―北宋時代の政治家・詩人、范仲淹(989~1052)のこと
2 利沢  ―利益と恩沢を与えること
3 生民  ―すべての人々

【書き下し文】
 范文正公少(わか)き時、嘗て霊祠に詣(いた)りて禱(いの)りて曰はく、「他時相に位するを得るか」と。許されず。復た之に禱りて曰はく、「然らずんば願はくは良医と為らん」と。亦た許されず。既にして嘆じて曰はく、「夫れ生民を利沢する能はざるは、大丈夫平生の志に非ず」と。他日人の公に謂ふもの有りて曰はく、「大丈夫の相に志すこと、理としては則ち当に然るべし。良医の技、君何ぞ焉を願ふや。乃ち卑(ひく)きに失すること無からんや」と。公曰はく、「嗟乎(ああ)、豈に是と為さんや(豈に是が為ならんや)。古人云へる有り、『常に善く人を救ふ、故に人を棄つる無し』と。且つ大丈夫の学に於けるや、固より神聖の君に遇ひ、その道を行ふを得んと欲す。天下の匹夫匹婦に其の沢を被(かうむ)らざる者有るを思ふこと、己の推して之を溝の中に内(い)るるが若し。能く小大の生民に及ぼす者は、固より惟だ相のみ然りと為す。既に得べからずんば、夫れ能く人を救ふの心を行ふ者は、良医に如くは莫し。果たして能く良医と為らば、上は以て君親の疾(やまひ)を療(いや)し、下は以て貧民の厄(わざはひ)を救ひ、中は以て身を保ち年を長らふ。下に在りて而(しか)も能く小大の生民に及ぼす者は、夫の良医を捨(お)きては、則ち未だ之れ有らざるなり」と。


問1 傍線部A「無乃失於卑耶。」のように、ある「人」が言うのはなぜか。
  その説明として最も適当なものを一つ選べ。
① 医者になろうと願うことによって、低い官職をも失うことになると考えたため。
② 医者になると願いが、宰相の次に挙げるものとしてはあまりに低いと考えたため。
③ 宰相への願いを卑俗な祠(ほこら)のお告げだけで断念するのは、あまりに軽率であると考えたため。
④ 宰相になれないから医者になりたいと願うのは、初志を曲げる卑怯なことだと考えたため。
⑤ 医療技術を磨くばかりでは、貧しい人々を救おうとする高い倫理観を失うことになると考えたため。

問2 傍線部B「豈為是哉。」の読み方として最も適当なものを、一つ選べ。
① あにぜとなさんや。
② あにぜをなさんかな。
③ あにこれをなさんかな。
④ あにこれがためならんや。
⑤ あにこれがためなるかな。

問3 傍線部C「故無棄人。」の「人」は、范文正公の言葉の中ではどのような人に当たるか。。
  最も適当なものを、一つ選べ。
① 相
② 良医
③ 君親
④ 生民
⑤ 大丈夫

問4 傍線部D「思天下匹夫匹婦有不被其沢者、若己推而内之溝中。」の解釈として最も適当なものを、一つ選べ。
① 天下の人民一人でもその恩沢に浴さない者があれば、自分がその人間を溝の中へ突き落したかのように思う。
② 天下の人民一人でもその恩沢に浴さない者があれば、自分がその人間に溝の中に突き落されたかのように思う。
③ 天下の人民一人一人が互いに恩恵を与えあわなければ、自ら進んでその人間を溝の中に突き落としたかのように思う。
④ 天下の人民一人でもその恩沢に浴さない者があれば、わが身に推し量って自分が溝の中に落ち込んだかのように思う。
⑤ 天下の人民一人一人が互いに恩恵を与えあわなければ、彼ら自身押しあって、溝の中に突き落としているかのように思う。

問5 傍線部E「在下」の意味として最も適当なものを、一つ選べ。
① 臣下であっても
② 若い時であっても
③ 低い官位にあっても
④ 貧しい時であっても
⑤ 在野の身であっても

問6 范文正公の言葉の主旨として最も適当なものを、一つ選べ。
① 祈禱の結果などに惑わされず、理性的な志を持つのが、大丈夫の生き方である。
② 神聖の君に会うことによって、貧しい人々の災いを救うのが、大丈夫の志である。
③ 宰相であれ良医であれ、人々に恵みを及ぼすことこそ、大丈夫の志とすべきことである。
④ 宰相になるより医者になって人々に恵みを及ぼす方が、大丈夫の志にかなうことである。
⑤ 良医になるより宰相になって人々に恵みを及ぼす方が、大丈夫の志にかなうことである。



【解答・解説】
【解答】
問1 ②
問2 ①or④
問3 ④
問4 ①
問5 ⑤
問6 ③

【解説】
問1 「無乃~耶」は、「~ではないですか」と相手に同意を求めるときに使われるやや特殊な反語。
 ※頻出するものではなく、特にポイントにもなっていない。
・選択肢を横に見渡せば、「失於卑」の解釈がポイントだと分かる。 
 「~に失す」は、「~でありすぎる」の意味で現代語でも使っている表現であり、「卑きに失す」は「低すぎる」と訳すことになる。

問2 「豈」は反語で文末を「んや」で結ぶから、選択肢を横に見渡して、①・④に絞れる。
・実は出題ミスでその両方が正解になった問題であるようだ。
 ①は「どうして正しいと判断しようか、いや正しくない(医者をめざすことが志として低すぎるという考えは正しくない)」
 ④は「どうしてこんな理由であろうか、いやこんな理由ではない(医者をめざすのは技術を身につけることが目的ではない)」
 どちらでも意味が通る。

問3 傍線部は直前の一句と対句である。
・少なくとも「善棄人」と「無救人」の「人」が同じものであることはわかるだろう。
 その「救人」に対応する表現である。同内容になっているのが「利沢生民」であると気づけば答えが決まる。「生民」の(注)もポイントになっている。

問4 選択肢を横に見渡して、「不被其沢者」の解釈で、③・⑤がまず除外される。
 後半は「之ヲ」という読み方に注目できれば、「その人間を」と訳している①に絞ることになる。

問5 宰相になれないなら医者をめざしたいという趣旨を見失わずに、医者とはどんな立場の人かを考えれば答えが決まる。
 「在野」とは「民間」のことであり、「お上」に対する「下じもの身」ということになる。

問6 ①は「祈禱の~持つ」、④は「宰相になるより医者になって」、⑤は「良医になるより宰相になって」が不適。
 ②は「貧しい人々の」が「生民」の解釈として不十分。

【口語訳】
 范仲淹がまだ若かった時のこと。ある時、霊験あらたかな社に詣で祈って言った「私はいつの日か宰相の地位につくことができるでしょうか」と。願いはかなわなかった。そこでもう一度祈って言った「宰相の位がかなわぬのなら、良医にならせて下さい」と。この願いもまたかなわなかった。まもなくして、ため息をついて言った「いったい、万民に利益と恩沢を与えることができない人生は、大丈夫たる私の平生の志に合わない」と。
 後日ある人が范仲淹に言った「大丈夫たるあなたが宰相を志すことは、道理として当然のことでしょう。しかし、良医の技量などどうして願うのですか。(大丈夫たる者の志としては、)低すぎるのではないでしょうか」と。
 范仲淹が言った「ああ、医者になりたいと言うのは技術を身につけることが目的ではありません。古人の言葉に『いつもうまく人を助ける、だから人を見捨てることがない』とあります。それに、大丈夫たる者学問をするのは、優れた君主に出会い、そのもとで政治を行いたいと考えてのことです。天下の人民の中に一人でもその恩沢に浴さない者があれば、自分がその人間を溝の中へ突き落したかのように思うのです。世のすべての人々に政治の恩沢を及ぼすことができる職といえば、もちろん宰相だけです。だから、もし宰相になることができないというのであれば、人を救いたいという平生の志を実現できる仕事としては、良医が一番です。もし良医になれるならば、一方では君親の病を治してさし上げられますし、他方では貧民の苦しみを救ってやれるでしょうし、また一方では自身の健康を保ち長生きもできましょう。在野の身であっても、世の人々を救うことができる仕事は、この良医をおいて他にありません」

(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、308頁~317頁)

漢文総合問題~『朱子文集』より



2『朱子文集』

大抵観書、A先須熟読、使其言皆若出於吾口。継以精思、使
其意皆若出於吾之心。然後可以有得爾。」(イ)至於文義有疑、衆
説紛錯、則亦虚心静慮、B勿遽取捨於其間。」(ロ)先使一説自
為一説而随其意之所之、以験其通塞、則C其尤無義理者、不待
観於他説而先自屈矣。」(ハ)復以衆説互相詰難而求其理所安、
以考其是非、則似是而非者、亦将奪D於公論而無以立矣。」(ニ)
大抵徐行却立、処静観動、如攻堅木。先其易者而後其節
目、如解乱縄。有所不通、則姑置而徐理之。此読書之法也。

(注)
・観書――四書五経などを読み、考察する。
・紛錯――いりみだれる。
・通塞――通じるか通じないか。
・詰難――欠点を非難し問いつめる。
・徐行却立――ゆっくり進みまた立ちどまる。
・攻――細工する。

問1 傍線部A「先須熟読、使其言皆若出於吾之口。」の書き下し文として最も適当なものを、一つ選べ。
①まづまさに熟読し、その言をして皆吾の口より出づるがごとからしむべし。
②まづよろしく熟読し、その言の皆をして吾の口に出づるがごとからしむべし。
③まづすべからく熟読し、その言をして皆吾の口より出づるがごとからしむべし。
④まづまさに熟読し、その言の皆をして吾の口に出づるがごとからしむべし。
⑤まづよろしく熟読し、その言をして皆吾の口より出づるがごとからしむべし。
⑥まづすべからく熟読し、その言の皆をして吾の口に出づるがごとからしむべし。

問2 傍線部B「勿遽取捨於其間。」はどういう意味か。最も適当なものを、一つ選べ。

① 性急にあれこれの説のよしあしを決めてはいけない。
② あわててあれこれの説にまどわされない方がよい。
③ あわてるとあれこれの説から正解をとり出すことができない。
④ いきなりあれこれの説から結論を導き出せるはずがない。
⑤ 性急のあまりあれこれの説の要点を見落としてはいけない。


問3 傍線部C「其尤無義理者、不待観於他説而先自屈矣。」の解釈として最も適当なものを、一つ選べ。

① そのもっとも道理に外れたものは、他説を参考にしようとせず、しだいになげやりになる。
② そのもっとも道理に合わぬものは、他説をみるまでもなく、ひとりでになりたたなくなる。
③ そのもっとも道理を欠いたものは、他説を受け入れようともせず、自然にかたくなになる。
④ そのもっとも道理に反するものは、他説と照らし合わせるまでもなく、先に批判すべきだ。
⑤ そのもっとも道理にそぐわぬものは、他説と比較するまでもなく、自説を撤回すべきだ。

問4 傍線部Dの助字「於」と同じ用法のものを、一つ選べ。

① 霜葉紅於二月花。
② 労力者治於人。
③ 万病生於怠惰。
④ 読書於樹下。
⑤ 入於洛陽。

問5 この文章を論旨の展開上、三段落に分けるとすれば、(イ)~(ニ)のどこで切れるか。最も適当なものを、一つ選べ。

① (イ)と(ロ)
② (イ)と(ハ)
③ (イ)と(ニ)
④ (ロ)と(ハ)
⑤ (ロ)と(ニ)

問6 著者は、読書の方法として、まず熟読精思し、解釈に疑問が生じた場合にはどうすべきだといっているか。最も適当なものを、一つ選べ。

① 似て非なる説を敬遠する読み方をすべきである。
② それぞれの説の特徴をとりいれた読み方をすべきである。
③ 最初に自説にかなった説を選ぶ読み方をすべきである。
④ 諸説の是非をゆっくり検討していく読み方をすべきである。
⑤ 前後の文脈から解決の手がかりを求める読み方をすべきである。


【書き下し文】
大抵書を観るには、先づ須らく熟読し、その言をして皆吾の口より出づるがごとからしむべし。継ぐに精思を以てし、其の意をして皆吾の心より出づるがごとくならしむ。然る後以て得ること有るべきのみ。文義に疑ひ有りて、衆説紛錯するに至りては、則ち亦虚心静慮して、遽(にはか)に其の間に取捨する勿かれ。先づ一説をして自ら一説為(た)らしめて其の意の之く所に随ひ、以て其の通塞を験(しら)ぶれば、則ち其の尤(もつとも)義理無き者は、他説を観るを待たずして先づ自ら屈せん。復た衆説を以て互相(たがひ)に詰難して其の理の安んずる所を求め、以て其の是非を考ふれば、則ち是に似て非なる者は、亦将に公論に奪はれて以て立つこと無からんとす。大抵徐行却立し、静に処(を)りて動を観ること、堅木を攻(をさ)むるが如くす。其の易き者を先にして其の節目を後にすること、乱縄(らんじよう)を解くが如くす。通ぜざる所有れば、則ち姑(しばら)く置きて徐(おもむろ)に之を理(をさ)む。此れ読書の法なり。

【口語訳】
一般に四書五経などを読み、考察する場合は、まずそこに書かれたことが、皆自分の口から出たと思えるまでに熟読する必要がある。その次はその内容が、皆自分の心から出たと思えるようになるまでじっくり考察する。そうした後でこそ本当の意味で納得することができる。
文章の意味に疑問点があり、多くの説が入り乱れている場合は、先入観を廃して冷静に考えるのであり、慌ててそれら様々な説の中から取捨選択してはならない。まず、ある一つの説を一つの説として取り上げ、その解釈に従って読み進め、意味が通じるか通じないかを調べると、特に道理に合わない説は、他説を見るまでもなく、ひとりでに成り立たなくなる。また、様々な説を突き合わせ互いに欠点を問い詰め、道理が落着する地点を探し、それぞれの説の正しい点・正しくない点を考察すれば、一見正しいようで実際は正しくない説は、公平な議論に論拠を奪われ、成り立たなくなる。
一般に、ゆっくり進んではまた立ち止まり、自分を冷静に保って(論理の)動きを読み取るのだ。堅い木を細工する時のように、やさしい箇所から読んでゆき、節目となる難しい箇所は後回しにするのだ。乱れた縄をほどく時のように、解けない箇所があれば、しばらく放置し、ゆっくり細かく読み解いてゆく。これが読書の方法である。


【解答】
問1 ③
問2 ①
問3 ②
問4 ②
問5 ③
問6 ④

【解説】
問1
・再読文字「須」の読み方で、③と⑥に絞る。
「言葉が口から出る」と言うから、③「口より」のほうが、⑥「口に」より丁寧な読み方だが、これは決め手にならない。
問題は使役の読み方である。
「使」に続く使役の対象は名詞であり、だからこそ格助詞「をして」がつく。
・ところが、漢文の「皆」はすべて副詞であり、名詞にならない。
 よって、「皆をして」と読むことは不可能である。
 本文中に同様表現として、「使一説自」がある。

問2
・禁止「勿」の解釈で、①と⑤に絞る。
 「取捨」とは良いものを取り入れ、悪いものを捨てること。

問3
・傍線部に細かいポイントがあるにはあるが、最も大事なのは、「先使一説~先自屈矣」と「復以衆説~無以立矣」、とりわけ傍線部と「似是~立矣」が対応する表現になっていることに気づくかどうかである。
「屈」=「無以立」、つまり「なりたたなくなる」と解釈することになる。
・漢文の随筆では、対句・対応表現が使用されることが多く、これがあればセンター試験でも設問のポイントになるのが普通である。


問4
・「於」は多くの用法を持つが、設問になったらまず受身か比較ではないかと考えてみることが重要。
 この場合は原文の送り仮名から受身だと分かる。
 それぞれの選択肢は、
① 霜葉は二月の花よりも紅なり(比較)
② 力を労する者は人に治めらる(受身)
③ 万病は怠惰より生ず(起点)
④ 書を樹下に読む(場所)
⑤ 洛陽に入る(目的)
正解は②

問5
・センター試験の漢文で段落分けが問われたら、まずは切れ目の文頭の語を比べてみよう。
 何らかの法則性があるからこそ、段落分けが出題されるのである。
 この場合は「大抵」が冒頭の話題提示と最後の結論の部分で繰り返されているのがポイント。
 (ニ)で切れている③と⑤に絞る。
 (イ)の後~(ニ)の前は疑問点の解決方法を述べている一連の部分なので、ここで切ることは出来ない。
 よって⑤は不適。

問6
・①「似て非なる説」、②「特徴をとりいれた」、③「自説にかなった」、⑤「前後の文脈から」がそれぞれ不適。

(三宅崇広ほか『きめる!センター 古文・漢文』学研プラス、1997年[2016年版]、312頁~319頁)