神は、この力をキリストに働かせて、
キリストを死者の中から復活させ、
天において御自分の右の座に着かせた。
『エフェソの信徒への手紙』 / 1章 20節 新約聖書 新共同訳
神様は私たちの心の中に住み
私たちの心の動きをじっと見つめておられます。
嬉しい時
悲しい時
そして、楽しい時
神様が共にその心を
味わっておられることを
忘れないでください。
★【中東を歩く】エルサレムの聖墳墓教会で「聖火の奇跡」を見る 川上泰徳
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▼鐘が激しく鳴り響く聖墳墓教会で、
手持ちのろうそくに聖火を受けて、
高く掲げる巡礼者たち=4日、川上撮影
◆朝日新聞 2013年5月6日
エルサレム旧市街にあるキリスト教の聖地「聖墳墓教会」では5日、ギリシャ正教やアルメニア正教などの東方正教会が復活祭を迎えた。その前日の4日に正教会恒例の「聖火の奇跡」の儀式が行われた。
日本ではキリスト教と言えば、ローマカトリックかプロテスタントということになろうが、キリスト教世界では、ギリシャ正教、アルメニア正教、コプト教会、シリア正教など東方正教会も大きな勢力を持ち、ギリシャやロシア、さらに中東各地やエチオピアなどへと広がっている。ローマカトリックと東方正教会では復活祭などの祭りの時期が異なり、今年の復活祭はローマカトリックでは3月末に終わったが、東方正教会は5月5日である。
「聖火の奇跡」の儀式は東方教会では、復活祭そのものよりも盛り上がると言われるが、ローマカトリックの復活祭にはないものである。
ギリシャ正教の総主教が聖墳墓教会の中でキリストが埋葬されているとされる神殿に入って、天から送られた火がついたろうそくを持って現れ、教会に集まった巡礼者がその火を自分のろうそくに受ける。そんな儀式だという。この儀式は聖墳墓教会が建てられた4世紀から続いているとされる。事前にそのような説明を読んでも、一体どのようなことが起こるのか、どうも想像がつかない。
東方正教会の復活祭の季節には、エルサレム旧市街には世界中の東方教会から巡礼者が集まり、旧市街周辺のホテルはほぼ満員状態。旧市街もロシア人やエチオピア人などの巡礼者で大混雑である。巡礼者たちの最大のお目当てが、「聖火の奇跡」の儀式に立ち会い、用意したろうそくに火を受けることである。
4日の儀式当日、城壁で囲まれた旧市街のすべての門に、イスラエル警察によって検問所が置かれ、特別の許可証がなければ、旧市街に入ることも、聖墳墓教会に近づくこともできない。私は取材で知り合ったアルメニア正教会の関係者に、バッチと手首に巻くセキュリティ用のテープをもらって、当日の朝10時に旧市街の中に入ることができた。アルメニア正教会の関係者は私の手首のテープを見て「まるで家畜のようだね」と冗談をいった。
この日、参加者に義務づけられた手首のテープは、直前になってイスラエル警察から各教会に配布されたという。「イスラエルは毎年のようにセキュリティを厳しくし、新たな規則を考え出す。そうやって、旧市街を自分たちが支配していることをアピールしようとしているのだ」と関係者は語った。
私はアルメニア教会の招待という形なので、旧市街のアルメニア教会から教会の聖職者グループ、信者グループととともに聖墳墓教会に向かった。信者たちは手に手に細いろうそくの束を持っている。33本の細いろうそくが一束にされている。十字架にかけられたキリストの33年の生涯を象徴するという。
午前11時ごろ、にぎやかな音楽を演奏しながら鼓笛隊が教会を出発し、その後を続いていく。聖墳墓教会につながる旧市街の入り口ではイスラエル警察の検問があり、手首のテープがなければ、中にはいれない。アルメニア人の週代の中に一人東洋人が混じっているのは、すぐにわかるだろうが、私の後ろで、「ジャパニーズ・アルメニアン(日系アルメニア人)だ」と冗談をいう。しかし、アルメニア人は世界中に離散していて、テヘランにもインドにもアルメニア人のコミュニティがある。だから「日系」と言っても全くありえないことではない。
聖墳墓教会の周辺は、いたるところにイスラエル警察の検問があり、ほとんど包囲された状態である。アルメニア教会関係者は「イスラエル警察の治安強化に抗議して、アラブ人のキリスト教徒の中には参加を拒否したところが出ている」と耳打ちした。イスラエル警察の厳重警戒は異様とも言えるが、同じ東方教会でも、ギリシャ正教とアルメニア正教は、ライバル関係にもあり、聖墳墓教会で両聖職者が度々、ぶつかってきたので、そちらの心配もある。私たちが到着した時には、すでに聖墳墓教会の入り口の前には長い列が出来ていた。
中に入ると、さほど広いとは言えない教会の中は、日本の満員電車状態だ。中央の神殿に通じる通路では、東方教会の異なる教会の聖職者集団が次々と肺ってくる。アルメニア正教は、頭の先が黒くとんがったマントをつけている。エジプトのコプト教の聖職者は、丸い帽子をかぶっている。教会ごとに聖職者の正装が異なるのは興味深い。
座ることも出来ず、混雑した群衆の中で、1時間以上立っているのは、思いの他つらい。満員電車と違ってつり革もない。この日はエルサレムの気温が25度ほどに上がったが、教会の中は人の熱気で温度があがり、汗が噴き出る。時折、ペットボトルの水を飲みながら、じっと耐えて待つ。1時半ごろになって、アルメニア教会の関係者が「あと15分ほどで聖火(ホーリー・ファイアー)が降りる」という。実際には、それから30分以上たった午後2時すぎに、教会内部の照明が少し暗くなり、しばらくして、甲高い鐘の音が「かんかんかん」と鳴り響き始めた。教会の中では「ヒーィー」という悲鳴のような歓声が上がった。ギリシャ正教の総主教が火のついたろうそくを持って神殿から出てきた瞬間である。
すぐにろうそくの火が回ってきて、人々は手に手に自分のろうそくに火を受け取る。あっというまに教会の中はろうそくの火で埋まり、異様な興奮で満たされた。この儀式はキリストの復活を象徴する奇跡と信じられているが、教会を埋め尽くした群衆の上に、火の束が立ち並ぶ情景には、キリスト教徒ではない私も、息をのむような感情を抱いた。人間は生来、火に興奮するものなのだろう。キリスト教と火の儀式はあまり結びつかないが、「聖火の奇跡」には、日本の火を使う様々な祭にも通じる、宗教の原初的な形を感じた。
この聖火は手をつけても熱くない、という言い伝えもある。しかし、記者には信仰心が足りないためか、群衆が高く掲げるろうそくの炎が近づいてきた時には、カメラを掲げた腕に焼けるような熱さを感じた。炎が隣りの人の服や髪の毛を焦がすのではないかと気が気でないし、上からは溶けた熱いろうが落ちてくる。聖墳墓教会の教会内が群衆で埋まり、さらに手に手にろうそくの火を持つという状況は、一歩間違えば、惨事や火事にさえなりかねないと考えるのは、罰当たりなことかもしれない。しかし、火祭りとしか言えないような、この儀式は、これまで知らなかったキリスト教の顔を見たような気がした。
(エルサレム・川上泰徳)
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by:papalars (アルメニア教会 写真)
◼「ゴルゴタの丘」で乱闘騒ぎ=巡礼者もびっくり-エルサレム
◆時事通信 2008年11月10日
【エルサレム10日時事】
エルサレム旧市街のキリスト教最大の聖地とされる聖墳墓教会で9日、ギリシャ正教とアルメニア教会の聖職者が乱闘騒ぎを起こしてイスラエル警察が介入、双方の関係者を逮捕した。
聖墳墓教会は、イエス・キリストが十字架にはりつけにされたゴルゴタの丘の所在地といわれ、キリストの墓と位置付けられている。教会内の貴重な装飾品がなぎ倒され、居合わせた巡礼者や観光客はあぜんとしていたという。
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◆従って、あなたがたはもはや、外国人でも寄留者でもなく、
聖なる民に属する者、神の家族であります。
『エフェソの信徒への手紙』 / 2章 19節 新約聖書 新共同訳