空飛ぶ自由人・2

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三つのピノキオ

2022年12月13日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

11月25日から少数の映画館で劇場公開され、
12月9日からNetflixで配信された
「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」

「ピノキオ」は、ディズニーで有名になったが、
元々はイタリア人作家カルロ・コッローディが書いた「ピノッキオの冒険」(1883)。
従って、リメイクではなく、再映画化
しかも、人形によるストップ・アニメーションだ。
何度となく映画化されている名作童話を
「シェイプ・オブ・ウォーター」で
アカデミー賞作品賞・監督賞など4部門を受賞した
鬼才デル・トロの監督、脚本、製作により
どんな映画になるか興味津々。

全体的には、デル・トロらしい、
ダークな印象
人形の形状も、ピノキオを含め、独特。
可愛くないし、美しくもない。


そして、物語は、根幹は残しながら、
時代を第2次世界大戦時に置き、
途中、ムーソリーニを出しておちょくったり、
ピノキオを戦場に送ったりする、
反ファシズムの内容。
子どもの遊園地の下りは、なし。

冒頭、ゼペットじいさんの息子カルロが
敵機の爆撃で死に、
ゼペットじいさんは、「もう一度息子に会いたい…」と思い続け、
息子の姿を託してピノッキオを作成、
ということになっている。
墓の近くに埋めた松ぼっくりから生えた松の木で作られており、
ピノとは、松の意。

ピノッキオ、コオロギのクリケット、妖精以外の
原作にあるファンタジー要素を取り除き
デル・トロは、「極力、現実世界に近付けようとした」とも語っており、
原作のネコ・キツネ・人形師の役割を集約したキャラクターとして
ヴォルペ伯爵を作り出した。
ヴォルペ伯爵は落ちぶれた大貴族で、
今は人形劇一座の座長をしており、
ピノッキオを利用して失った地位を回復しようと企む。
他にファシストの役人であるポデスタが登場し、
ピノッキオがロバに姿を変えられるというシーンは
「不死身の兵士としての価値を見出したポデスタに
ピノッキオが狙われる」という描写に変更された。
ピノッキオは3度死に、死の国で死神に会い、その都度蘇る。
また、最後に至ってもピノッキオは本物に男の子にはなれず、
木の人形のまま。
また、ラストにゼペットじいさんの死、
語り手のコオロギの死を置くという悲しい展開になっている。

ラストは切ないが、
全体的には、ファンタジーに浸る喜びは味わえない
原題も「Guillermo del Toro's Pinocchio」で、
まさに、デル・トロの「ピノッキオ」である。

声優陣が超豪華で、
ピノッキオ役には、新人のグレゴリー・マンが抜擢。
コオロギのセバスチャン・J ・クリケット役には、ユアン・マクレガー
ゼペットじいさん役はデヴィッド・ブラッドリー
他にティルダ・スウィントン、クリストフ・ヴァルツ、
ケイト・ブランシェットなどが名を連ねている。

マーク・グスタフソンが共同監督。
音楽は、アレクサンドル・デスプラ

同時にメイキング映像もNetflixで配信された。

 

ディズニー・プラスで9月8日に日米同時に配信開始した
「ピノキオ」は、アニメ版の実写版リメイク。
監督はロバート・ゼメキスで、
ゼペットじいさんをトム・ハンクスが、


ブルー・フェアリーをシンシア・エリヴォが演ずる。


ディズニーの正統的な継承作品だから、
ほぼ忠実な実写版
ピノキオのキャラクターも、↓ほぼアニメを踏襲。

音楽もアニメを引き継ぐ。
コオロギのクリケットだけでなく、
猫のフィガロも金魚のクレオもちゃんと登場する。
人形劇団座長のストロンボリも悪役のキツネと猫の二人連れも出て来る。
女の子の人形をあやつる少女は新たな登場。
子どもたちをロバに変える遊園地は、
「プレジャー・アイランド」と命名されているが、
これは、オーランドのウォルト・ディズニー・ワールドに
そういう名前の施設がある。
学校に行ったピノキオは、校長先生によって拒絶される。
また、ゼペットじいさんとクジラの腹の中で再会するのではなく、
船で旅するゼペットじいさんを
水上スキーのように追いかけたピノキオと海上で再会し、
その後、一緒にクジラに飲まれる。
したがって、アニメにあった、
あの素晴らしい海中での魚たちのシーンはなくなっている。

海から打ち上げられた後、
仮死状態になるのは、ピノキオではなく、ゼペットじいさん。
また、ピノキオが本当の人間の子になれたかどうかは曖昧に済ませている。
ただ、映像では人間の子になった描写がある。

 

この2本の再映画化作品、リメイク作品を観たので、
やはり、オリジナルの「ピノキオ」(1940)に当たっておこうと再度観たが、
これは、やはり傑作。
わざわざ実写版で作り直す必要がないような精緻な作品。


特に、冒頭のゼペットじいさんの工房の描写や、
クジラに飲まれる前の海中シーンの
隅々まで行き渡ったアニメーターの力に瞠目に値する。


「白雪姫」 (1937) に次ぐ、
ディズニーの長編アニメの第2作
さすがだ。

 



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