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電車で隅に座る日本人

2024年07月05日 23時00分00秒 | 様々な話題

海外からの訪日客は2か月連続で300万人を越え、
繁華街では、外国人の姿を頻繁に見かける。

その外人客、日本の文化にいろいろ驚いているが、
中でも、電車に乗る時、不思議に思うことがあるという。
一つは、よく言われるように、
車内の静けさ
日本人は公共の場所では静かにする、
という意識が染み付いているからだろう。

もう一つ不思議に思われることは、
電車の座席が隅から埋まっていること。
たしかに、空いている車内で
みんな端に座っている光景はよく目にする。
かく言う私も、空いていさえすれば、
必ず隅の席に座る。

その「端の席を選ぶ」行動心理や背景について、
環境心理学や社会心理学を専門とする、
武蔵野大学名誉教授の小西啓史氏が
アンケートを分析しているので、紹介しよう。

アンケートは今年3月18日に、
2千人を対象に実施。

「電車内で座席が空いていたらどこに座りますか?」との質問に対し、
「端の席」が87.6%
「端の席以外」が5.3%、
「座席には座らない」が7.1%
という回答だった。

アンケートでは約9割の人が
第一の選択として、
端の席を選んでいることがわかり、
日本人には端の席を好む傾向が確かにあることが分かる。

「端の席に座る」理由については、
「一番落ち着くから」
「両側に人がいるのが不快なので」
「できるだけ人と接したくない」
「電車から降りやすいから」などの意見、
「端の座席以外」という人からは、
「ドアの近くは寒いから」
「乗客の乗り降りが気になる」
「端の席は横に立っている人に圧迫される感じがするから」
との声があった。

これについて、
「端の席は、車両内のシートという限られた空間の中で、
他の人と接しなくて済む最も適当な席」
という認識があるからと、小西さんは考える。
「動物の行動から考えても、
外敵から身を守る点で、壁を背にすることは有利です。
電車でも、端の席には片側にポール(手すり)があるので
壁と同じように安心できるのでしょう」

更に、小西さんは、
「端」という位置に抱く印象が、
日本人と海外の人とで違いがあるのかもしれないとも考える。
「日本人のパーソナルスペースは比較的大きく、
プライバシーを守りたいという意識が
外国人よりも強く、
端の席はプライバシーを守る上で最適の席と考える日本人は
多いと言えるのかもしれません」

端に対するイメージについても、
「日本では『隅っこ』に由来するキャラクターの『すみっコぐらし』や、
広い通りではなく細い迷路のような道を探索する『路地裏散策』
が人気になるなど、
『端』について比較的好ましい印象があるように思います。
『隅っこ』や『端』に対してネガティブなイメージがある外国人にとっては、
真ん中も空いているのにわざわざ端の席に座る日本人を見ると、
不思議な感じがするのかもしれません」

まとめると、
端に座るのは「自分のプライバシーを守りたい心理の表れ」
自分の周りに張るバリアーを作っている。
電車内は他人がほとんどなので、
無意識に他者と距離を図ろうとするのは当然のことだという。

更に、自分のパーソナルスペースを無理やり作ろうとする、
ある行為が見受けられる。
「隣の座席に荷物を置く」という行為。
これもまた、自分のパーソナルスペースを守ろうとする心理が働いている。
迷惑な行為だが、その奥に日本人の気質がうかがえる。

電車内がガラガラな時、わざわざ真ん中から座る方も一定数いる。
真ん中の席から座るのは「心が広いオープンな性格の持ち主」といえる。
オープンな性格であればあるほど、
端の席ではなく真ん中から座る傾向が強いという。
だから、端の席に座りたがるのは
内向的な日本人の国民性が影響している。

もっとうがった説としては、
日本人が端を選んでしまう理由として、
「端」は異世界につながる境界線だから、という。
日本人にはウチとソトの境目を明確にするという考え方があるから、
境目をはっきりすることで、日本人は自分の世界を守る。
境目があやふやになると自分の空間が崩れてしまうので、
そういうところから端に座ることで安らぎが得られるのではないか。
家の垣根や玄関の敷居、畳の縁など
日本文化には多くの境界線が存在し、
日本人にとって境界線は普段の生活から大切なものだ、と。

電車の中で座る場所一つ取っても、
日本人論に発展するのが面白い。

 



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