[映画紹介]
「カメラを止めるな!」で一大ブームを巻き起こした
上田慎一郎監督の新作。
マジメな税務署員・熊沢二郎は、
詐欺師の氷室マコトが企てた
中古車売買詐欺に引っかかり、
虎の子の大金をだまし取られてしまう。
親友の刑事の助けで氷室の所在を突き止めると、
氷室から
「貴方が前から追っている脱税王を詐欺にかけ、
脱税した10億円を徴収してあげる。
だから見逃して」
と持ちかけられる。
犯罪の片棒は担げないと一旦は断った熊沢だったが、
脱税王が税務署長と結託している事実を知ると共に、
あることで屈辱感を与えられ、
また、親友が脱税王の工作で
税務署をクビになり、自殺したことへの復讐のため、
氷室と手を組むことを決意。
2人は詐欺師集団《アングリースクワッド》を結成。
メンバーは、どんな役にもなれる元役者、強靭な肉体の当たり屋、
偽造のプロでメカニックの男、闇金業者の女、
その娘で常に債権者の指詰め用トンカチを持ち歩く女など。
脱税王から大金を騙し取る方法は、
所有者に成りすまして土地を売る地面師詐欺。
綿密な計画を練り上げ、
チームは壮大な税金徴収ミッションに挑む。
しかし、脱税王の方に情報がもれ、
逮捕前提の現金授受の場にのぞむが・・・・
という、だましだまされる、虚々実々の駆け引きが展開される。
原作は韓国ドラマ「元カレは天才詐欺師~38師機動隊~」(2016)。
英語タイトルが「Squad 38」。
38というのは、韓国の憲法38条にある納税義務のこと、
Squad は、もとは軍隊用語で、
少人数のチームを意味する。
「アングリースクワッド」の意味は、「怒りの部隊」。
ただ、原作は連続ドラマで長いので、
恋愛部分などを刈り込み、
オリジナリティを加えて、
独自の作品に仕上げた。
「カメラを止めるな!」公開前から動いていたプロジェクトだという。
「カメラを止めるな!」(2017年)で注目された上田監督だったが、
間に共同監督作品を挟んでの次回作、
「スペシャルアクターズ」(2019年)は、期待を裏切るものだった。
特に、演技陣があまりに非力だった。
私はブログに、
「上田監督は演技の力を軽く見ているのではないか。
あるいは、訓練された俳優の演技力に
触れた経験がないのではないか」
「次の作品は、
しっかりした映画会社で企画を練り、
潤沢な予算を獲得し、
優秀な俳優たちを起用して作ってもらいたい。
そうでなけれは、
「カメラを止めるな!」はまぐれだったと言われてしまう」
と書いた。
その次の作品「ポプラン」(2022年)は、話題にもならなかった。
しかし、今作は、俳優たちに恵まれ、快作に仕上がった。
主人公の税務署職員・熊沢を内野聖陽、
天才詐欺師・氷室を岡田将生が演じ、
脱税王に小澤征悦、
他に川栄李奈、真矢ミキ、吹越満と
一流の俳優を揃えた。
上田監督は、俳優の力量でこれほど作品が豊かになるのかと
思い知ったに違いない。
上田監督の腕も上がったようで、
細部に工夫と伏線が組み入れられ、
よく目配りされた脚本になっている。
最後の絶体絶命のピンチの解決法は、
驚かされた。
更にもう一つのサプライズもある。
5段階評価の「4」。
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