[映画紹介]
64歳でキューバからフロリダまで泳いで渡るという
偉業を成し遂げたダイアナ・ナイアドの実話を映画化。
ナイアドはギリシャ神話の“水の精”の意味だという。
マラソンスイマーを引退して約30年が経ったダイアナ・ナイアドが、
60歳を越えて、ある挑戦をしようと思い立つ。
それは「水泳界のエベレスト」と呼ばれる
フロリダ海峡横断だった。
海峡には激しい湾流があり、
サメや毒クラゲもいて、
オーシャンスイムの最難関とされていた。
28歳の時に挑戦したことがあったが、
残り136キロで断念している。
そのリベンジをしたいというのだ。
親友でありコーチでもあるボニーらとともに
4年に及ぶ波乱に満ちた挑戦に乗り出す・・・。
ハバナからキーウェストまで約165キロ。
優に60時間かかる。
その間、ずっと水に浸かっているのだから、
脱水症状と低体温症も出る。
幻覚症状も。
障害は風と潮流。
水温の問題があるから、夏しか実施出来ない。
適した日は1年に数日あるかないか。
好天に恵まれても、3日以内に泳ぎ切らなければ、
天候が必ず悪化する。
船に並走してもらい、
進行方向を維持しなければならないから、
腕のあるパイロットと航海士が必要だ。
ボランティアだが、
それでも、50万ドルかかり、
スポンサーを募らなければならない。
1回目の挑戦は2011年8月7日。
ダイアナ61歳の時。
悪天候のため、残り85キロで断念。
2回目は7週間後、2011年9月23日。
クラゲに刺されて断念。
1年トレーニングを積み、
クラゲ対策もしている間に、
若い挑戦者が出て、先を越されそうになるが、
これもクラゲで中止。
3回目は2012年8月20日。
キーウェストまで93キロの時点で、
荒天で船が浸水して、断念。
4回目は2013年8月31日、64歳。
サメよけのケージを使わずに、
設置した電子シャークシールドの
機械が途中故障して、サメに襲われる危険もあったが、
修理して、復帰。
90分ごとに食糧補給。
上を向いた状態で、
チューブで口に流し込んでもらう。
そういう描写はないが、大小便共に垂れ流し。
泳者は方向が分からないから、
船からサラシの帯のようなものを垂らして、
それを目印に泳ぐ。
夜には、帯は光を放つ。
終わりの頃に、ダイアナはタージ・マハルの幻影を見る。
最後は海流にうまく乗って、
9月2日にキーウェストの海岸に到達。
沢山の人が出迎えたが、
人と触れると失格になるので、
コーチたちが手をつないでダイアナを防御する。
両足首が水から出た段階で
完泳が認められる。
距離は177キロ、掛かった時間は58時間。
到着した後、ダイアナはこう言う。
「3つのことをみなさんに言いたい。
1つ目は、絶対に諦めないこと。
2つ目は、夢を追うのに、年齢なんて関係ない。
3つ目は、個人競技だと思っていたけど、
これは、チーム・スポーツよ」
アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した「フリーソロ」をはじめ、
困難に挑戦する人々のドキュメンタリーを多く手がけてきた
エリザベス・チャイ・バサルヘリィとジミー・チンの夫婦監督が、
初めて劇映画でメガホンをとった。
元々ドキュメンタリーの人だから、
事実に即した細部にわたるまで描写がていねい。
泳ぐシーンの撮影は、さぞ大変だっただろう。
「アメリカン・ビューティー」をはじめ、
オスカーノミネート4回のアネット・ベニングがダイアナを演じる。
アネットは今65歳だが、
撮影時は本物と同じ64歳のはず。
美人女優だが、
惜しげもなく老醜をさらす。
アカデミー賞の主演女優賞を狙っているのか。
ボニー役は、
「羊たちの沈黙」「告白のゆくえ」でアカデミー主演女優賞を
2度受賞しているジョディ・フォスターが担当。
航海士役は、リス・エヴァンスが好演。
ダイアナはクセが強く、わがままで傲慢で傍迷惑なダイアナ。
それでも協力する人たちは、
やはり「高揚感」を得たいからだという。
競技人口は1600万人いるが、
うち連続24時間以上泳いだ者は116人。
48時間以上は12人だけ。
映画では、サポートが1艇の船を中心に
カヤック2台とシンプルに描かれているが、
実際は複数のサポート船と40人のクルーという大規模なものだった。
10月20日から一部劇場で公開した後、
11月3日からNetflix で配信。
余談だが、私は泳げない。
クロールの息つぎが出来ないからだ。
学校のプールの授業では、
25mを「面かぶり」(顔を水につけたまま、息つぎをしない)
で泳いで、予想外の拍手を受けた。
足で1キロ走ったって、息があがるのに、
不自由な息つぎをしながら、
千メートル以上泳ぐ人は、驚異でしかない。
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