9『世界と人間の歴史・世界篇』太陽系近傍
人類のような生き物は、地球以外にどのような環境で生きていられるのだろうか。ざっと考えただけでも、適度な温度、適度な水分、適切な組成の空気などが必要だ。某かの食べ物もなければならぬ。それらから類推すると、私たちのいる太陽系内には私たちが安全に住むための自然環境はまだ見つかっていない。それでは、他にどんなところがあるのだろうか。
想像力をたくましくして空を眺めてみよう。すると、天気のよい夜なら、自然豊かな場所に行くと満天の星が見える。数多(あまた)の星々があるうち、私たちの近くにあるのは、どんな星なのだろうか。それに、輝く星には、そのまわりに輝かない星が隠れている筈だという。その輝いていない方の星を探す。そんな中で、生物環境に適した星を探してみる。
人類の近代に入ってからは、その大いなる仕事に望遠鏡が使用される。偶然の巡り合わせに期待して多方面にそれを向けたり、ある推定、しかも理屈に合った方向にそれを向けてみる。その数をこなしていくうちに、某かの発見に域当たることがある。
現在までに、太陽系に近いところの星の中から、有望とみられるものが現れてきている。ただし、有望といっても、実にかすかな可能性でしかないし、確かめるすべもない位だ。もう一つのアプローチは、もっと遠くにある星の中から、地球と似たような環境にある星を探し出すことだ。
前者の試みでは、南半球でよりよく見える、南十字のそばに薄く輝く(-0.0等星)ケンタウルス座α(アルファ)星が見つかっている。この星だが、地球から4.3光年の距離にあるという。冬の夜空に青白くかがやく「おおいぬ座」のシリウスは 地球から8.7光年にあるというから、それの半分くらいか。
ちなみに、地球と太陽の距離は、1億4960万キロメートルと見積もられている。かたや、光の速さは毎秒29万9792.458キロメートルにして、その光が1年かかってた進む距離を1光年という。つまり、1光年とは9兆4600億キロメートルということになる。そこで、地球と太陽の距離を1光年の距離で割ってみると、0.00001581光年、これを分(ふん)に直せばおよそ8分19秒となるではないか。
つまり、太陽から出た光は約8分後に地球に届くであろう。私たちの眼に見えている太陽は、肉眼(裸眼)で見ると失明するのでそのままで見てはならないのものの、約8分前の姿を写したものなのだ。したがって、ケンタウルス座α星までの4.3光年という距離は、地球から太陽までの距離と比べ天文学的に大きな距離であると言わねばならない。
また後者では、地球から39光年離れた恒星(「TRAPPIST-1」という)の周りに、地球に類似した7つの惑星が回っているのを見つけたという。そして、これらにつき水が液体の状態で存在しているのではないかと想像している。また、それらのうち3つの惑星には海や大気圏がある可能性があるとまで語られる。もしそうであるなら、それらの星に何らかの生命体が存在する可能性が出てくる。ただし、この推論においては、今のところ、それらの可能性がどのくらい高いかは触れられていないようである。
(続く)
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