マサコデグブログ

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~ノルウェージャンフォレストキャットRとイラストレーター挑戦のDiary~

はじめての猫クロとの思い出

2006-07-29 | Column

ごろごろり~ん

今日の中部地方は、きのうとは一転して雨が降っています。
最後の水分を振り絞ってるのでしょうね?



さて猫好きの人って、小さい頃から家で飼っていたりなど
ずっと猫と親しんできた場合が多いのではないでしょうか。

私の場合、うちは父の仕事の関係で転勤が多かったため、
大きなペットは禁止になっていたので猫歴はあまり長くあ
りません。

はじめての猫との出会いは14歳の頃でした。



忘れもしないもうすぐ中3になる3月の私の誕生日の日、裏
庭で猫の鳴き声が聞こえてきました。
「ねえ、猫がないてない?」
なんだかとても興奮して3つ上の兄と探しに庭に出ました。
インコしか買ったことのなかった私たち兄妹でしたが、な
ぜかふたりとも動物好きだったのです。



庭に出ると探す間もなく、すぐに塀の上にいる真っ黒の大
きな猫を見つけました。
まん丸の顔をした全身ビロードのように滑らかな黒い毛の
体に、金色の目をキラリと光らせ私たちをじっとみていま
す。

(逃げるかな...?)と思いながらその黒猫を抱きかかえよ
うとそっと手を伸ばすと、意外にも素直に私の腕に抱きか
かえられいい子にしているのです。
「かわいい....」
大きさからするともうすっかり大人ですが、毛艶や顔立ち
などから推測すると今のRくらいか、もっと若いくらいだ
ったと思います。ごろごろと私の胸の中で喉をならす黒猫
を、(きっと誕生日プレゼントなんだ)と思ったのでした。



しかし、その1年後に引っ越しが決まっていたため父も母
も初め、飼うことにいい顔をしませんでした。
「こんなに人に慣れているし、誰かの飼い猫かもしれない
わよ」
確かに今考えてみても、野良猫のはずがない程キレイな毛
艶でおまけにとっても人好きでした。

そこで、帰りたい時に帰れるように、うちでは裏庭に段ボ
ールのベッドを設けて、ゴハンをあげるだけという中途半
端な半共同生活がはじまったのです。

名前は、自然に「クロ」となりました。



クロはとても貫禄のある猫でした。
近所の猫たちの中でも親分肌のようで、たまにもの凄いけ
たたましい叫び声を上げてケンカをするのですが、いつも
ほとんど無傷。
真っ黒なのですが、脇と、胸毛と、股の部分にだけ白い毛
が生えていてこれまたセクシーな大人の色気を漂わせてい
るのです。
よく野良の子猫を連れてきて、自分のベッドで寝かせたり
もしていて、周囲の猫たちからの信頼も厚かったものと思
われます。

家の駐車場に車が戻ると、いつも裏庭からクロはすぐ駆け
つけてきました。
「にゃー(おかえりー)」となきながら走るので声が揺れ
て「ウェオウェオ~」となります。

親分のくせに、人には甘えん坊でよく膝の上で寝たり、だ
っこされたまま寝たりもしていました。
また、外の変なものを食べたりもするからか、見た目によ
らずよくゲリをしていました。
その都度母は病院に連れて行ったり、ビオフェルミンを飲ま
せたり、時にはお尻から出てきたうどんのような虫を割り
箸で引っぱってとってやったりしていました。

半分しか飼い主じゃない私たち家族も、そんなクロがいじ
らしく、かわいくて仕方なくなっていきました。



そして1年が経ち、約束どおり引っ越しが近づいてきていま
した。

兄が高3で受験生だったため、父は家族より1年早く引っ越し
先に行き単身赴任をしており、兄が高校を、私が中学を卒業
するのと同時に父のところへ行くことが決まっていたのです。

新しく住む家はマンションで猫は飼えないところでした。
それに、自由猫で親分のクロが遠い他県のマンションの家
猫になれるとは到底思えません。

「連れて行ってみないと分からないよ、いい子にしてるかも
しれないしクロだって私たちと一緒にいたいよ!」私は父と
母になんとか「そうだね」と言ってもらいたくて必死でへ理
屈をこねてお願いしまいしたが、自分でも勿論分かっていた
のです。これは私のワガママで、クロにとってそれは幸せじ
ゃないということは。

特にずっと近くにいた母は実は私以上にクロに愛情を感じて
いたようです。
「もし、最後のお別れの日、クロが私たちの車を追いかけて
きたら...そしたら仕方ないから連れて行くよね?」と往生際
の悪い私が駄目もとで母に尋ねると「...その時は置いていけ
ないわね」と言ったことからも、母のクロへの愛情が伺えま
した。

ついに引っ越しの当日、クロの大好きなかまぼこを用意し、
母と兄と私は裏庭で「クロ~!」と呼びました。
いつも呼ぶとどこからともなくすぐやって来る、本当に賢
い子だったのです。

その時もすぐ私たちのところへやってきて「にゃー!」。

「クロ、今日でお別れなんだよ。元気でいてね」
私はそう言いながらも、本当は別れを決意出来ずにいました。
(きっとクロはお別れしたくない!!って追いかけてくる!!)
そう信じていたのです。

母がかまぼこの包装をとり、板がついたままクロに近づけたそ
の瞬間!!!
クロはかまぼこをがぶっとかんで奪い取り、風のようにマッハ
で去って行きました.....。

(ク....クロのばかぁ~~~!!!!)




それがクロとの最後でした。
もう15年ほど前のことです。

しばらくは車が家の前を通る度に「ウェオウェオ~」となきなが
らクロがやってきていた、とお隣さんだった方から聞きました。
でもそのうち、現れなくなったということです。

外の世界に慣れた賢く慎重なクロですから、交通事故はないと
思います。きっと得意の甘えごろごろ攻撃で、次の人をとりこ
にして、新しいお家の家族になったに違いありません。

私は今もそう信じています。

私が猫好きになったきっかけは、そんなたった1年しか一緒に過
ごせなかったビロードのような真っ黒なクロのおかげなのです。