散歩の途中に「海軍さんのビール」を飲ませるレストランがありずっと気になっていた。昼食にふと立ち寄ると周りの人たちが生ビールをうまそうに飲んでいる。そのときは昼間なので飲まなかったのだが、生ビール発見の喜びの瞬間であった。
昨夕は連れ合いとそのご両親4人でそのレストランへいき待望の生ビールを飲む。まずは三点セットを注文すると三点セットにも2種類あるという。順番はどうでもよい。とにかくピルスナーのはいったセットから試してみる。ピルスナー、バイツエン、アルトがそれぞれ180ミリ入っている。褐色のアルトを一気に飲み干しバイツエン、ピルスナーの順に飲み進む。本格的な生ビールを飲むのは3月の南米以来だ。それぞれ酵母の働きによるのか黒ビール系、フルーティー、小麦風と味と色が異なる。
この種のビールはピルスナーをのぞいて大ジョッキで飲むとややアキがくる。300ミリ程度を次々と替えて飲むのが良いことを発見した。
つまみは各種ソーセージとザワークラウトで決まり。あまりいろいろと頼まないでこのソーセージにマスタードをつけて食べ、ザワークラウトを合間に放り込む。最後にビーフシチューとコロッケなどを頼んだがソーセージにかなうものはなかった。欲を言えばザワークラウトの量がもう少しあり、塩を少し控えてもらえればいうことはないのだが。さらにアイスバインもあるとさらに嬉しい。
ビールの旨さといえばイタリアのベニスからドイツのミュンヘンへ向かう際の夜行列車を今でも思い出す。20年も前の記憶だが寝台車に乗り込むと同一室にイタリア人のビジネスマンと17歳の青年が乗り込んできた。イタリア人の50歳くらいのおじさんはしゃべり好きなのだが英語が話せない。青年はイタリア人の母とドイツ人の父の間に生まれたという。英語もイタリア語も不自由ない。イタリア人は盛んにその青年を通訳に使って話し続ける。
おじさんはやおら旨そうなパンニーニを取り出して皆に食べろと勧める。飲み物を売りに来たので私と青年はピルスナーを、おじさんは赤ワインを飲み出す。なんでもおじさんは医者からアルコールを禁じられているというがビールはだめで赤ワインならいいそうだ。変な理屈だなと思いながらも楽しく談笑しながら夜は更けていった。そのときにもピルスナーの芳香があたりに漂った。
翌朝早くミュンヘンに着いた。トイレと洗顔のために廊下を歩いて行くと車掌が業務を終了したらしく椅子に腰掛けている。すばらしく甘い香りの煙草をくゆらし、手にはピルスナーの入ったカップを持っている。そのカップからのピルスナーの香りが朝の列車に漂う。今でもそのシーンが忘れられない。
残念ながらビールの香りは記憶の中の方が鮮烈で、その再現とはならなかった。国と空気が違うと香り方も異なるのかもしれない。
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