一見ルール無視にみえる孫正義流交渉術も、実はしたたかな交渉術であることがわかってくることがある。孫正義氏にしてみると、目的まで最短距離で走りたいのだが、道路は未整備だ。
つまり、ルールが無いか、古い発想で禁止されていたりする。こうした場合に、ルール自体に胡散臭さを直感的に感じ取ると、その改正を検討するように命じるのではなく、とにかく必要性を声高に訴える方法をとる。これは、孫正義氏の極めて特徴的な経営スタイルといっていいのではないか。
ルールはそれ自体でそれなりの存在理由もあるから、当然しかるべき反論がある。普通、経営者はルールを変更するべく働きかけを行うよう指示して待つが、孫正義氏はまだか、まだかと実現を子供のように部下にせっつく。決算発表会やインタビューの機会を捉えては得意の弁舌で、巧妙な例え話で喋り捲る。そのうち、ルールと現在の状況とのギャップを埋めるべく、研究会が立ち上がったりする。