1990年代半ばに出張ではカリフォルニア州公益委員会を訪れた。現代の日本ではNTT法廃止議論が巻き起こり、地域インフラのボトルネックをどう管理するかに焦点が移りつつある。州公益委員会は日本の総務省と自治体機関の合わさったような機関であり、特に電気通信の管理で参考になると思われる。
日本で通信の競争政策に重要なインフラ、電波管理と道路占有管理で電波管理は総務省が主管庁だが道路占有管理は競争政策に重要なインフラ管理として有効に働いていない。電気通信事業法に依存していて道路占有管理は国交省が電気通信政策とは関係なく行なってきた。
ところが昨今のNTT法廃止議論でボトルネック管理に道路占有管理が極めて重要な管理となるのではないかとわたしは経験的に確信している。
国有化か資本の独立かあるいは電気通信事業法下での管理かの選択肢が自民党PTでは示されているがいずれも短所がある。国有化か資本の独立かでは採算性や新技術のリードができない。電気通信事業法下での管理では安定性や信頼性に欠けるため競合各社が反対している、つまり日進月歩の生きた事業経営には法律のみ、特に長期増分方式のような管理ではついていけないので硬直した管理になる。
その点米国の州公益委員会はFCCの州バージョン的に管理している機関であり生きた事業経営の管理には適しているのではないか。かつて日本にもこうした機関が必要だとの要請をしたことがあったが行政コストがアップするということでたち消えになった。
競合各社の不安は実はNTT法か電気通信事業法かという点ではなくて電気通信事業法そのものが事業経営に対応力があるかどうかなのではないか。その不安のためにNTT法廃止に反対していると推測している。事業区分のあり方への不安は電気通信事業法で解消すると言われてもNTT法がより上位の規範であり安心できるということではなかろうか。しかしNTT法がより上位の規範であるという根拠はない。
米国ではNTT法のような会社法は存在しない。米国電気通信連邦法が基本であり、それに基づきFCCとPUCが規制を担当している。
さて1990年代半ばに出張ではカリフォルニア州公益委員会PUCを訪れた時の記録を再現してみよう。一人から会議室で流ちょうな日本語で挨拶を受けたことを覚えている。彼はモルモン教徒で日本に派遣されて日本語をマスターしたという。PUCは五人の委員(コミッショナー)からなり、六年の任期で州知事に任命される。コミッションは州憲法に規定された広範な権限をもち、カリフォルニアの私営の電話、エネルギー(電力、ガス)、水道、鉄道など公益事業会社の料金、サービスを規制しており、これらの企業が低料金で、安全で信頼のおけるサービスを行っているかを監督する