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令和5年8月28日付け諮問第28号 市場環境の変化に対応した通信政策の在り方 最終答申の概要 報告書の メモを作成してみた。
提案では総務省において実施すべき事項29項目を実施することでNTT法廃止をしようがしまいが問題点は解決すると報告しているようだ。実施した上でさらに問題があれば議論をすれば良いとしている。NTT法廃止をめぐっての議論を先延ばしにした格好だ。さすが役所は自民党案を肯定も否定もせず実質的な対処法を提案している。うまいものだ。
また自民党から提案のあった線路敷設基盤の管理主体についても実施すべき事項29項目を実施した結果を踏まえて議論しましょうということか、あるいは関係なく審議会で議論を始めるのかが見えないがおそらく実施したのちに始まるのだろう。
NTT自身も当初にNTT法廃止を言い出したもののここまで提案されると廃止の意義も無くなったらしいので矛を納めた。
NTTが電電公社から承継した全国津々浦々の線路敷設基盤(電柱 約1,190万本 管路約60万km とう道約650km)の壮大さを改めて実感する。11枚のうち1枚を使っていることの意味は大きい。
どのような制度設計をするにしてもこのNTTが電電公社から承継した全国津々浦々の線路敷設基盤の管理は国が手放すわけにはいかないという気持ちがよく現れている。
そして今後は線路敷設基盤の管理方法が審議会で議論されていくことになる。自民党提案の案(国営や民間会社による管理等)は技術革新や費用効率の点で問題が指摘されていて、別の方向を議論していくことになるのではと推測している。
この報告書では鉄塔などのインフラ設営事業者にも公益特権を付与する方向性が提案されているがこれは読みようによっては線路敷設基盤の運営に新たな道を開くことを示唆しているのではないか。つまり自民党提案のいくつかの案に新たな案を提示しているのではと私は読んだ。報告書が意図してかどうかは不明だが。
近い将来に自動運転で膨大な光インフラ需要が生まれ、これに鉄塔などのインフラ設営事業者が参入できることになる。NTTのみが公益特権を享受しているが新たな例えばKDDIやソフトバンク、JTOWERなどがインフラ設営事業者として参入し、鉄塔のみならず線路敷設基盤にも公益特権を得ることで、公益特権を梃子にした強力な線路敷設基盤インフラ運用権があたかも電波空間の公益特権の如く強まり、実質的な線路敷設基盤独占が解消されるのではと深読みしかつ期待している。
なお、この報告書に対する意見(パブコメ)としてソフトバンクは以下の意見を述べている。
本来的には、市場支配力 の源泉である特別な資産を保有し、運用する部門(アクセス部門)をNTT持株殿及びNTT東 西殿から完全に資本分離した別会社とすることで、構造的に公正競争環境を確保することが 最も効果的な解であると考えます。 仮に、将来的にNTT法を廃止する場合や、本答申案にて取りまとめられた措置の効果が 十分得られず競争上の課題が生じる場合等、現行の規制構造が機能しない状況に陥る懸念が生じる際には、事前にNTT東西殿のアクセス資本分離を行うことが必要と考えます。
以下は
総務省において実施すべき事項 29項目速やかに制度整備を行うことのメモです。
1.ユニバーサルサービスの確保に関する事項
① 電話のユニバーサルサービスについて、NTT東西のワイヤレス固定電話の地域限定を 緩和するとともに、モバイル網固定電話を追加する。
② ブロードバンドのユニバーサルサービスについて、未整備地域等に限定して、ワイヤレス 固定ブロードバンド(共用型)を追加する。
③ 電話のあまねく普及責務は、最終保障提供責務に見直す。この際、メタル固定電 話の利用者の残存区域では、NTT東西の業務区域の縮小は制限する。 ※ メタル回線設備については、NTTが移行計画を策定し、総務省で検証
④ ブロードバンドについて、最終保障提供責務を新設する。
⑤ 第一種適格電気通信事業者(電話)と第二種適格電気通信事業者(ブロード バンド)の義務は、最終保障提供責務に見直す。
⑥ 最終保障提供責務を担う者は、適格電気通信事業者がいる地域では適格電気 通信事業者とし、適格電気通信事業者がいない地域ではNTTとする。
⑦ 最終保障提供責務を担う者が、他事業者の業務区域や役務提供義務の有無等 を確認できる仕組みを設ける。
⑧ 最終保障提供責務を担う者が、他事業者に、責務の履行に必要な協力(設備の 貸出し等)を求めた場合は、当該他事業者に協議に応じる義務を課す。併せて、協 議開始命令など、当該協議の実効性を確保する制度を設ける。
⑨ ユニバーサルサービスの提供者が、業務区域を縮小する場合は、利用者への事前周 知や事前届出を義務付ける。
⑩ 電話のユニバーサルサービス交付金制度については、当分の間は、内部相互補助を 前提とする現行制度を基本的に維持した上で、最終保障提供責務への見直し等に 伴い必要な補正を行う。
⑪ ブロードバンドのユニバーサルサービス交付金制度については、支援区域外での最終 保障提供責務の履行費用を補塡する措置を講ずるとともに、ワイヤレス固定ブロード バンド(共用型)は、「一者以下提供要件」の「一者」とは扱わないこととする。
⑫ ユニバーサルサービスの提供者には、都市部以外の地域で、都市部を上回る料金 の設定を原則認めないこととする。
⑬ ①・②・⑧に関し、NTT東西が他者設備を利用する場合は、設備の自己設置要 件の例外に追加する。
⑭ NTT東西の線路敷設基盤の譲渡等について、規制コスト等を踏まえ対象範囲を検 討した上で、認可制を導入する。また、重要な電気通信設備の譲渡等の認可を含め て、認可対象となる行為には「処分」を含めることとする。
2.公正競争の確保に関する事項
① NTT東西の本来業務について、県域業務規制を撤廃し、「東日本地域又は西 日本地域における通信」を媒介するサービスを提供する業務を基本とする。
② NTT東西の活用業務(電気通信業務以外の業務を含む。)について、事前届出 制を見直し、NTT東西が活用業務の実施基準の作成・届出を行った上で、総務省に おいて実施基準の遵守状況を事後検証する。
③ NTT東西の目的達成業務や目的業務区域外の地域電気通信業務は、事前届 出制から事後届出制に緩和する。
④ NTT東西が、移動通信業務やISP業務など、公正競争の確保に支障が生じるおそ れがある業務は実施できない旨を法律上明確化する。
⑤ ①の県域業務規制の撤廃に伴い、NTT東西が県間設備について他者設備を利用 する場合は、設備の自己設置要件の例外に追加する。
⑥ NTT東西の線路敷設基盤の譲渡等について、規制コスト等を踏まえ対象範囲を検 討した上で、認可制を導入する。また、重要な電気通信設備の譲渡等の認可を含め て、認可対象となる行為には「処分」を含めることとする。【1⑭の再掲】
⑦ NTTの累次の公正競争条件(在籍出向の禁止等)について、時代に即して現行 化を行った上で、電気事業法の例を参考に、必要なものを法定化する。
⑧ 市場支配的事業者(一種指定事業者と、二種指定事業者のうち一定の収益シェ アを有する者)について、登録の更新制の対象に、公正競争に影響を及ぼすおそれ が大きいグループ内会社との合併等を追加する。
⑨ 市場支配的事業者について、目的外利用・提供が禁止される情報に、卸役務に関 する情報を追加する。
⑩ 鉄塔等の貸出しを行うインフラシェアリング事業者について、認定を受けた場合は、適 正・公平な利用等を担保した上で、公益事業特権(土地等の使用に係る権利)を 付与する。
⑪ 国内電報・国際電報の事業について、電気通信事業法に基づく特別な規律を廃止 し、信書便法に基づく規律を課すこととする。
⑫ NTT東西のメタル固定電話や公衆電話は、プライスキャップ規制の対象外とする。 【関連:1⑫】
⑬ 公正競争の確保に関し、検証を通じた規制のPDCAサイクルを法定化する。
3.経済安全保障の確保に関する事項
① NTTの外資総量規制について、電波法や放送法の例に倣い、その遵守状況等 を定期的に確認する制度を導入する。
4.NTTに関する規律の担保措置に関する事項
① NTT東西の合併等の認可について、小規模な非電気通信事業者との合併等は 対象外とする。
② NTTの財務諸表の提出義務は、撤廃する。
不採算地域の効率的なカバーには、基地局用鉄塔等の共有が有効。鉄塔等を貸し出すインフラシェアリング事業者 は、電気通信事業者でなく、公益事業特権(土地の使用等に係る権利)を受けられず、円滑な鉄塔等の設置に支障。
鉄塔等の貸出しを行うインフラシェアリング事業者が認定を受けた場合は、その鉄塔等の適正・公平な利用等を 確保した上で、公益事業特権(土地の使用等に係る権利)を付与することが適当。
参考 私の意見は294として掲載されている。
長年の間企業サイドで通信政策に関与し、現在は企業に属さない一国民として最 終答申(案)に賛同いたします。
防衛費財源としてのNTT法廃止議論から端を発した通信政策の在り方議論が市場環境の 変化に対応した本答申に結実しています。 NTTの市場支配力を抑制し、参入企業の育成を重視する考え方を踏襲してきた従来の通 信政策からNTTを世界トップレベルの企業として成長させ、日本の経済力向上に寄与させる という新たな視点が打ち出されています。
同時に競合各社にとって近い将来の自動運転時代に死活問題となるであろうアクセス系 の開放にも、自民党提案の国有化民営化4案からインフラシェアリング会社にも公益事業特 権を与える案が新たに示されていて卓見です。 鉄塔に重点を置いた報告書案ですが、アクセス系線路設備にも適用可能であることを併 記すると一層明示的になると思います。
総務省回答:賛同の御意見として承ります。 【個人】