まさおレポート

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モロッコ紀行ハイライト 1

2025-01-20 | 紀行 モロッコ・チュニジア

目の前に広がる砂漠の風紋。風が作り出す鋭い稜線は大地が持つ長い歴史の年輪のようだ。ここがかつて海の底であったことを思うと、無限に広がる砂の波も、どこか懐かしさを帯びてくる。風に運ばれ、ゆっくりと形を変える砂丘のふもとには、アンモナイトの化石を売る商人たちが訪れる。数千万年前の海の記憶を、こうして手に取ることができるのも、砂漠の魅力のひとつだろう。

そんな悠久の砂の波を見ながら、ふと落語の「三題咄」を思い出した。人の名、モノ、地名の三つを組み合わせ、即興で物語を紡ぎ出すあの話法だ。もしここで「モロッコ」「ヘディ・ラマー」「携帯電話」という三題を挙げれば、すでに実在する物語が浮かび上がる。

ヘディ・ラマー、映画史に名を刻むオーストリア出身の女優。その美貌の陰には、無線技術の革新者としての顔があった。彼女は最初の結婚生活で得た軍事技術の知識を生かし、作曲家ジョージ・アンタイルとともに、第二次世界大戦中に周波数ホッピング技術を開発し、1942年に特許を取得した。この技術は、現在の携帯電話や無線LANに応用され、私たちの生活を支えている。

そして、アンタイルがポール・ボールズと共にモロッコからチュニジアへ旅したことを知れば、砂漠の風景に一層の深みが加わる。ボールズがこの地を舞台に綴った『シェルタリング・スカイ』。乾いた空気の中で静かに流れる時間、砂漠の静寂に包まれた旅人の孤独と、ここに息づく文化の香りが、ヘディ・ラマーの物語と交錯していく。


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