まさおレポート

今日はニュピ(nyepi)

今日はバリのサカ歴の新年、お正月だ。ついこのあいだウク歴のお正月であるガルンガンがあったからバリでは西暦、ウク歴(210日毎)、サカ歴(太陰暦で一年)の合計3種のお正月があることになる。もっともバリ人は西暦のお正月にはほとんど関心を払わない。

この日はブト・カロがバリ中で活動が活発化するため、そのとばっちりを恐れて人々は家に閉じこもり、火や灯りを使わない。バリ中で外出が禁止され、街は極めて静かだ。ホテルのなかは自由に往来ができるが、外出はバリの自警団の人たちに厳しく注意される。「悪鬼羅刹様、今日はニュピで人間どもは家に閉じこもって静かにしておりますので、一日おおいにお楽しみください。その代りにニュピの後は静かにお願いいたします」とでも言っているように思えてくる。

このブト・カロはネガティブな面を備えた神々であり、鬼や魔(仏教での悪鬼羅刹のような存在)と訳されているが、決して嫌われているのではない。ニュピの前日にはオゴオゴと称して大々的に街の辻を練り歩きその存在をおおいにアピールする。清浄な神々の下に人間がおり、その下にブト・カルが位置するが、それは無くてはならない神々である。善と悪が両立してこそ世界が成り立つということで、バリの人々は、むしろブト・カロにより一層頻繁にお供え物を行うという。

日本の三大祟り神、日本三大怨霊とされる菅原道真(太宰府天満宮や北野天満宮)、平将門(神田明神)、崇徳天皇(白峰宮や白峯神宮)に対する鎮めを連想してしまうが、どうも鎮めの概念はなさそうで、単に善と悪の双方の神がいて、悪の方は、あまり暴れ回られても困るので、丁寧にお引き取り願うといった感じがする。もとよりバリには、人が恨みをのんで無念の死を迎え、祟り神になるという思想もない。

ヒンドゥ-は一神教(ヴィシュヌ神あるいはシヴァ神)だが、ニュピなどに儀式として行われるバリに根付いたヒンドゥーは、ヒンドゥー教伝来以前の民間土着信仰と混淆してバリヒンドゥーに仕上がっている。こうして伝来の宗教の形を取りながら土着の信仰を洗練させていくというのは日本の仏教でもその通りで、宗教の本来の特徴であると思える。

去年のニュピは雨で、深夜にようやく雲が去り、星空が望めた。今日も一時的に雨が降ったが、現在は青空が白雲と共存している。明かりが一切消えるニュピの夜の星空が楽しみだ。

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