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まさおレポート

富岳の成功で見えた半導体復興は通信事業者のSociety 5.0参画を助ける

理化学研究所(理研)のスーパーコンピュータ「富岳」がスーパーコンピュータの世界ランキング「TOP500」でトップとり2011年11月の「京」以来史上初の4冠とある。

これで長い間の懸案であった日本の半導体復興に明かりが見えてきた。がんばれ日本の半導体、そして富士通。富岳の富は富士通の富と同じなのも面白い。

この成功の秘訣は理研と富士通が組んだこと、理研は国を代表して金を出し、(恐らく)細かい口出しはせずに富士通一社に任せたことだろう。

過去、電電公社通研が交換機用の大量の半導体需要に応じるために各社に金を出して日本の半導体を世界一に導いた。電電公社民営化後に国が引き継いだが日本半導体メーカーに満遍なく支援したためあるいは官僚の口出しのためか互いの競争がなくなり、急速に競争力を無くした。

理研と富士通の成功は過去の半導体政策の失敗を例に学んだことだろうと推測する。あるいは韓国の例に学んだかもしれない。相変わらず国におんぶでは5Gに負けるという意見もあるが国におんぶしないで成功した例は世界にないのではないか。

5Gもこの成功例を取り入れて新し形の官産複合体を導入すべきだろう。

しかし、発表された成果は素晴らしい。

TOP500は、LINPACKの実行性能を指標として1993年から開始。毎年6月と11月の年2回、ランキングを発表している。(LINPACK 線型方程式(密行列)を解く速度の測定)。

富岳は、415.5PFLOPS 1位だった米オークリッジ国立研究所のSummit148.6PFLOPSの2.8倍。

反復法(CG法)により、疎行列の線型方程式を解く速度を評価する「HPCG」3.4PFLOPS2位のSummitの2.93PFLOPSの4.57倍。

AI系で多用される半精度演算(16bitの浮動小数点)を活用して、線型方程式を解く速度を評価する「HPL-AI」では1.42EFLOPS2位のSummitの2.58倍。

ビッグデータ処理などの性能を評価する指標「Graph500」70,980GTEPS 2位中国の神威太湖之光23,756GTEPS 2.99倍。

ベンチマークテストで富岳がはじめて4冠を達成 。

理化学研究所 計算科学研究センターの松岡聡センター長は、「現時点では、100%の性能をまだ発揮していない。富岳が世界のトップレベルでいる期間は相当長いと考えている」

富岳は、それまでの単純な性能競争から脱却し、実用性という点を追求。具体的には「省電力」、「アプリケーション性能」、「使い勝手の良さ」の3点を重視。

ものづくり、ゲノム医療、創薬、災害予測、気象・環境、新エネルギー、エネルギーの創出・貯蔵、宇宙科学、新素材。

京は、SPARCという特殊な命令体系のCPU 富岳 Armの命令体系を採用 Armのソフトウェアが直接利用できるようになった。PowerPointでさえも、利用できるCPU。

富岳のCPU「A64FX」チップはArmのv8-A命令セットアーキテクチャをスパコン向けに拡張した「SVE」を使用。 CPUピーク性能は京の24倍となる3TFLOPS、メモリバンド幅は京の16倍となる1,024GB/sを実現 消費電力あたりの性能 Intel CPUと比較して約3倍の効率性を発揮するという。結果京の40倍の性能に電力増加は2.2倍。

A64FXは、スマートフォンなどに用いられる汎用Arm CPUの上位互換CPUとして、富士通がゼロから開発したものだ。製造は、台湾のTSMCで行ない、7nm FinFETプロセスによって生産されている。CPUやメモリなどの生産は、海外の半導体会社との協業。A64FXの設計は日本とある。Crayが採用する。

日本国内には微細な製造プロセス設備がないためTSMCとの連携を強化した。

海外メーカーは、回路を詰め込んだギリギリの設計をすることが多いが、富士通は確実な設計をしており、多少なにかの問題が起こっても、そのマージンによって、カバーする。過去には非難された日本特有の過剰仕様もこうして発想を変えてプラスに生まれ変わった。

富岳ではSociety 5.0に向けてAIやクラウドへの対応を加えている。

富岳の上にAIフレームワークを作り世界トップクラスのAI学習、推論、利活用の計算機環境基盤も構築される。

富岳の産業利用が促進できるように、アーテキクチャー全体を構成し、そこにクラウドの活用を盛り込んだ。7社(8社目のクラウド事業者と検討を行なっている)のクラウド事業者と連携しクラウドのインターフェイスを利用して産業界からも利用できるようになっている。

半導体の進化は線幅を極限まで狭くする原子レベルに突入する。量子コンピュータは狭い範囲にしか適用できないので半導体に期待する世界はますます広がる。

https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/gyokai/1261786.html

写真はRaysonho @ Open Grid Scheduler / Scalable Grid Engine

 

追記 https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1263445.html

スパコン「富岳」、わずか10日で2,000種類超の新型コロナ治療薬候補を選別

 

「今回の結合シミュレーションには約10日間を要したが、ソフトウェアのチューニングが富岳用にできていないかたちで実施したものである。チューニングができれば、将来的には2日程度で計算が完了すると考えている。

2020年4月から、文部科学省との連携により、新型コロナウイルスの対策に貢献する研究開発に対し、富岳の整備に支障がない範囲で、約6分の1のリソースを優先的に供出。今回発表したのは、そのなかで進められている実施課題の1つである「『富岳』による新型コロナウイルスの治療薬候補同定」の成果となる。

2,128種類の既存医薬品のなかから、新型コロナウイルスの標的タンパク質と高い親和性を示す治療薬候補を探索し、同定するものだ。

 いままでの常識では、創薬は約10年の時間がかかり、コンピュータの役割は候補薬をフィルタリングすることに、1~2年をかけて貢献していた。

 

トップ100位以内としたもののうち、世界で新型コロナウイルス向けとして臨床研究や治験が行なわれている薬剤は、ニクロサミド、ニタゾキサニドなど、12種類である。

ニクロサミドは、一度はまり込むと薬剤がなかなか外れないこともわかった。筋のいい薬剤である。

ニクロサミドは、寄生虫(サナダ虫)を駆除する薬剤であり、妊婦でも服用可能で、安価なのが特徴。だが、国内承認はとられていない。また、ニタゾキサニドはC型肝炎ウイルスの治療薬としても検討された経緯があり、MERS(中東呼吸器症候群)の際にも候補になった薬剤だという。

 「ニクロサミド、ニタゾキサニドは、論文を読むかぎり、いずれもマイルドな薬効と見られており、新型コロナウイルスが過剰に増殖する前での服用や、濃厚接触により2週間の経過観測の際に予防的に服用するといった用途が検討されそうだ。

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